この記事では獣医師監修の下、犬と猫の去勢手術について、そのメリットとデメリット、手術に適した時期や費用について解説します。

去勢手術とは?メリットとデメリット
去勢手術は精巣を摘出する手術で、第一の目的は不要な繁殖をさせないことです。望まれない子が産まれてくる不幸を防ぎます。
また去勢手術には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット1:病気の予防効果が期待できる
去勢手術を受け精巣を取り除き、男性ホルモンの分泌を抑えることで、以下のような雄特有の病気を予防する効果が期待できます。
病名 | 内容 |
---|---|
前立腺肥大 | 精液の一部を作る前立腺が肥大する病気。未去勢の高齢犬によくみられます(猫では稀です)。重症化すると排尿・排便が困難になります。去勢すると発症はほぼなく、症状が出てからの去勢でも効果はあります。 |
会陰ヘルニア | 会陰部(肛門の周囲)の筋肉が萎縮することで、そこに大腸や膀胱が入り込み、排便排尿が困難になる病気。未去勢の高齢犬によくみられます(猫では稀です)。雄性ホルモンの影響が考えられ、全身麻酔をかける手術が必要になります。 |
その他の精巣疾患 | 一般に精巣の病気は多くはありませんが、犬では時に精巣炎や腫瘍が見られます(猫では稀です)。若齢時の去勢によって防止できます。 |
肛門周囲腺腫 | 雄性ホルモンの刺激で良性の腫瘍化が認められ、未去勢の高齢犬でよく見られます。(まれに雌でも発生します) |
メリット2:問題行動の抑制ができる
確実とは限りませんが、男性ホルモンにより起こる問題行動の抑制が期待できます。具体的には、脚をあげて家具などにおしっこをするマーキング、他の犬猫とのケンカなどです。
逆にデメリットを確認してみましょう。
デメリット1:全身麻酔のリスクがある
去勢手術を受けるには全身麻酔をかける必要があります。健康な動物であっても、麻酔の危険性はゼロではありません。
ただし、術前に血液検査やX線検査などで、全身状態の評価を行うことで、リスクを最小限にすることは可能です。
デメリット2:術後太りやすくなる場合がある
術後に太りやすくなる理由ははっきりわかっていないこともありますが、主に食欲が増加することや、運動量や代謝の低下などが関係すると考えられています。そのため、去勢後は体重管理が必要になることがあります。
去勢手術はやったほうがいい?
メリットの方が大きいと考えていますので、繁殖をしていないのであれば実施することを推奨しています。
メリットとデメリットをしっかりとご理解いただいた上で、決めていただければと思います。
悩まれる場合には、お気軽にご相談ください。
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地下鉄東西線「神楽坂駅」徒歩1分
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去勢手術をやるならいつ?適した時期
時期は・・・
一般的には、6〜7ヶ月齢で実施します。
大型犬の場合には、1歳以降で実施するケースもあります。
適切な時期を過ぎた場合は?
時期を過ぎた場合でも、通常は問題なく手術を行えます。
高齢で手術を実施する場合には、麻酔リスクをより慎重に判断する必要があります。
去勢手術のおおまかな流れ(動物医療センターPECOの場合)

1.事前の診察
獣医師が飼い主様からその子の健康状態や飼育環境、病歴などを聴取します。
身体検査で全身状態を確認し、聴診で呼吸や心拍、心臓や肺の音を確認します。その上で、その子に合った去勢手術のタイミングをご提案します。
2.術前検査を実施
手術のおよそ1週間から数日前までに術前検査を行います。
血液検査
貧血や脱水がないか、肝臓や腎臓などの臓器の状態を評価します。
胸部X線検査
心臓の大きさや形、気管や肺などの状態を確認します。
検査結果のご説明
担当医が術前検査の結果に加え、手術当日の流れや注意事項等についてもご説明します。
術前検査にて何らかの異常や病気が見つかった場合は、治療を優先させていただくこともあります。
3.手術当日
手術当日の朝、体調を確認した上で動物をお預かりします。
朝お預かりして、日中に手術となります。(必ず連絡がとれるようにしておいてください)
4.当日中にお迎え
術後の状態を獣医師が確認した上で、基本的に手術当日の夕方頃に退院となります。
5.手術後
手術から1週間〜10日前後で、傷口を確認しながら抜糸を行います。※猫ちゃんは抜糸はありません。
手術後に気になることがございましたらお気軽にご相談ください。
去勢手術の費用
他の手術とは違い、セット料金でご案内しています。
動物種や体重により料金が異なりますので、詳細はお問い合せください。
犬の去勢手術料金
体重 | 5kg未満 | 5kg以上 10kg未満 | 10kg以上 15kg未満 | 15kg以上 |
---|---|---|---|---|
術前検査 | 22,000円 | 22,000円 | 22,000円 | 22,000円 |
去勢手術 | 39,930円 | 42,350円 | 45,980円 | 54,450円 |
総額費用 | 61,930円 | 64,350円 | 67,980円 | 76,450円 |
猫の去勢手術料金
項目 | 料金 |
---|---|
術前検査 | 22,000円 |
去勢手術 | 36,300円 |
総額費用 | 58,300円 |
ペット保険は適用される?
一般的に、ペット保険は病気やケガの治療に対し適用されます。そのため、病気の予防や問題行動の抑制を目的とした去勢手術は、保険適用の対象にはなりません。
補助金
望まない繁殖を防ぐ目的で、自治体によっては猫の去勢手術に数千円程の補助金が出る場合があります。
当院では、渋谷区在住の猫の飼い主様が助成金を受けられるよう、「渋谷区協力獣医師」の登録を行っております。
自治体 | 補助対象動物 | 内容 |
---|---|---|
渋谷区 | 猫 | 「渋谷区協力獣医師」の病院で去勢手術を受ける場合、以下の条件を満たせば 5,000円の助成金が受けられます。 1.渋谷区内に飼い主が住んでいること。 2.渋谷区内において猫を飼育していること。 3.獣医師に手術可能と判断されること。 詳しくは渋谷区のホームページをご覧ください。https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/pet/neko/cat.html |