【獣医師監修】ハリネズミと楽しく暮らすために。上手なハリネズミの育て方

手のひらサイズのキュートなペット、ハリネズミ。愛くるしい容姿が人気の小動物ですが、とても臆病で警戒心が強い生き物です。飼育のポイントをおさえて、飼い主になつくハリネズミに育てましょう。

  • サムネイル: 羊田ユウジ
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監修:オールペットクリニック 平林雅和院長

ハリネズミとは

ハリネズミは、ネズミと名前がついていますが、じつはモグラと近縁の小さな哺乳類です。背中に約5000本もの針を持ち、怒ると針を逆立てます。針といっても、実際は硬くなった体毛です。日本でのペットとしての歴史は浅いですが、ヨーロッパでは古くからペットとして親しまれてきました。

カナダのおよそ5200万年前の地層から化石が発見されたハリネズミは、今もなおほとんど変わらない姿で生息していることから「生きた化石」ともいわれています。

ハリネズミにはオオミミハリネズミ、マンシュウハリネズミなど様々な種類がありますが、日本で飼育できる種類はヨツユビハリネズミのみです。それ以外の種類は、外来生物法によって飼育が禁じられています。ヨツユビハリネズミは名前の通り、後ろ足が4本指になっていて、カラダのカラーバリエーションが豊富です。

ハリネズミは恒温動物のため、体温調節の機能を持っていますが、保温効率が悪く暑さにも寒さにも弱い特徴があります。もともとは西アフリカから東アフリカにかけての地域に生息しており、気温差、湿度差の大きい日本の気候は苦手です。(ただし、沖縄などの暖かい地域は適しているといえるでしょう)そのため、温度・湿度管理が重要な飼育が難しいペットです。

ハリネズミって人になつくの?

ハリネズミは犬や猫のように飼い主と遊び、じゃれついてくる動物ではないため、積極的に飼い主とスキンシップを取るタイプでもありません。性格は臆病で警戒心が強く、単独行動を好みます。行動はあくまでマイペースです。一緒に遊ぶペットというよりも、かわいらしい姿を眺めるペットといえるでしょう。それでも、飼い主に慣れると手に乗ってくれるようになります。

ハリネズミは夜行性で、昼は丸まって寝ています。一般的な人間の生活リズムとは異なるため、スキンシップが取れるのは夜だけ、という場合も少なくありません。ただし、飼い主と生活習慣を合わせて、昼間活動するようになるハリネズミもいます。

名前を呼んでもほとんどのハリネズミは反応しませんが、慣れると飼い主の声に反応するようになります。嗅覚と聴覚が発達しているため、愛情をもって根気よく接することで、飼い主の声とにおいを覚えさせることが可能です。飼い主の手の中でくつろぎ、飼い主の声とにおいを判別できるようになったハリネズミを、「慣れている」と見るのか、「なついている」と感じるのかは、飼い主が決めることかもしれません。

ハリネズミの飼育方法

ハリネズミはケージで飼育します。ケージは60cm×60cm以上の床面積で、回し車などを置けるサイズがおすすめです。ケージ内には床材、餌皿、水皿を用意しましょう。ハリネズミは暗い場所を好むため、ケージ内に隠れ家として小さな小屋も置きます。回し車も大好きです。ただし、足を挟んでケガをしてしまうケースがあるので、時間を決めて遊ばせる、回し車に足を挟まないように加工するなど、ハリネズミにとって安全な使用方法を考えてください。単独生活を営む習性のハリネズミは、1匹につき1ケージが基本。1ケージに多頭飼いすると、相性が悪い場合はケンカすることがあります。

ケージは直射日光が当たらず、風通しの良い場所に置きます。室温は24~30℃、湿度40~60%くらいが適正環境の目安です。ペット用ヒーターや暖房器具、エアコン、扇風機などを利用して、室温と湿度を調整してください。また、ハリネズミは聴覚が発達しているため、騒音や振動には気を配りましょう。

エサは市販のハリネズミ専用フードを与えます。現在のハリネズミフードは総合栄養食であるため、副食は特に必要ありませんが、デンタルケアの目的でミルワームやコオロギを与えましょう。また、ミルワームなどの幼虫系は脂質が高く栄養が偏るため、与えるときは少量にするなど、配慮してください。
食欲がない時は、食いつきが良くて栄養も豊富な生餌を与えると、体調が回復することもありますが、基本的にハリネズミは大食漢であるため食欲がなくなる原因がわからない場合は動物病院に相談しましょう。

捕食や間食は、偏食あるいは肥満の原因となるので、あくまで主食となるハリネズミ専用フード中心の食事を心がけましょう。

先述の通り、ハリネズミは嗅覚と聴覚が発達しています。飼い主の存在に慣れさせるために、ケージの中に飼い主のにおいがする衣類の切れ端などを入れておいたり、食事の時、あるいは遊ぶ時は必ず名前を呼んだりしてあげましょう。ハリネズミと触れ合うことで、飼い主の指先のニオイも覚えさせます。飼い主のニオイと声を、安心できる環境やおいしいエサと関連づけ、飼い主と一緒にいれば安全で安心だということを覚えさせることができれば、ハリネズミは飼い主の手の中で安心してくれるようになるかもしれません。

ただし、かまいすぎは逆効果になることもあります。昼間、寝ている時に触ったり、ハリネズミが遊ぶ気分ではない時にちょっかいを出したりするのは、ハリネズミにとって大きなストレスとなります。ハリネズミが気分を害した時は、丸まって背中の針を逆立てたり、シューシューと鼻から息を吐いたりするので、落ち着くまでそっとしておきましょう。また、ハリネズミの目の前で大声を出したり、くしゃみをしたりすると、聴覚に敏感なハリネズミは驚いて飼い主を怖がるようになってしまいます。そのほか、香水や化粧水、香料の強い衣類も、嗅覚が強いハリネズミを混乱させる原因となるので注意してください。

臆病でマイペースなハリネズミと楽しく快適に暮らすには、飼い主もハリネズミの性格や気分、習性や行動に合わせる工夫が必要です。根気よく接することで、ハリネズミの心を開いてください。

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