猫の猫伝染性腹膜炎(FIP) 考えられる原因や症状、治療法と予防法

猫を飼うにあたって、覚えておきたい病気のひとつが猫伝染性腹膜炎(FIP)です。このFIPは、仔猫が発症しやすいうえ、致死率が非常に高い厄介な病気です。今回は、FIPについて解説していきます。

  • サムネイル: ひなた ふゆみ
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

猫が猫伝染性腹膜炎(FIP)になる原因

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猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因は、コロナウイルスというウイルスですが、通常このウイルスは病原性が弱く、感染してもなにも症状が出ない場合がほとんどです。現に日本にいる猫の多くは、一度はこのウイルスの感染経験があるといわれています。
これだけ聞くとあまり怖いウイルスではなさそうですが、このウイルスの恐ろしいところは「突然変異」にあるのです。

猫伝染性腹膜炎(FIP)という病気の原因ウイルスは、猫の体内で突然変異を起こしたコロナウイルスです。
しかし、コロナウイルスに感染した猫のうち、コロナウイルスの突然変異が起こって、実際に猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症する猫は、10%に満たないといわれています。また、年齢でいうと、3歳までの猫と10歳以上の猫での発症率が高くなっています。

突然変異の原因としては、残念ながら詳しいことはまだ解明されていません。
ウイルス側の要因と、感染した猫側の要因が関与しているといわれていますが、猫側の要因というのは、免疫状態のことです。
免疫は、ストレスやほかのウイルス感染などによって変化します。バランスを崩した免疫がウイルスに対して過剰なアレルギー反応を起こし、それが発病につながっているのではないかと考えられています。ですので、猫伝染性腹膜炎(FIP)の予防としては、いかに免疫系のバランスを崩させないかが重要となります。

猫の猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状

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ウエットタイプ:体腔(カラダの空洞部分)を標的にするもの

腹膜炎を起こし、お腹に水(浸出液)が溜まって膨れてくるのが特徴です。元気、食欲がなくなり、発熱を繰り返してぐったりすることもあります。
胸に炎症が起こると、今度は胸に水が溜まってしまうので、肺が圧迫されて呼吸が苦しくなります。

ドライタイプ:臓器を標的にするもの

このタイプでは、お腹や胸に水が溜まったりすることはありません。腎臓や肝臓に硬いしこりができて、臓器の機能障害が進行します。脳に病変が起こると神経症状が出るほか、目に炎症が起こって濁ってくる場合もあります。

どちらのタイプも徐々に進行していき、残念ながら助かる見込みは低いです。

猫の猫伝染性腹膜炎の治療・予防方法

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猫の症状により猫伝染性腹膜炎(FIP)が疑われた時には、猫の血液を検査センターに送り、猫コロナウイルスの抗体価を調べます。
抗体価が高いとこの病気の可能性が強く疑われますが、確定診断が非常に困難であり、抗体価だけでは診断に至らないこともあります。
そのため、お腹や胸に溜まった水や血液、便、臓器、脳脊髄液などにウイルスそのものが存在するかどうかを追加で検査することもあります。

原因となるウイルスに効果を示す治療は確立していません。ウエットタイプの場合は、滲出液の原因となる血管炎を抑える治療を行います。また、インターフェロン(ウイルスの活性を弱め、猫の免疫を上げる)による治療が延命に効果があるとの報告もありますが、多くは支持療法(病気の症状や治療の副作用の予防、症状を軽くするための治療)に頼らざるをえません。

定期的にお腹や胸に溜まった水を抜いたり、必要があれば点滴入院も検討します。
全身的に典型的症状を示している場合には、ほとんどが死に至ります。

このように、有効な治療法がない猫伝染性腹膜炎(FIP)なので、予防で食い止めたいところですが、残念ながらワクチンも存在しません(アメリカではワクチンが販売されていますが、効果について否定的な意見が多いようです)。

猫が集団で生活している場所には、必ずといってよいほどコロナウイルスは蔓延しています。母親からの免疫がなくなる5~7週齢の時に感染することが多いため、4週齢の離乳の時期に仔猫達を大人の猫から隔離すれば、コロナウイルスに感染したことのない仔猫になるといわれています。この仔猫を完全室内飼いで育てれば、この猫は一生コロナウイルスに感染することはありません。このようにして、コロナウイルスに感染経験のない仔猫を育てているブリーダーもいるようです。

飼い主ができることとしては、猫にできるだけ大きなストレスを与えないことです。大きなストレスとは、引越し、無理な多頭飼育、飢餓、病気などです。
ただ、ストレスがゼロの生活というのは不可能ですし、また、ウイルス側の要因もあるので、いくら気をつけていても発症してしまうことはあります。

このように、猫伝染性腹膜炎(FIP)は予防も治療も難しい、とても厄介な病気です。是非この機会に知識を身につけ、猫にとってストレスの少ない生活や、病気の早期発見を心がけてください。

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