この記事では獣医師監修の元、犬と猫の脳炎(のうえん)の原因や症状そして検査・治療法について解説しています。動物病院に連れて行く前に参考にしてください。

犬猫の脳炎(のうえん)とは?
脳の実質や脳を覆う髄膜に、何らかの原因により炎症が起きる疾患を脳炎あるいは髄膜脳炎と呼びます。細菌やウイルスなどの病原体の侵入により起こる「感染性脳炎」や、自己免疫疾患に分類される「特発性脳炎」などがあります。
犬猫の脳炎の原因は?
犬猫でよく見られる原因
・感染性:ウイルス、細菌、真菌、寄生虫など
ウイルス感染の代表例
犬:ジステンパーウイルス、ラブドウイルス(狂犬病ウイルス)など
猫:一部の猫コロナウイルス(猫伝染性腹膜炎ウイルス)
※細菌や真菌による鼻炎や外耳炎が脳内に波及して脳炎を引き起こすこともあります。
・特発性:元々「原因不明」という意味ですが、動物の脳炎では自己免疫などの免疫異常による病気も含まれます。
発症しやすい犬種・猫種
犬の場合
特発性脳炎の場合、犬ではチワワ、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンド、ヨークシャー・テリア、パグなどが比較的発症しやすい品種です。
感染性脳炎の場合はどの品種でも発症の可能性があります。
猫の場合
猫は特発性、感染性ともに発生は非常に稀です。
脳炎の症状は?
脳の障害部位に応じて様々な異常が認められます。
発作、視覚障害、歩行異常
大脳の脳細胞が興奮することで痙攣発作を引き起こすことがあります。
大脳の障害により視力や歩き方に異常が見られることがあります。
斜頚(しゃけい)、眼振、距離感や平衡感覚がつかめない
小脳や脳幹が障害されることで平衡感覚に異常が生じ、斜頚(首が一方に傾く)や眼振、企図振戦(きとしんせん)と呼ばれる酔っ払いのようなふらつきを示すことがあります。
意識障害、四肢の麻痺
大脳や脳幹が障害されることで、意識レベルの低下や四肢の不完全な麻痺が生じ、起立や歩行が困難になる場合があります。
気になる症状がある場合はご相談ください
特に重症の場合、ぐったりして元気がなくなってしまったり、意識障害を引き起こしてしまうことがあるので、できるだけ早く動物病院に行くことが薦められます。
JR山手線「原宿駅」徒歩4分 /
地下鉄東西線「神楽坂駅」徒歩1分
東急田園都市線「三軒茶屋駅」
脳炎の検査・診断方法は?(動物医療センターPecoの場合)

当院で実際に行う可能性のある検査についてご説明します。
神経学的検査
意識状態や四肢の動き、脳神経の機能を評価して、脳の異常の有無を調べます。
血液検査
痙攣発作や意識障害などの神経症状の原因が他にないか調べます。
MRI検査
脳内を画像化し、脳の炎症病変を検出します。検査には全身麻酔が必要になります。
当院ではCTやMRIの設備がないため、設備を備えた病院をご紹介致します。
脳脊髄液(CSF)検査
脳内や脳の表面を流れるCSFを採取し、炎症細胞や微生物の検出、ウイルス抗体価を測定することで脳炎を診断します。検査には全身麻酔が必要になります。
脳炎の治療方法

免疫抑制療法
ステロイド薬や免疫抑制薬を使用して、脳の炎症を抑えます。
抗てんかん薬
脳炎により大脳が障害された場合に、痙攣発作を起こす可能性があります。その場合に、発作を抑える目的で使用します。
抗菌薬
鼻炎や外耳炎の波及、あるいはその他の感染が原因で脳炎が起きている場合、感染を抑える目的で使用します。
当院が脳炎の診療で心がけていること
脳炎は種類によっては予後が悪いものもあります。脳炎についてしっかり説明し理解していただいた上で、今後の治療について一緒に向き合っていくことを心がけています。
脳炎は神経学的検査や血液検査のみでは確実的な診断が難しく、全身麻酔をかけてMRI検査や脳脊髄液検査を行うことで診断します。
年齢や体調に合わせて検査の必要性やリスクについて説明し、画像検査の設備が整った動物病院をご紹介致します。
脳炎の程度や症状に応じて必要な治療は異なります。
特発性脳炎ではステロイドや免疫抑制薬を使用するため副作用や治療費が重要なポイントになります。しっかりと説明し話し合った上で治療を進めていくことを心がけています。
初診時の一般的な検査費用
当院では、病気の診断や状態把握のために、必要と思われる検査を選択致します。以下に一般的な脳炎の検査料金をご紹介します。
検査内容 | 料金の目安 |
---|---|
カルテ新規開設料 | 1,100円 |
初診料 | 4950円 |
神経学的検査 | 4,130円〜 |
血液検査 | 7,660円〜 |