犬|私達の永遠のパートナー『犬』の飼い方・習性・特徴の全て

犬。イヌ。いぬ。……わたしたちの最も身近な動物である犬とはいったいどんな動物で、どこからやってきたのでしょうか? この記事では、歴史、生態、身体など、犬にまつわるすべてをあらゆる面から徹底解剖。犬好きなら、読み始めたら止まらなくなること間違いなしです!

  • サムネイル: 関 慶之
    関 慶之
  • 更新日:

もくじ

1.概要(犬とは)

2.犬の進化・歴史
└祖先
└家犬へ(人間と親しい仲間)

3.犬の文化
└宗教
└芸術
└文学
└スポーツ
└仕事

4.身体的特徴
└脳と感覚器官
└嗅覚・視覚・聴覚など
└神経・筋肉
└心臓と肺
└消化器官
└泌尿器系・生殖器系
└皮膚・被毛
└耳・しっぽ

5.犬の生態
└行動と習性
└求愛・出産
└食べ物
└病気

6.犬とともに暮らす
└犬を家に迎える
└しつけをする
└犬の健康と看取り

7.犬のあれこれ
└名犬とよばれる犬たち
└犬にまつわることわざ、慣用句など

1.概要(犬とは)

私たちの身近に当たり前に存在する犬。

そもそも、犬とはいったいどんな動物なのでしょうか?

学問的にいえば、イヌとは「ネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属」に分類される哺乳類のことを指します。

犬の学名を「Canis lupus familiaris」といい、ラテン語で「Canis」は「犬」、「lupus」は「オオカミ」、そして「familiaris」は「家庭に属する」を意味し、英語の「family」の語源ともなっています。この学名を見るだけでも、犬と人が密接な関わりを持っていることが分かるでしょう。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

本記事では、共に長い時を歩んできた犬たちをあらゆる側面から見ていきます。第二章では、オオカミから進化した犬の起源と、その後の犬の発展史を。第三章では、芸術や文学などの人類の文化の中に現れた犬たちを。第四章では、素晴らしい能力を示す犬の体の秘密を。第五章では、動物としての犬の生態を。第六章では、わたしたちが犬と暮らすときに最低限覚えておくべきことを。最後に、犬にまつわる興味深いエピソードを、それぞれ紹介します。

2.犬の進化・歴史

一説には500種類以上がいるといわれ、今や人間の大切なパートナーとなった犬たち。

そんな彼らのルーツはどこにあるのでしょうか。それを知るために、まずは肉食動物の歴史から紐解いてみましょう。

5000年前:ミアキスの誕生

地質学的には暁新世から始新世とよばれる約6,500万前から4,800万年前ごろ、ミアキスという動物が登場しました。ミアキスは小鳥や小動物などを捕食しており、イタチとネコの特徴を併せ持ったような姿でした。

このミアキスこそが、のちの食肉目の共通の祖先であるといわれています。

イヌ科の誕生

ミアキスはその後進化し、漸新世(およそ3,000年前)にはキノディクティス、キノディスミスが登場。さらには中新世(およそ1,000万年前)にはイヌ科の祖先であるトマークタスが現れ、その1,000万年後にはイヌ科が登場します。

人と犬の関わりはじめ

鮮新世が終わって更新世に入ると、イヌ科の誕生に150万年ほど遅れて人類が登場します。イヌ科がなぜ、どのようにして家畜化されていったのかということについては未だに不明な点が多いですが、40万年から15万年ほど前の旧石器時代の遺跡からオオカミの化石が見つかっており、このころには人類とオオカミは何らかの接触を持っていたと思われます。

犬は人間が家畜化した最も古い動物です。犬が家畜化されたことは、同様ににほかの動物も家畜にできるということの発見でもあり、人類の発展史上においても大きな意味をもたらします。羊、ヤギ、豚などの動物は、犬に遅れて新石器時代に家畜化されました。

犬の祖先とは? 定説はオオカミ

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

遺伝子から進化をたどる分子系統学の発展により、現在では犬の祖先はオオカミであるという説がほぼ定着しています。先述のように旧石器時代には残飯などを求めてオオカミが人類の居住地に近づくようになり、やがてその中から人に慣れた個体が現れて家畜となっていったのではないかと考えられています。

一方、祖先となったオオカミがどの種類で、地球上のどの地域で現れたのかについては未だに定説がありませんが、東アジアに起源を求める説が有力となっています。

肉食動物が進化してイヌ科が現れ、やがてオオカミが人と出会ってともに暮らすようになった過程を見てきました。

それではここからは、犬と人と関わりの歴史を本格的に見てみましょう。

犬と文明

紀元前3,000年から2,500年ごろになると、この時代の遺跡からは様々なタイプの犬の骨が出土するようになります。特に古代エジプトでは犬は死を司る存在とみなされ、飼い主が死去すると一緒に埋葬される習慣がありました。

ローマ時代になると、現在見かけるほとんどの犬の品種の原型が作り上げられます。狩猟や荷車引き、番犬や牧羊犬などの各種の用途に合わせて、様々な犬種が作り出されました。

貴族の間での育成の始まり

特に13世紀から15世紀にかけて、王侯貴族の間で特に狩猟を目的として犬の育成が流行します。

19世紀~ ドッグショー・愛犬家団体の確立

19世紀に入るころには現在見かけるような種類の犬達が数多く存在していましたが、犬種ごとの統一された基準は未だありませんでした。そこで、個々の犬種ごとに理想的な容姿や能力を持った犬を生み出し、その血統を維持しようという動きが高まりました。

犬の育成家たちが自分の犬を発表するドッグショーは、1859年にイギリスで初めて開かれました。やがてルールが統一化され、体重や体高、被毛などの各犬種ごとの理想的な基準(スタンダード)の制定も行われ、1873年には愛犬家団体であるケネルクラブが発足します。ケネルとは犬小屋や犬舎を意味しています。

20世紀後半~ ペットからコンパニオン・アニマルへ

はるか古代から人間との密接な関わりを保って暮らしてきた犬たちですが、20世紀に入ると「人間を癒す」という新たな力に注目が集まるようになります。例えばアメリカの青少年刑務所においては、受刑者と犬を触れ合わせて社会復帰を促す「プリズン・ドッグ」と呼ばれるプロジェクトが成功を収めています。

いまや犬は単なる家畜やペットではなく人生のパートナーであり、コンパニオン(親しい友)・アニマルという新たな役割が生まれたということができます。

日本における犬の歴史

日本においては縄文時代の遺跡から犬の化石が出土しており、犬と暮らす習慣はこのころからあったことが分かっています。主な日本犬種(柴犬、北海道犬、甲斐犬、四国犬、紀州犬、秋田犬)のルーツはこの縄文犬にあるといわれています。

奈良時代や平安時代には貴族が飼う犬を育成する期間として「犬養部」が設けられたり、鎌倉時代には馬上から犬を射る巻狩や闘犬が盛んになったり、戦国時代には軍用犬を有効活用する武将が現れるなど、犬は日本人にとって常に身近な存在でした。

タヌキ顔の柴犬

タヌキ顔の柴犬

柴犬にはタヌキ顔とキツネ顔(下画像)がおり、キツネ顔の柴犬は縄文時代の犬に近いといわれ、縄文柴とよばれます。

キツネ顔の柴犬

キツネ顔の柴犬

そんな日本の犬にとって大きな転換期となったのは江戸時代中期、徳川綱吉の将軍就任でした。彼が1685年に発布した「生類憐みの令」は哺乳類のみならず魚介類や虫に至るまであらゆる殺生を禁じた法令で、特に犬の保護を重んじていました。

生類憐みの令は「天下の悪法」とも呼ばれ、現在に至るまで綱吉の評価を下げる一因となっていますが、本当は当時社会問題となっていた捨て子の養育をすることが目的であり、また江戸の町に多かった野犬を保護する狙いもあったそうです。後世の評価はともかく、この法令の影響によって日本では犬を食用とすることを忌避する傾向が生まれ、現在も続いています。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

狆(ちん)は、特に綱吉に寵愛を受けた犬として知られています。

明治維新以降は、日本犬のみならず海外の犬も飼育する気風が高まりました。本格的にドッグショーなどが整備されたのは戦後になってからで、1949年には日本最大の愛犬家団体『ジャパンケネルクラブ』の前身である日本警備犬協会により、上野公園でドッグショーが開かれました。

高度経済成長期になると、一般家庭においてもペットを飼育する気運が起こります。それとともにペットショップも発展し、個人のブリーダーなども見られるようになりました。

1,000万年を超える犬と人との歴史を眺めてきました。

犬の発展は人間の発展にとって不可欠だったということがお分かりいただけたでしょうか? まさに「人がいたから犬がいる、犬がいたから人がいる」といえるのではないでしょうか。

3.犬の文化

長い時間をかけて人間と歩んできた犬たち。

ここでは、文化や社会の中で犬たちはどう位置づけられてきたかについて見ていきましょう。

宗教

宗教の中での犬は神聖さを表す動物とされることがある一方、不浄さの象徴としても扱われてきました。紀元前に中東に広まったゾロアスター教では犬は神聖な動物とみなされましたが、ユダヤ教では犬の地位はやや下がり、聖書では登場回数は少なく、不浄の動物とされています。

さらに時代が下がりイスラム教になると、猫が敬愛されている一方で邪悪な生物とされるようになりました。これとは対照的に中世ヨーロッパの時代になると、猫が魔女の使いとみなされて虐殺の憂き目にあい、犬は邪悪なものから人々を守るとされました。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

日本の神社などにおいては、境内の左右に狛犬が飾られているのがおなじみです。狛犬は古代インドで仏の両脇に守護獣としてライオンの像を置いたのが始まりといわれており、日本には平安時代に伝わりました。しかし、本来の神道の考えに基づくと、犬などの4つ足の動物は不浄とされており、ペットの入場を禁じている神社はいまだに多くあります。

仏教においては、六道(6種類の世界)のうち、犬は「畜生道」に属し、自力で仏の教えを得ることはできないとされていました。しかし犬と人との距離が近づくにつれ、ペットの葬儀を行う寺院やペット霊園なども増えています。

芸術

推定15,000年前に描かれたアフリカの壁画に、人が犬をひもにつないでいる様子が描かれています。人が絵を描きはじめた当時から、犬の姿は描かれていたようです。

犬の地位を低く見たキリスト教が広まるにつれて犬が絵画に書かれる頻度は減っていきますが、16世紀のルネサンス期に入ると写実的に犬を描いた作品が多く制作されるようになります。18世紀には動物画が流行し、家族の肖像画の中に犬が多く登場します。

20世紀に入っても、モダニストたちにとって犬は重要なテーマでした。マネやルノワールら印象派の画家たちは繰り返し犬や猫といった動物たちの姿を描いたほか、ピカソは大変な愛犬家として知られており、飼っていたダックスフントの姿を線で分解して描いた作品が有名です。

日本においては、縄文時代の土偶や古墳時代の埴輪の中に犬の姿をかたどったものが数多く見つかっています。時代が下って平安時代になると、絵巻物の中に犬の姿が多く描かれるようになりました。擬人化された動物たちが描かれていることで有名な「鳥獣戯画」の中にも犬は登場しています。

俵屋宗達、円山応挙、伊藤若冲など、戦国時代から江戸時代にかけての画家たちも、犬を描いた絵を数多く残しています。

文学

初めて犬が文学の中に登場したのは、2000年以上前のスペインの将軍、マーカス・テレンテュース・バロが書いた本「De Re Rustica」の中で犬について触れたものであるといわれています。バロはこの本の中では犬種ごとの飼い方などについて解説しており、世界初の犬の飼育書ということもできるでしょう。

特に、犬が働き手としての役割からペットへと変化した近代以降、犬たちは主題として文学者たちの関心の的となってきました。以下に、犬を主題とした有名な作品をいくつか消化しいます。

「白い牙」:ジャック・ロンドン(1876~1916)作。19世紀末のアラスカを舞台に、狼犬が過酷な自然の中を生き抜いていくさまを犬の視点から描いた作品です。

「フランダースの犬」:ウィーダ(1839~1908)作。画家を志す少年と犬を描いた物語で、日本ではアニメが有名ですが、原作は小説です。

「子犬の生活・ダーシェニカ」:カレル・チャペック(1890~1938)作。愛らしい子犬の様子を描いた、犬エッセイの元祖ともいえる作品です。チェペックはチェコの国民的作家で、「ロボット」という言葉の産みの親ともいわれます。

「高安犬物語」:戸川幸夫(1912~2004)の直木賞受賞作。山形県の山村で絶滅寸前だった犬種・高安犬の最後の1匹となった「チン」の姿を描いた作品です。戸川幸夫は椋鳩十(1905~1987)と並び、「動物文学」というジャンルを切り開きました。

スポーツ

何千年も前から、犬たちは人間の狩りの手伝いをしてきました。中世ヨーロッパやモンゴルなどでは、王侯貴族が数百頭の犬を引き連れて大規模な狩りを行っていました。弓矢などに代わって銃が登場すると、犬にも細分化された新たな能力が求められるようになり、獲物の居場所を知らせるポインターや獲物を回収するレトリーバーなどが開発されていきます。

猟が発展したウサギ追いレースは、1,800年ほど前から行われていました。グレイハウンドやウィペットはこのレースのために開発された犬種です。19世紀中ごろには、ウィペットを使った短距離レースが流行し、現在でも行われています。また、アラスカンマラミュートやシベリアンハスキーを用いた犬ぞりレースもこのころ開催されはじめました。

犬は猟だけでなく、様々な戦いにも用いられました。牛や熊、あるいは犬同士などを戦い合わせる闘犬は古代ローマの時代から最もポピュラーな犬を用いたスポーツであり、マスティフやブルドッグはそのために開発された犬種です。闘犬は現在は多くの国で禁止されているものの、いまだにひっそりと行われています。

時代が進み現代に入ると、犬を使った新しいスポーツが次々に考案されます。投げられたディスクをキャッチするディスクドッグ、犬の障害物競走といえるアジリティなどがそれです。

仕事

狼が初めて人間の居住地に近づいてきた時から、犬はその高い能力をいかんなく発揮して人間に奉仕してきました。犬たちの力なくしては今の人類の繁栄はなかったといっても過言ではありません。

犬を分類する際にはよく「大型犬・中型犬・小型犬」という分類がなされますが、正式にはそのような分類法はなく、アメリカの愛犬家団体であるアメリカン・ケネル・クラブ(AKC)では以下のような、犬たちが本来になってきた役割に基づいた分類がなされています。

1.スポーティング……狩猟の手伝いをする犬。

2.ハーディング……牧畜犬・牧羊犬。

3.テリア……ウサギやキツネなどの小動物を狩る犬。

4.ハウンド……動物を狩る犬のうち、テリアを除いた犬種。

5.ワーキング……そり引きや番犬などの仕事をする犬。

6.トイ……いわゆる愛玩犬。

7.ノンスポーティング……上記の6種類のうちどれにも属さない犬種。

社会が成熟するのに伴い、犬の仕事も細分化されていき、新たな職務も次々に生まれていきました。そんな犬の仕事を一部ご紹介しましょう。

・補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)

補助犬は介護犬とも呼ばれ、主に盲導犬・聴導犬・介助犬の3種類が知られています。起源1世紀ごろのイタリアのポンペイの壁画や13世紀ごろの中国の絵巻物には、目が不自由とおぼしき人が犬を連れて歩いている姿が描かれており、犬は古くから視覚障害者を助けてきたと思われます。

確かな記録としては、1819年にウィーンのヨハン・ウィルヘルム・クライン神父という人物が盲導犬の訓練をしたことが残っています。神父はその著書の中で、犬の首に棒をつけることや、障害物の場所を覚えさせて実際に生活を送る様子を紹介しています。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

現在のように盲導犬が社会福祉事業となったのは、第一次世界大戦がきっかけでした。毒ガスが多用されたこの戦争では失明者が大量に生まれたため、ドイツ政府はその救済のために盲導犬の訓練をはじめ、これに注目したハリソン・ユースティス夫人というアメリカ人女性が世界初の盲導犬教会を設立。やがてその流れは世界中に広がり、現在に至っています。

聴導犬や介助犬は、盲導犬が一般化するにつれて70年代ごろから本格的に登場しました。

・番犬

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

オオカミが人間に近づいた当初から、人類は彼らの吠える特性を利用し、外敵を追い払い自らの財産を守ってきました。現在でも多くの家庭が防犯を目的として犬を飼っています。番犬というとドーベルマンなどが浮かびますが、警戒心が強ければ大型犬のみならずポメラニアンなどの小型犬にも適性があります。

・牧畜犬、牧羊犬

牧畜犬は番犬から発展した犬で、紀元前4300年ごろのイラン周辺ですでに羊と犬がともに暮らしていたことがわかっています。当初はもっぱら家畜の番をするのみでしたが、人類が本格的に牧畜を始めるにつれて、群れをまとめて誘導する役割をも担うようになっていきました。コリーやコーギーが特に有名ですが、牧羊犬として利用される犬種は世界中に数多く分布しています。

・軍用犬

文明が起った頃から、犬は番犬以外にも軍事のために利用されはじめました。犬たちはその優れた嗅覚や攻撃能力を生かして中世ヨーロッパや日本における戦国時代にも活躍しました。近代兵器が登場すると直接的な攻撃の役には立たなくなったものの、負傷兵や爆発物の探知などにいまだ多くの軍用犬が使用されています。

・警察犬

警察犬は軍用犬から派生したもので、嗅覚を生かした行方不明者の捜索や、被疑者の制圧などを行います。警察犬の歴史は比較的新しく、1896年のドイツのヒルデスハイム市警察によって導入されたのが最初といわれています。

日本においては警察犬向きの犬種は「警察犬種」として指定されており、ジャーマンシェパード、ドーベルマン、コリー、ラブラドールレトリーバーなどがこれに当たります。しかし、近年はトイプードルなどの小型犬が審査に合格するケースもあります。

・嗅覚犬

優れた嗅覚に特化した仕事をこなし、人間では発見できない様々なものを見つけるのが嗅覚犬です。麻薬を探知する麻薬探知犬、銃器を探知する銃器探知犬は主に空港や税関で働いています。嗅覚犬が探しあてるのはこれに留まらず、トリュフや海賊版DVD、シロアリ、トコジラミなどにいたるまで多岐にわたっています。

最近では、患者の尿からがん細胞を見つけ出すがん探知犬が医療の現場で注目を集めています。また災害救助犬は嗅覚犬の中でも特に有名であり、災害時に倒壊した建物の中に入り込み、生存者、時には遺体を見つけだすことが仕事です。

・セラピードッグ

セラピードッグは、動物とのふれ合いを利用して患者の心と体を癒やすアニマルセラピーの一環として行われます。アニマルセラピーは不登校や引きこもりなどの問題を抱える人々、老人ホームや難病患者などが動物と触れ合うことによって回復を目指します。ドッグセラピーは国内では始まったばかりですが、犬種としてはラブラドールレトリーバーやゴールデンレトリーバーが多く導入されています。

3.身体的特徴

驚くべき身体能力や知能を示す犬たち。

ここでは、犬の体の秘密に迫っていきます。

嗅覚・視覚・聴覚など

・嗅覚

犬の嗅覚は人間の100万倍ともいわれています。なぜ、犬の鼻はそんなに優れているのでしょうか? それはにおいを嗅ぎ取る嗅覚細胞の数に秘密がありました。

人間の嗅覚細胞の数がおよそ500万個なのに比べて、犬の嗅覚細胞の数はなんと1億個から2億個と、20倍以上あります。また犬は人間よりも鼻の全長(マズル)が長く、鼻腔は常に湿っているためよりにおいをとらえやすくなっています。においを集める嗅繊毛や、大脳の中のにおいを感じる部分である嗅脳も発達しています。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

犬の嗅覚がこれほど発達した理由としては、獲物や外敵の存在をいち早く察知するためという理由があるほか、視力が弱いのを補うためというのもあるようです。

特に嗅覚が優れた犬としては、「魔法の嗅覚」というあだ名を持つベルギー原産のブラッドハウンドがあげられます。嗅覚細胞の数は3億個以上ともいわれ、古来からその能力を生かして猟犬や警察犬として活躍してきました。逆に嗅覚が弱い犬としては、パグやブルドッグなどの鼻が短い犬が挙げられます。

・聴覚

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

犬は嗅覚だけでなく聴覚も非常に優れています。人間の可聴域(聞き取れる音の範囲)は20ヘルツから20,000ヘルツなのに対して、犬の可聴域は40ヘルツから60,000ヘルツで、10万ヘルツまで聞き取れるともいわれています。また人間の4倍の距離の範囲の音まで聞き取り、600分の1秒のスピードで音源を判断することができます。

留守番をしている犬が、まだ遠くにいるにもかかわらず飼い主が帰ってくることを察知してそわそわしはじめることがありますが、それはこのような鋭い聴覚で飼い主の気配を感じ取っているのかもしれません。

・視覚

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

嗅覚と聴覚は非常に優れている代わりに、視力はあまり発達していません。犬の目は人間と同じような構造をしていますが、レンズの役割を果たしている水晶体が人間の2倍ほど分厚いことが原因と言われています。特に焦点を合わせることが苦手で、10メートル以上離れると飼い主の顔も認識することができなくなります。

しかし、犬の目には人間と比べても優れた部分もあります。犬の水晶体の内側にはタペタムとよばれる反射板のような器官が備わっており、これによって暗い場所でもわずかな光を頼りに物を見分けることができます。また犬は人間と比べて動体視力が優れており、そのためディスクドッグのような競技もこなすことができるのです。

色を見分ける能力については、以前までは犬は色盲であり世界は白黒に見えているともいわれてきましたが、最近の研究では犬にも色覚が備わっているということが分かってきました。しかしやはり人間と比べると弱いようで、認識できる色の数は人間の10分の1程度のようです。

神経・筋肉

・神経

犬の神経は、脳と脊髄で構成される中枢神経と、脳に繋がる12対の神経などが含まれる末梢神経の2つで構成されています。犬が動作をする時は、まず脳から脊髄へ、そして体の各部の末梢神経へと信号が伝わります。

・筋肉

犬は長い距離を人間の何倍ものスピードで走ることができます。これは赤筋とよばれる持久力に適した筋肉が発達しているためです。犬は歩く際には前脚をメインに使い、後ろ足は支える役目を主に担っています。そのため、筋肉は前半身が発達しており、体重の比率は前半身と後半身で7:3程度となっています。

後ろ足の筋肉はあまり使わないため、年をとると後半身から先に弱っていくことが多いです。

心臓と肺

・心臓

犬の心臓は構造自体は人間のものとほぼ変わらず、血液を全身に循環させる役割を果たしています。純血種の犬は心臓に遺伝的な疾患を持っている品種も多く、特にキャバリア・キングチャールズ・スパニエルは心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が機能しなくなる「僧帽弁閉鎖不全症」の発症率が非常に高いことで知られています。

・肺

犬の肺は空気中から得た酸素を体内に取り込んだり、呼吸を司っている器官で、人間の肺と構造はやはりあまり変わりはありません。「人間の肺の表面積はテニスコート1面分」としばしばいわれますが、犬の肺の表面積もそのくらいはあるようです。

消化器官

犬の口は前歯と下あごが発達しており、獲物の肉を引き裂いたり押さえこんだりするのに適しています。奥歯はあまり発達しておらず、一度くわえ込んだ食べ物はそのまま飲み込むことが多いです。

食べ物は食道を通って胃に送られて消化され、徐々に腸に送られて栄養分に分解吸収され、血液に乗って全身に送られます。残存物は便となって排出されます。

人間の腸の長さはおよそ8メートルほどといわれますが、犬は3メートルほどとやや短くなっています。犬はもともとは肉食動物でしたが、人間とともに生活して残飯などを食べているうちに、徐々にその食性を肉食寄りの雑食へと変えていきました。そのため、食事は人間と同様にバランスの良さが重要となっています。

泌尿器系・生殖器系

・泌尿器系

泌尿器系とは腎臓、尿管、膀胱、尿道などの尿を作ったり運んだりする各器官のことを指します。腎臓は血液から老廃物をろ過して尿をつくり、膀胱はその尿をためる役目があります。犬によくみられる泌尿器系の病気としては、尿がアルカリ性や酸性に傾いて発生する尿結石があげられます。

・生殖器系

生殖器系とは、精巣や陰茎(オス)、卵巣や子宮(メス)などの生殖に関わる器官のことを指します。去勢・避妊手術を行うと発情期がなくなり、性行動にも変化が起こります。

皮膚・被毛

・皮膚

「犬は汗をかかない動物」とよくいわれますが、汗を分泌する汗腺は皮膚に備わっています。しかしその数は人間と比べてずっと少なく、体温調節は舌から行います。しかし放散の効率はよくないため、犬が寒さに比べて暑さに弱い原因の一つとなっています。

・被毛

家畜動物の中でも群を抜いて被毛のバリエーションが豊かな動物です。目が隠れるような長い被毛、密集した短い被毛や硬く、きめの粗い被毛まで、犬はその用途や血統によって様々な被毛を持つようになりました。ダックスフントやチワワのように、同じ犬種であっても異なるタイプの被毛を持っていることもあります。

犬の毛に多くの種類がある理由は、1つの毛包(毛穴)から複数の毛が生えていることに由来します。1本の長い毛の周りに5本以下の短い毛(副毛)が生えているのです。主毛はトップコート、副毛はアンダーコートとも呼ばれます。トップコートが目だって生えている犬をシングルコート、両方の毛が生えている犬をダブルコートと呼びます。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

犬には春と秋の年2回、大量に毛が抜け落ちる時期があり、換毛期と呼ばれています。春になると夏に向けて粗めの毛が生え、また秋になると冬に向けて密集した毛が生えてくるのです。このとき抜け落ちる毛はアンダーコートのみであるため、シングルコートの犬は抜け毛が少ない傾向にあります。

代表的なシングルコートの犬種はプードル、ヨークシャーテリア、パピヨンなど。ダブルコートの犬はコーギー、ポメラニアン、ゴールデンレトリーバーなどがあげられます。シングルコートの犬も抜け毛が皆無というわけではないことには留意する必要があります。

耳・しっぽ

犬のかわいらしさを引き立たせる2つの要素が、耳としっぽではないでしょうか。

・耳

犬の中には立ち耳の犬と垂れ耳の犬がいます。垂れ耳の犬はセッター、ポインター、レトリーバー、ビーグル、ダックスフント、プードルなど、もともと猟犬の役目を担っていた犬に多いのが特徴です。これは耳をあえてふさぐことにより、獲物に対する集中力を高めていたことの名残です。

立ち耳の犬でも子犬のころまでは耳が垂れていることがありますが、多くの場合は成長するとともに立ち上がってきます。

・しっぽ

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

犬のしっぽには単に感情を表現するだけではなく、体を動かす時にバランスをとる役割もあります。また、冬場に体を丸めて眠る時は、鼻先にしっぽを持ってきて冷えた空気を吸わないようにする行動も見られます。

しっぽにはいくつかの種類があります。柴犬などの日本犬に多く見られる巻き尾、生まれつき短いボブテイル、ブルドッグなどに多い短く渦を巻いたスクリューテイル、ビーグルなどに見られる先端が上を向いたセイバーテイル、レトリーバーに多いカワウソの尻尾に似たオッターテイルなどです。

・断尾、断耳

後天的に犬の耳やしっぽを切断したり、矯正して立たせたりすることを断耳(だんじ)、断尾(だんび)といい、ドーベルマンやコーギー、シュナウザーなどの犬種で見られます。これは狩猟や牧畜の最中に犬の急所となるしっぽを守る目的や、耳の風通しをよくする目的で行っていたのが習慣化したものです。現在は動物愛護の観点からヨーロッパ各国では断耳・断尾をともに禁止する国が増えています。

知能

高い知能を持つといわれる犬。その知能は果たしてどの程度なのでしょうか。

犬の知能は個体差もありますが、おおよそ人間の2歳児程度だといわれています。最低でも200以上の単語を覚えることができ、4から5までの数字を数えることができ、飼い主と他人の人間関係を把握することができます。このような能力は訓練次第でさらに伸び、1,000を超える言葉を覚えたという実験結果もあるそうです。

犬の賢さには犬種ごとに差があることが分かっており、カナダのブリティッシュコロンビア大学の調査によると、全犬種の中で最も知能が高いのはボーダーコリーで、2位はプードル、以下はジャーマンシェパード、ゴールデンレトリーバー、ドーベルマンと続きます。

このランキングの賢さの基準は「人間に対する従順さ」であるため、牧羊犬や猟犬などの人と共に作業をする犬たちが上位にランクインしています。従順さ以外の観点から見た場合、違う結果が出てくるかもしれません。

注意したいのは、「賢い」ということは必ずしも「飼いやすい」ことではないということです。賢いということは「悪賢い」ということでもあり、しつけが欠如した場合は問題行動につながりやすくなります。

例えばボーダーコリーは運動量が多く必要な犬種なので運動が足りないとイタズラをすることがありますが、賢いためにイタズラに手が込んでいたり、叱っても効果が見られなかったりします。犬種を選ぶときは必ずしも知能の高い犬を選ぶのではなく、自分の経験や家庭環境に合った犬を選ぶことが重要です。

4.犬の生態

ここからは、動物としての犬の実像に迫ります。

彼らはどのようにして生まれ、どのように生きていくのでしょうか?

求愛・出産

・発情期

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

メスは通常、年に2回ほど発情期を迎えます。発情期はヒートとも呼ばれます。迎える月齢はおおよそ生後8か月ほどのケースが多いですが、個体によってばらつきがあります。発情期中には陰門のふくらみや出血などが見られます。交尾が行われなかった場合は沈静期に入り、次の発情期までは15週間ほどです。

オスは年間を通じ、機会があればいつでも交尾することが可能です。脳の下部にある下垂体が発情したメスのにおいに反応し、男性ホルモンのはたらきが活発になります。オスはヒート中のメスがいると気が荒くなることがあるので、ドッグランなどには連れていかないことが推奨されています。

・出産、育児

犬の妊娠期間はおよそ58日から68日程度です。受精したあとは30日程度で犬の形が出来上がり、臓器などの機関も完成します。50日前後で子犬のミニチュアといえるサイズに成長し、60日が過ぎたころには完全な犬の姿となります。

出産は人目につかない落ち着ける場所で行うことが多く、胎児は羊膜に包まれた状態で生まれてきて、羊膜は母犬が胎盤やへその緒などとともに食べてしまいます。最後の子犬が産まれたら授乳を行い、24時間は子犬の側からは離れません。授乳後は子犬のお尻の舐めて排泄を促し、便などは外敵に子犬の存在を悟られないように食べて処理します。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

犬はもともと安産が多く多産でもあることから、月に1~2回ほどある「戌の日」に願掛けをする風習があります。しかし、小型犬や短頭種などの場合は難産になることも多いため、安易な繁殖が推奨されない理由の一つとなっています。

多産な犬としてはダルメシアンがよく知られており、1度に10頭ほどの子が生まれてくることも普通です。映画「101匹わんちゃん」の主役にダルメシアンが選ばれたのはこうした理由がありました。

・育児

子犬はまず母犬の影響を強く受けながら育ちます。母犬は生後3週間は母乳で子犬を育て、その後は噛み砕いた食べ物を与えたりします。騒ぎすぎた場合などは、母犬は子犬の首筋を噛んでしつけを行います。

生後2週間ほどがたつと、子犬は徐々に母親から自立していくようになります。子犬どうしであそんだり、けんかの真似をしたり、オスメス同士だと交尾の真似をすることもあります。子犬はこのような他者と関わる経験を積みながら徐々に社会性を学んでいきます。母犬の教育と同時に人間とも時間を決めて触れ合うことで、さらに情緒の発展がうながされるという研究結果もあります。

食べ物

すでに書いたように、現在の犬の多くの食性は雑食に近い肉食ということができ、お店で売られているフードはそうした犬の食性に合うように作られています。

現在、飼われている多くの犬や猫たちが食べているドライフードは、意外なところに起源がありました。およそ150年前のイギリスの船には航海のための保存食としてビスケットが積まれていましたが、非常に硬く味も悪かったので食べるものがおらず、航海を終えると港の隅に捨てられていきました。

この捨てられたビスケットに野良犬が群がって食べていたことに注目したのが、ジェームズ・スプラットというアメリカの機械技師でした。彼は小麦のくずに野菜や牛の血などを混ぜ合わせて乾燥させ、ビスケット状にしたものを犬の専用食として販売しました。これがドッグフードの始まりであり、キャットフードなどはその後に登場していくことになります。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

犬に与えてはいけないといわれている食べ物としては、タマネギなどのネギ類(含まれているアリルプロピルジスルファイドが有害)、チョコレート(テオブロミンが有害)、牛乳(子犬以外は乳糖を分解できない)、鶏の骨(噛み砕くと縦に割れてのどに刺さってしまう)などがあげられるほか、塩分や糖分、脂肪分を多く含む人間用の食べ物は与えるのに適しません。

病気(現代病)

社会が発展するのに伴い、また犬たちと人間の距離が近づくにつれて、犬にもそれまでには考えられなかった様々な病気が見られるようになってきました。その最もたるものとしては、肥満があげられます。食事の内容が「ぜいたく」になったことによって、人間と同様に犬も太りやすくなりました。

また、コンパニオン・アニマルという考え方が普及するにつれて、犬は室内で家族とともに飼育することが多くなりました。飼い主と付かず離れずの状態で暮らす犬は、飼い主の姿が見えなくなることに強い不安を感じ、激しく吠えたりするなどの問題行動を起こすことがあり、これは分離不安と呼ばれています。

6.犬とともに暮らす

犬を家に迎える

犬を飼おうとする場合、まずはどこから迎え入れるかが問題となります。一般的なのはペットショップですが、ブリーダーから迎え入れたり、保護された犬を引き取ったり、知人や友人のツテて譲りうけたりすることもあるかと思います。いずれにせよ、飼い始めた後にしつけや健康のことを気軽に相談できるような、信頼できる人やお店から引き取りましょう。

犬を飼うというと子犬から飼いはじめることをイメージされることが多いですが、初めて犬を飼う場合は、あらかじめしつけが行き届いておりワクチン接種や避妊手術なども済んでいる成犬から飼い始めるほうが適していることもあります。子犬を選ぶときは健康状態(元気はあるか、よだれを垂らしたりしていないかなど)をしっかり見極めましょう。

犬を迎えるときは、家庭の状況もしっかりと確認しておくことも重要です。家族の中に犬を飼うことに反対している人はいないか、散歩の時間はきちんと確保できるか、といった不安は事前に解消しておきましょう。

また、犬の飼育には当然エサ代などのお金がかかり、病気やケガの際は人間以上に治療費がかかることも珍しくありません。そのため、経済的な状況は犬を飼っても問題がないかということを再確認しましょう。現在ではペット保険もありますが、加入には条件がついていることが多いのでこれも要確認です。

犬を飼うにあたっては犬種選びも重要です。犬種ごとの特性を理解せずに「かわいいから」などといった安易な理由で飼い始めると、後になってトラブルが起きることが少なくありません。特にマンションなどの集合住宅で飼育する場合、シェットランド・シープドッグなどのよく吠える犬種は向いていないことが多いので注意しましょう。

しつけをする

犬の祖先のオオカミは群れを作って暮らす動物であり、その血を引く犬もそうした気質を受け継いでいます。犬と人とが一緒に暮らすためには、子犬のころからしつけを施して社会性を身につけることが大切です。きちんとしつけができていない犬は、無駄吠えをしたりほかの人や犬に対して攻撃的になることがあり、様々なトラブルの原因になります。

・基本のしつけ

「マテ」「フセ」「オスワリ」などの基本的なしつけは、できるだけ早いうちに行いましょう。きちんと指示に従うことができるようになると、犬をあちこちに連れていったりすることができるようになります。訓練をする際には、指示通りのことができたらとにかく褒めてあげることが重要です。おやつをあげるのも有効です。

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

いたずらをしたり噛みついたりした犬を叱る際は、「現行犯」が原則です。犬は問題行動をしてから時間がたってから叱られても、なぜ叱られたのかを理解することができません。また、叱る際はできるだけ大きな声で「ダメ!」「コラ!」と叱りましょう。半端な叱り方だと、「いたずらをすれば構ってくれる」などといった誤った認識を持ってしまいます。

・散歩に行く

基本的なしつけができたら、犬を外に連れだしてあげましょう。犬種ごとに差はありますが、多くの犬には一定量の運動が必要であり、運動不足はストレスとなって様々な問題を引き起こします。まずはリードをつけた状態で屋内で一緒に歩く練習をしましょう。初めての散歩の際はあまり遠くまで行くと不安になってしまいますので、家の周辺から徐々に慣らしていくとよいでしょう。

・留守番

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

いくら犬が好きであっても、24時間ずっと一緒にいることはできません。留守番の際は、慣れている犬であれば普通に部屋の中で過ごすこともできますが、多く場合はケージやサークルの中で過ごすことになります。このとき重要なのは、ケージが犬にとって快適な場所になっていることです。犬が好きなおもちゃや飼い主の臭いのついた布などを置いて、安心できる場所にしてあげてください。

犬の健康と看取り

・健康管理

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

犬も人間と同じように様々な病気にかかります。そのため、予防できる病気はしっかりと予防しましょう。特に狂犬病の予防接種は法律によって定められた飼い主の義務ですので、毎年春には必ず受けるようにしてください。予防接種以外にも、年一度の健康診断は欠かすことができません。

犬がかかりやすい病気としては、ジステンバー、ケンネルコフ、パルボウイルス感染症などがあげられますが、こうした病気は清潔な環境を維持することや定期的な健康診断によって予防することができます。

・グルーミング

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

ブラッシング、爪切り、歯磨き、シャンプー、肛門腺絞りなどの体の各部のお手入れ全般のことをグルーミングと呼びます。犬は顔などに触れられることを嫌うことが多いですが、子犬のころから慣らせば抵抗なくグルーミングできます。トリミングサロンなどではこうしたお手入れをしてくれますので、慣れないうちはそのようなお店に通ってみるのもよいでしょう。

ビションフリーゼなど、犬種によっては被毛の手入れにかなりの手間を要する犬もいますので、犬種選びの際には気を付けておきましょう。

・安全管理

特に子犬のうちは、室内で飼育していても何にでも興味を示し、口に入れようとすることがあります。ですので、コード類、有毒な洗剤、毒のある観葉植物などの危険なものは犬の手の届かない場所に置いておくのが望ましいです。また、犬はしばしば戸外に脱走することがありますので、その防止のために扉や窓などはしっかりと固定し、逃げ出すことができないようにしましょう。

・遺伝病

純血種の犬の場合、犬種によっては特定の病気を発症させる遺伝子を持って生まれてくることがしばしばあります。例えばキャバリアキングチャールズスパニエルの場合、心臓疾患である僧房弁閉鎖不全症を発症させる遺伝子を持っていることが非常に多く、4歳以上では60%がこの病気を発症することが知られています。

このような遺伝病が起きる背景には、ペットブームを背景に一部のブリーダーが乱雑な繁殖を行っていることがあります。そのため、純血種の犬を迎え入れる際は、原因遺伝子を持っていない犬のみを繁殖に使用する良心的なブリーダーを選び、病気に関する知識もしっかりと持っておくことが重要となります。

・犬を看取る

犬の平均的な寿命はおおよそ10年から13年程度と言われていますが、ギネスブックに認定されたものではなんと29歳5か月という最高記録が残っています。小型犬や雑種犬はやや長生きすることが多く、大型犬はやや短命で、バーニーズマウンテンドッグは6年から8年と特に短いことが知られています。

人間よりずっと寿命が短い以上、どんな犬でもいつかは飼い主との別れがやってきます。ペットとの別れの悲しみが長引き、一種のうつ状態に陥ってしまうことをペットロス(ペットロス症候群)と呼びます。ペットロスを乗り越えるためには、同じ体験をした人と話し合ってみたり、失ったペットに手紙を書いてみたりするすることが効果があるといわれています。

人間に愛された動物たちは、「虹の橋」とよばれる天国に行くといわれています。愛犬が安心して虹の橋を渡れるよう、飼い主さんは笑顔で見送ってあげてくださいね。

5.犬にまつわる雑学あれこれ

興味深い犬の雑学のあれこれをご紹介します。

名犬とよばれる犬たち

ここでは、「名犬」と呼ばれる犬など、歴史に名を残した犬たちを紹介していきます。

・ハチ

「忠犬」といえばやはり忠犬ハチ公。ハチは1923年に秋田県大館市で生まれた秋田犬で、1924年に東京帝国大学農学部の上野英三郎(ひでさぶろう)教授のもとにやってきます。ハチはたいへん上野教授に懐き、最寄り駅の渋谷駅まで送り迎えに行くことがあるほどでしたが、教授は翌1925年に講義中に倒れて急逝してしまいます。

ハチはその後複数の家を回りますがいずれも居つくことができず、1927年ごろ代々木富ヶ谷にある植木職人の家に落ちつきます。このころから渋谷駅の駅前で亡き主人の帰りを待つハチの姿がたびたび目撃されるようになります。このころのハチはしばしば通行人に虐待を受けており、それを哀れんだ日本犬保存会初代会長の斎藤弘吉はハチのことを新聞に寄稿します。以来、ハチの名前は忠犬として全国に知られるようになります。

有名になったハチは大変な人気を博し、多くの人々にかわいがられるようになります。1933年には彫塑家の安藤照がハチの銅像を制作することを発案し、翌1934年、ハチの存命中に銅像が完成。除幕式には数多くの人が詰めかけました。

国民に愛され、映画にも出演したハチでしたが、1935年にこの世を去ります。ハチ公像は戦時中には軍に供出されてしまいますが、戦後になって再建され、現在では銅像のある渋谷駅の出入り口には「ハチ公口」の名前が付き、待ち合わせの名所となっています。

ハチ公像は渋谷駅のみならず出生地の大館市にもあるほか、上野教授と対になった像が東京大学農学部キャンパスと上野教授の地元の三重県津市にあります。また、原型となった像が山形県鶴岡市に残っています。

・タロとジロ

日本において忠犬ハチ公とともに「名犬」と聞いて名前を思い出すのは、南極犬のタロとジロではないでしょうか。タロとジロは1956年に北海道の稚内で生まれました。2頭は樺太犬とよばれる樺太や千島列島の先住民がそり犬や猟犬として使役していた犬であり、当時国家事業として進められていた南極探査に召集されます。

1956年11月、タロとジロは南極観測船「宗谷」にほかの20頭の樺太犬とともに乗り込み、南極へ出発します。このとき希少なオスの三毛猫「タケシ」が航海のげん担ぎとして同乗していました。観測隊が昭和基地に到着すると、2頭はそり犬として仕事をこなし、ジロとメス犬の間には子供も生まれます。

「宗谷」は元々は戦時中の輸送船で、類まれな強運を持ち数奇な運命をたどった船として知られています。現在は東京・お台場の船の科学館に展示されています。

1957年、昭和基地の越冬隊と入れ替わるために第二次越冬隊がやってきた際、南極は例年まれに見る悪天候に見舞われます。隊員たちはなんとか収容に成功しますが、15頭の犬たちは鎖につないだまま基地に残していくことを余儀なくされます。犬を置き去りにしたことで観測隊は激しい非難を浴び、生存は絶望視され大阪府堺市には15頭の慰霊碑が立てられます。

しかし1959年、第三次越冬隊が南極を訪れると、2頭の犬が生存していることが上空から確認されます。2頭は第一次越冬隊で犬の世話係だった隊員の呼びかけに反応を見せ、タロとジロであったことが確認されました。ほかに生存している犬はなく、2頭はアザラシの糞やペンギンの肉などを食べて命をつないでいたものと推定されました。

タロとジロの奇跡の生還は日本中に感動をもたらし、2頭をたたえる歌が作られ、2頭を含む15頭の樺太犬の銅像がハチ公像を制作した彫塑家によって東京タワーに設置されました。(2013年に立川市の国立極地研究所に移転)

2頭はその後も昭和基地で任務をこなし、ジロは1960年に昭和基地内で病死しましたが、タロは1961年に4年半ぶりに帰国。札幌市の北海道大学植物園で余生を過ごし、14歳の長寿を全うしました。現在、タロの剥製は同植物園に、ジロの剥製は東京・上野の国立科学博物館にあります。

・ニッパー

日本ビクター(現・JVCケンウッド)の製品を持っている方なら、犬が蓄音機をのぞき込むこのロゴマークをご存知なのではないでしょうか。「ビクター犬」ともよばれるこの犬の本当の名前はニッパーといいます。

ニッパーは1884年、イギリスのブリストルに生まれます。フォックステリア系で、ブルテリアの血も少し入った雑種犬でした。最初の飼い主は風景画家のマーク・ヘンリー・バロウドで、客の足をよく噛もうとする(nip)ことからニッパーと名付けられます。

1887年にマークが急死したため、弟で同じく画家であったフランシスがニッパーを引き取ります。フランシスは亡き飼い主・マークの声が聞こえてくる蓄音機を不思議そうにのぞき込むニッパーの姿をスケッチし、「His Master's Voice」とタイトルを付けます。

ニッパーの死から3年後の1898年、フランシスはこの絵の商標を出願し、エジソン・ベル社に売り込みますが断られてしまいます。そこでベルリーナ・グラモフォン社に売り込んだところ、レコード盤蓄音機の発明者であるベルリナーはこれに感動し、「蓄音機をグラモフォンに置き換えるなら採用する」との返事が届きます。そして修正された絵がベルリーナ・グラモフォン社の商標となります。

「His Master's Voice」はグラモフォン社の小売部門のブランドにHMVと略されて使用され、現在でもHMVブランドは世界中に展開されています。

犬にまつわることわざ、慣用句など

「負け犬の遠吠え」「犬猿の仲」など、犬にまつわることわざや慣用句などは数多くあります。そんな中からあまり一般的には知られていなかったり、ちょっと変わった意味があったりするものをいくつか紹介しましょう。

・「夏の蕎麦は犬も食わぬ」

蕎麦の収穫時期は秋であり、夏の蕎麦は風味が落ちることからきている慣用句です。「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」と合わせて、「夏の蕎麦と夫婦喧嘩は犬も食わぬ」といったりもします。

・「暗がりの犬の糞」

人が気がつかないのをいいことに、自分の失敗を隠し通そうとするさまのことをいいます。犬は自分の縄張りの外の目立たない場所で糞をして砂をかけるため、このような言葉が生まれました。犬が人目につかないように糞をする理由としては、臭いを外敵にさとられないようにしているという説や清潔好きだからという説などがあります。

・「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」

少し難しいですが、一人がいいかげんなことを言うと世間の多くの人はそれを真実として広めてしまうことをいいます。似たものとして「一犬影に吠ゆれば万犬声に吠ゆ」というのもあります。時報のチャイムが流れると町中の犬が一斉に吠えはじめることがありますが、これはチャイムを仲間の呼び声と勘違いしているからであり、この言葉に近いものがあるかもしれません。

・「パブロフの犬」

1902年ごろ、ロシアの生理学者イワン・パブロフは以下のような実験を行いました。

1 犬にメトロノームの音を聞かせる。
2 餌を与える。犬は唾を出す。
3 1~2を繰り返す。
4 犬はメトロノームの音を聞いただけで唾を出すようになる。

このように、反射的な行動のうち「熱いものに触って手を引っ込める」ようなものとは違い、後天的なものを「条件反射」と呼びます。「パブロフの犬」はこの条件反射を表す用語であり、現在では慣用句としても使用されるようになりました。

ロシアのリャザンにあるパブロフ博物館にはこのパブロフの犬の剥製が保存されていますが、実際の実験には数百頭の犬が利用されたといわれています。

まとめ

単純なようでとっても深い犬たちの世界。

今この記事を読んでいるあなたの横で寝そべっているあなたの愛犬も、はるか昔に人間に近づいてきたオオカミの血を、そして何十万年もの年月を人間と共に生きてきた無数の犬たちの血を受けついで、そこにいるのです。

人類の最良の友人、犬。この記事では彼らの不思議な歴史や暮らしなどの数々を、あらゆる角度から見てきました。これを読んだあなたは、犬をさらに尊敬してあげてください!

内容について報告する