一度絶滅しかかった、悲劇の歴史持つ東欧の大型犬『ボルゾイ』

一度絶滅しかかった、悲劇の歴史持つ東欧の大型犬『ボルゾイ』

スリムな体にスラリと伸びた細い脚、美しい毛並みは気品に溢れ、貴族のような風格漂う大型犬『ボルゾイ』。事実、彼らの歴史は貴族の間から生まれました。でもそのことが彼らの悲劇へと繋がる。今回はそんなボルゾイに歴史について、また気質や飼い方など幅広くまとめました。

  • サムネイル: 小雪戸 ぼたん
    小雪戸 ぼたん
  • 更新日:

1.概要

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

大型犬種『ボルゾイ』。

スリムな体型に、すらりと伸びた細く長い脚。
美しい毛並みから溢れる気品は、どこか現実感のない美しさがあり、サラブレッドを思わせる。

事実彼らの足の速さは他の犬種の追随を許さず、走る姿はまさにサラブレッドのそれ。

今回はそんな彼らの魅力、そして実は歴史上、一度絶滅しかけた悲劇の歴史など。
人気の大型犬『ボルゾイ』についての総合まとめです。

2.歴史

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

■原産地:ロシア
■起源:16世紀頃
■呼称:ボルゾイ、ボルゾイ・ロシアン・ハンティング・サイトハウンド

犬種ボルゾイについての歴史は16世紀頃、狩猟の為にロシア貴族がそれに特化したブリーディングによって生まれた所から始まります(ただこれは諸説あり、一説にはモンゴル大帝国時代に生まれたとも言われています)。

当初、原産国であるロシアでは“ボルゾイ”と一言でいっても、様々な種類が存在しました。
というのも“ボルゾイ”とはまだこの時、特定の犬種を指す呼称ではなく、犬が持つ狩猟機能を表す言葉で、それまで彼らは『ロシアン・ウルフハウンド』と呼ばれており、毛並みなんかの見た目も現存のボルゾイとは短く、体も今ほど大型ではありませんでした。

ただそれでも今のボルゾイの大きな特徴である『俊足』は当時から健在。

それは“ロシアン・ウルフハウンド(ロシアのオオカミ狩猟犬)”という呼び名の所以であり、つまり彼らの当時の狩猟犬としての役割を指しています。

その頃、ロシアの貴族の間ではオオカミ狩りが流行っており、サイトハウンド(視覚で狩猟する犬)として、彼らはその俊足を存分に発揮し大活躍しました。

追い立てられて逃げ惑うオオカミに追いつき、捕まえ、チーム行動を主としていましたが、時には一対一であっても取り押さえられたというのですから速さに加えて、抜群の狩猟センスが分かります。

貴族にこよなく愛されたボルゾイ(ロシアン・ウルフハウンド)でしたが、しかし、それが理由で一度絶滅の危機を迎える悲劇が彼らを襲いました。

それは農奴解放令を発端とする、農民によるロシア革命時。
貴族に愛されたボルゾイは貴族が有する犬種の象徴として、民衆により虐殺されるという憂き目に合いました。

ですが幸いにも革命以前にいくらかの個体が別の国の王侯貴族へ進呈されており、そのおかげで革命以降も生き残ることが出来、そこからまたブリーフィングを繰り返すことでその血筋を現在にまで引き継ぐことが出来ました。

ただその頃のブリーフィング時に掛け合わされた犬種の影響が現在のボルゾイの美しい毛並みと大きな体という、最初のボルゾイとの見た目の違いを生みました。

気質もまた当初と比べ狩猟犬的な攻撃性は形を伏せ、優しく落ち着きある家庭犬へと変わり、現在はどんな相手にでも優しい温和な犬種として世界中で愛されています。

3.身体的特徴

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

■体重:35~48kg
■体高:69~79cm
■カラー:特に決まったカラーというものが存在せず、そのバリエーションは多種多様

モデル体型を彷彿とさせる、スリムな体に細く長い脚が最大の特徴で、加えて長く艶やかな被毛はシルク状で、中には巻き毛の子も存在します。
特定のカラーはなく、そのバリエーションも多種多様。

スリムな体と同様に顔も細長く、楕円形の目は他の犬種と比べ若干中央寄りに位置しており、あらゆる部分で他の犬種と区別できるはっきりとした特徴が多いことが、唯一犬種としてのボルゾイの人気の理由でもあります。

その気品あふれる見た目からコンパニオンドッグ(家庭犬)をはじめ、ドッグショーの常連でもあり、また最高時速50㎞と言われる俊足でドッグレースなどでも大活躍。

あらゆる面で他の犬種と一線を画す存在である彼らの魅力に、今なお世界中でファンが増え続けています。

4.性格・気質

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

■温和
■頭脳明晰
■活発

足の速い大型の狩猟犬である彼ら、なので非常に活発な犬種であろうと考えられそうですが実はその逆で、ボルゾイは大人しい犬種として知られています。

そもそもが歴史を知らなければ、その気品に溢れる姿は見た目だけであれば温和そうに見られ、事実彼らはかなり物静かで、吠えたりすることも滅多にありません。
高い身体能力とは裏腹に、室内でははしゃぎ回ることもなくのんびりと日々を過ごし、飼い主さんの側に静かに寄り添います。

しかし、かと思えば彼らは一旦外で自由になると、驚くほどの活発さで元来の狩猟本能を爆発させはしゃぎ回る。

そんなギャップがまた彼らの大きな魅力なのですが、その極端な振るまいが慣れない人にとっては戸惑いに繋がり、時に「実は頭の悪い犬」という風に考えられてしまうことも。

ですが実際はその反対で、頭が良いからこその、その極端さであることを知っておかなければなりません。

狩猟犬として従順である反面、ボルゾイはサイトハウンドとして自身で判断し行動することを要求されてきた為、自立心も人一倍強く、自己判断能力に長けているということも実は彼らの大きな性格上の特徴。

つまり、彼らは場と空気を読み、家では大人しく、外では活発という周りへの影響を自身で判断し考慮して行動しているのです。

訓練されたわけでもなく、そんな高度な心理を元々身に着けている。
それがボルゾイ、という犬種であり、時に飼い主を出し抜くような抜け目のなさが、また彼らの大きな魅力でもあるのです。

5.しつけ

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

じっと大人しくしていることが苦にはならないボルゾイ、ですが運動自体は大好きな彼らですので毎日の散歩は欠かせません。

それも出来る限り長時間の運動と、その間に、彼らが全力を出して疾走できるような時間を設けることが理想的です。
また競争本能も持っているボルゾイですので、ドッグランなどで他の犬と一緒に走り回る時間を定期的に取り、その競争本能を満たしてあげましょう。

チームでの狩猟を主としてボルゾイは他の犬との親和性も高いです。

ただ一方で繊細な面もあり、慣れないことに対しては強い警戒心を持つ彼らですので、出来るだけ早い子犬の内にたくさんの犬たちとの触れ合いの時間を持ち、飼い主さんべったりにならないよう社交性の向上に努めましょう。

ほっそりした見た目から、小食な子が多いのもボルゾイの特徴。
それ故に、ご飯を食べないことを心配して、彼らがたくさん食べるよう飼い主が様々な工夫を凝らしがちになってしまいますが、それが原因でわがままなグルメっ子になってしまうことも。

金銭的に余裕があれば問題はありませんが、食べないからといって継続の難しい極端な御馳走ばかりをあげ続けるとすぐに限界が訪れます。
その時にはもうそれ以外を食べない、なんていうワガママにもなりかねませんので、食が細いからといってそういった無茶はやめておきましょう。

たとえどれだけ小食と言っても食べないわけにはいきません。
なので一定水準さえ超えていれば、最初はワガママに食べないものであってもいずれ食べるようになりますので、そこは甘やかさずぐっとこらえて食べるのを待ってみてください。

食べた時はたくさん褒めてあげましょう。

“褒める”こと、何においてもそれがしつけの一番大切なポイントです。

6.お手入れ

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

美しい被毛の維持が大変そうなイメージのあるボルゾイですが、特にそういうことはなく、週に2度ほどのブラッシングでその美しさを保つことが出来ます。

あとは外でたくさん遊んで汚れた時など、必要に応じたシャンプーを施すくらい。意外とケアは楽な犬種です。

ただ換毛期の抜け毛は多いので、時期によっては毎日のブラッシングをしなければいけない場合も。

また被毛の長い犬の特徴である、暑さに弱いという性質はボルゾイも例外ではありません。
なので夏場などは脱水症状や熱中症に特に注意して、こまめな水分補給を忘れないようにしてください。

7.かかりやすい病気

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

ボルゾイがかかりやすいと言われる病気は以下▽

・骨肉腫
・胃捻転
・外耳炎

骨肉腫――
骨肉腫とは患部の骨が腫れ、激しい痛みが生じ跛行(不安定な歩き方)や足を引きずるなどの症状が見られます。大型犬種に発症が多いと言われていますが、その原因は未だはっきりとは分かっておらず予防も困難な病気。早期の発見、早期の治療が重要な病気ですので、もし体の動きに違和感を見つけた時はすぐに動物病院で検査してもらってください。

胃捻転――
胃捻転(症候群)とは、胃が捻じれを起こすことで呼吸困難や空おう吐などを引き起こす病気です。これも大型犬に多い病気で、はっきりとした原因は定かではありません。ただ多飲多食、食後すぐの激しい運動などが発症のきっかけと言われてはいますので、一回の食事量の調整、食後はしばらく休憩させる時間を取るように気を付けましょう。

外耳炎――
外耳炎とは、耳の中にある外耳道(穴から鼓膜までの部分)が耳垢や寄生虫、細菌が原因で炎症を起こす病気です。耳の垂れたボルゾイはその通気性が少々悪く、気温と湿度が高い暖かい時期に特にかかりやすくなっています。外耳炎となると耳を掻き続けたり、異臭がしたり、何かしらの異変行動がありますので、特に暖かい時期は注意深く観察するようにしてください。綿棒やコットンなどで定期的に耳の中を清潔にすることが、外耳炎の予防に繋がります。

近親での交配を余儀なくされる純血種は、それが理由で遺伝的な病気が多いと言われています。
が、ボルゾイはその中でも比較的丈夫な体を持つ犬種ではあります。

最後に

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

優美な見た目に優しい心、そして場の空気を読めるほどの高い知能とおよそ完璧な犬種であるボルゾイ。
ですが、一つだけ注意しなければいけないことがあり、それは多頭飼いの適性について。

他種であっても、同じ犬であれば問題なく仲良く出来るボルゾイですが、特に小さくすばしこい動物との多頭飼いには少々不向きな部分があります。

それは彼らの狩猟本能が所以。
逃げれば追いかけるという本能が、時に他の動物への危険となります。

もちろん、頭の良いボルゾイですのでしっかりとしつけが出来ていればそのようなことにはなりません。
が、その頭の良さが逆に犬を飼う初心者の場合は、少々荷が重い要因にも。

というのは、上述したように彼らはその頭の良さで飼い主を出し抜く術に長けており、それがついつい甘やかし過ぎに繋がってしまいがち。

ですので、ボルゾイを飼う際は凛とした態度を忘れず、メリハリのあるしつけが最も重要なポイントとなります。
それさえきちんと出来さえすれば、彼らはあなたにとって唯一無二のかけがえのない人生のパートナーとなってくれることでしょう。

内容について報告する