犬猫の慢性腸症と炎症性腸疾患(IBD):症状や検査・治療法について解説 | 動物医療センターPeco

この記事では獣医師監修のもと、犬と猫の慢性腸症の考えかたと、いわゆる炎症性腸疾患(IBD)について、症状や検査・治療法を解説しています。動物病院に連れて行く前に参考にしてください。

記事の監修者
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大野耕一
動物医療センターPeco 院長 獣医師

犬猫の慢性腸症と炎症性腸疾患(IBD)とは?

寄生虫とかウイルスなどのように原因がはっきりせず、慢性的な嘔吐や下痢などの消化器症状が続く状態のことを「慢性腸症」といいます。

慢性腸症は主に3種類に分けられる

慢性腸症は大きく以下の3つを含みます。

1)食事を変更することで症状が良くなる「食事反応性腸症」

2)抗菌薬を投与すると症状が良くなる「抗菌薬反応性腸症」

3)上記1)2)ではちゃんと症状がよくならず、慢性腸炎が持続する「炎症性腸疾患(IBD)」

*3)については、ステロイド薬で良化する「ステロイド(免疫抑制薬)反応性腸症」とよばれることもあります。また治療に反応しない「非反応性腸症」にさらに分類されることもあります。

炎症性腸疾患(IBD)の原因は?

IBDの原因は明らかにされていませんが、消化管の粘膜バリアの異常、免疫の異常、食事や腸内細菌叢などの異常などが、複合的に関連していると考えられています。

発症しやすい品種や年齢

若齢ではあまり発生は多くなく、中年齢~高齢での発生が多いと言われています。

すべての品種で発生がみられますが、犬ではジャーマン・シェパードや国内では柴犬などは頻度が高いことから研究が行われてきました。犬猫ともに発生がみられますが、IBDと判断されるのは犬のほうが多いように思われます。

IBDの症状は?

IBDに特徴的な症状はありません。慢性的な嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少、血便などが数週間以上続くことが一般的です。

同じ慢性腸症である抗菌薬反応性腸症や食事反応性腸症も同様の症状です。症状は最初は良化と悪化を繰り返すことが多いです。

気になる症状がある場合はご相談ください

急性の嘔吐や下痢は、数日で自然に(あるいは治療に反応して)症状が良くなることがほとんどですが、症状が長く続く場合には、IBDなどの慢性腸症も疑われます。とくに症状が落ちている場合には痩せて体力がなくなる前に動物病院で検査を受けることをおすすめします。

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炎症性腸疾患(IBD)の検査・診断法は?(動物医療センターPecoの場合)

検査室の風景

当院で実際に行う可能性のある検査についてご説明します。

※IBDのような胃腸の病気の診断では、血液検査や画像検査がほとんど役に立ちません。そのため、診断には数週間以上にわたって試験的に食事を変えたり、薬に対する反応をみることが必要です。状況によっては麻酔をかけた内視鏡検査で病気を鑑別することも必要です。あらかじめご了承ください。

問診・身体検査

すべての動物に対して行われます。IBDに特徴的な症状や身体検査所見は乏しいのですが、慢性的な経過であること、胃腸以外の症状がないかなどを確認することが重要です。

糞便検査

慢性的な嘔吐、下痢に対して寄生虫や細菌の異常について調べます。時として院外に感染症の検査を依頼することもあります。

血液検査

初診時には多くの動物で実施しますが、IBDは血液検査で診断はできません。むしろ胃腸の傷害によって生じる貧血の程度や、蛋白の低下、肝臓や腎臓への影響などを調べます。

超音波検査

IBDなどの慢性腸症では、一般的に特徴的な超音波所見はありません。むしろ胃腸のリンパ腫や他の病気を除外するために行います。

IBDで血液中の蛋白が重度に減っている状況(蛋白漏出性腸症)では、腹水などが確認できることがあります。

試験的治療

IBDとその他の慢性腸炎(抗菌薬反応性腸症、食事反応性腸症)は、内視鏡検査や病理検査(腸の組織の検査)では区別できません。

そのため、内視鏡検査を実施する前に、食事療法に対する反応や抗菌薬に対する反応をひとつひとつ数週間かけて調べていきます。飼い主様のご協力が必要になります。

内視鏡検査と病理検査

食事や抗菌薬でも症状が良化しない場合、内視鏡検査を実施します。麻酔をかけて内視鏡を用いて胃腸から小さな組織を採取して病理検査を行います。

内視鏡検査はすべての犬猫で必要ではなく、むしろ悪性のリンパ腫などを疑うときに実施されます。

IBDの治療法

薬物療法

治療には、多くの場合ステロイド薬が用いられます。ステロイド薬で良化する場合、投与量を徐々に減らしたり、他の免疫を抑えるお薬(免疫抑制薬)を併用したりしていきます。ステロイド薬は使用法を間違わなければ決して怖い薬ではありません。

すでに抗菌薬反応性腸症は除外されているはずですが、部分的に反応することもあり、抗菌薬も用いることがあります。

食事療法

すでに食事反応性腸症は除外されているはずですが、補助的な治療として、低アレルギー食などを用いることがあります。血液中の蛋白濃度が低くなっている場合には、低脂肪食を用いることもあります。

当院がIBDの診療で心がけていること

1. 他の病気を丁寧に除外し、飼い主様の協力についても説明します

IBDの診断は、特殊な検査はなく、症状、病歴そして他の病気の除外を丁寧に行うので、総合的な判断力が求められます。また飼い主様に試験的な治療に協力いただくので、事前にしっかり説明を行います。

2. ステロイドの使用を適切に行います

ほとんどのIBDではステロイド薬が必要です。ステロイド薬は正しくしっかり使用する必要があるので、説明の上で使用法を解説します。

3. 状況によっては内視鏡検査および病理検査を速やかに行います

IBDと判断した動物が、治療の反応が悪い場合には、リンパ腫などの悪性疾患の可能性もあります。その際には内視鏡検査を行い、組織をしっかり検査することを提案します。

初診時の一般的な検査費用

当院では、病気の診断や状態把握のために、必要と思われる検査を選択致します。以下に一般的なIBDの初診時の検査料金をご紹介します。

内視鏡検査が必要になる場合には、改めて内視鏡検査を別の日に実施することになります。

検査内容料金
カルテ新規開設料1,100円
初診料4,950円
血液検査7,660円〜
超音波検査4,500円〜
X線検査6,000円〜
細胞採取4,400円

※治療費は別になります。

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