【獣医師監修】犬が甲状腺機能低下症になってしまう原因や症状から治療法と予防法

高齢犬が発症する可能性が高いといわれる、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)。名前だけみると難しそうな印象を受けますが、いったいどのような病気なのでしょうか。今回は、この甲状腺機能低下症の原因や症状について解説していきます。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

犬の甲状腺機能低下症の原因

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甲状腺機能低下症の原因は、免疫介在性(めんえきかいざいせい)のものが多くなっています。免疫機能が過剰に反応することで、犬の甲状腺を攻撃して発症してしまうというケースです。

また、毒物・薬物の摂取が原因で、甲状腺の機能が低下することもあります。何かしらの病気で長期投薬をしている場合は、獣医師に副作用の有無を確認した方がよいでしょう。

犬の甲状腺機能低下症の症状

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犬の甲状腺機能低下症とは、甲状腺から分泌されるホルモンが減少し、ホルモンバランスを崩してしまう病気です。

犬の喉の下にある甲状腺から分泌されるホルモンは、エネルギーやタンパクの代謝などを行う、犬の健康にとって不可欠なものです。この甲状腺に異常が起こり、ホルモンが減少すると、基礎代謝が低下し、皮膚のトラブルを起こしたり、体温調節がきかなくなったりするなどの影響が出ます。

甲状腺機能低下症は、仔犬の発症例は少なく、5歳を過ぎた高齢犬がかかりやすい病気といわれています。犬が甲状腺機能低下症を患うと、具体的には以下のような症状が現れます。

●皮膚の異常
●元気がなくなる
●寒さに弱くなる(体温の低下)
●体重が安定しない
●すぐ眠くなる
●脱毛
●悲しげな表情になる

甲状腺機能低下症は犬の基礎代謝の低下を招くため、皮膚の乾燥によるトラブルが起きやすくなるほか、皮膚への色素沈着が目立つようになります。合わせて毛艶が悪くなり、抜け毛も多くなります。

このほかにも、全身の各器官の機能が低下するので、嘔吐や下痢、ふらつきなどの症状がみられることもあります。

犬の甲状腺機能低下症の治療方法

犬が甲状腺機能低下症と診断された時は、減少したホルモンを補うために甲状腺ホルモン製剤の投与を行います。しかし、このホルモン投与を行ったからといって、低下してしまった甲状腺の機能を回復させることはできないため、完治には至らないのがこの病気の特徴です。

また、この時、ホルモンの投与量が多すぎると甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)という別の病気になってしまうおそれがあります。そのため、定期的に血液検査を受け、犬の体内の様子をチェックしながら量をコントロールして投与していく必要があります。

甲状腺機能低下症を発症してしまうと、甲状腺ホルモン製剤を生涯投与しなければなりません。しかし、適切な治療を続ける限り、症状が悪化することもありません。

犬の甲状腺機能低下症の予防方法

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犬の甲状腺機能低下症は原因不明な部分が多く、「これをすれば絶対にかからない」という方法は見つかっていません。

しかし、上述の通り適正量のホルモン剤を投与し続けることで症状が改善したり、悪化を防いだりすることができる病気なので、早期発見・早期治療が大切です。

飼い主ができることとしては、犬の健康を守るために、栄養バランスの取れた食事を与え、適度な運動を習慣化することです。こうして健康なカラダ作りに努めることで、その他の原因不明な病気にかかるリスクも低減できます。

甲状腺機能低下症になりやすい犬種

甲状腺機能低下症は高齢犬が発症しやすい病気といわれていますが、若い犬でも発症するケースがあります。

甲状腺機能低下症が多くみられる犬種としては、アイリッシュ・セッター、アフガン・ハウンド、エアデール・テリア、ゴールデン・レトリーバー、シベリアン・ハスキー、ドーベルマン、ビーグル、シェットランド・シープドッグ、ダックスフンド、プードル、ボクサー、ラブラドール・レトリーバーなど、カラダの大きさに関わらず発症する可能性があります。

甲状腺機能低下症は、犬の健康にとって重要な基礎代謝を低下させてしまう、とても恐ろしい病気です。愛犬につらい思いをさせないためにも、皮膚の異常や脱毛、元気の低下などの症状がみられた時は、すぐに動物病院で診てもらいましょう。

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