大切なのは“光”と“まるみ”ーー。岩合光昭さんに伺った、猫を上手に撮影する秘訣とは【後編】

大切なのは“光”と“まるみ”ーー。岩合光昭さんに伺った、猫を上手に撮影する秘訣とは【後編】

大自然の中で生きる野生動物から、犬や猫などの身近な動物まで、様々な動物にカメラを向ける世界的動物写真家・岩合光昭さん。前編では「ネコライオン」に関するお話をお聞きしました。後編では、岩合さんが心がけているという「猫を上手に撮る方法」を尋ねました。

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    PECO編集部
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大自然の中で生きる野生動物から、猫や犬などの身近な動物まで様々な動物にカメラを向け、世界を舞台に活躍する動物写真家・岩合光昭さん。インタビュー前半では写真展「ネコライオン」についてのお話を聞きました。後半では、撮影をする上で大切なことやスマートフォンで猫を上手に撮影する秘訣など、撮影に関するお話をご紹介します。

インタビュー前編はこちら
ネコとライオン、並べてはじめて見えてきたものとは。岩合光昭さん“ネコライオン”誕生秘話に迫る【前編】

まず気にするのは、“猫の機嫌”

PECO(以下ーー)
ーー猫を撮影する中で、大切にされていることを教えてください。

岩合光昭さん(以下略)

「守らなければいけないことは、猫を怒らせないことですね。機嫌を損ねると、撮影ができなくなってしまうので。常に『猫の機嫌を損ねないように撮影する』ことを心掛けています」

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ーー機嫌をよくするために、どのような接し方をされていますか? NHK BSプレミアムで放送されている『岩合光昭の世界ネコ歩き』の番組内では、よく猫をお褒めになっている姿を拝見しますが、撮影中はずっと話しかけているのでしょうか。

「猫によって使い分けをしていますが、大体は褒めますね。でも猫って言葉を理解しているわけではなくて、音で理解していると思うんです。だから声のトーンを少し高めにして『いい子だね』って言うようにしています。ただ猫によって、声がけが好きな猫もいれば、全く話しかけられたくないという顔をする猫もいるので、様子を見ながら『そんなに嫌がっていないかな』とか、『まだ難しいかな』などの判断をしていますね。声がけが好きそうな猫の場合は、メスであれば『美人さんだね』とか、オスであれば『男っぽいね、勇ましいね』とか、その猫の顔や体によって使い分けています」

現地の猫に“モテる”コツとは?

最初はその国の言葉で挨拶をする

ーー世界中の色々なところで撮影されていますが、現地の猫ちゃんに“モテる”コツとはなんでしょうか。

「なかなか難しいですね(笑)。地べたに這いつくばるようなスタイルでいるので、猫との顔が近づくんですよね。そうすると、猫も“人の顔”っていうのを認識できるようになるので、挨拶しやすくなったり、近づいてきてこちらを確かめる挙動があったりします。そういう時はできるだけ猫の顔に自分の顔を近づけるようにしています。ただ一匹一匹相性があるので、僕との相性を確かめながら近づいて、距離感を決めるようにしていますね。あとは、その国の言葉で最初に声をかけるようにしています。現地のコーディネーターに挨拶の言葉を教えていただくんです」

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時間をかけてでも、自然な表情を撮りたい

ーー撮影にあたって、おもちゃや食べ物など、気を引くための道具は使われていないのでしょうか。

「あまり使っていません。食べ物やおもちゃを出してしまうと、それに夢中になってしまうんですね。こちらに関心を示すよりも先に、物に関心を示している表情になってしまうので、その辺はすごく注意していますね。撮影が終わってから、『ありがとう、よく撮らせてくれたね』という意味でエサをあげることはあります」

「おもちゃも同じです。時間を短縮する意味では、おもちゃを使用すれば早くやってきてくれると思うんですが、顔の表情が興奮した“おもちゃ的な顔”になってしまう。それはそれで可愛いのですが、やはり時間をかけてでも自然な表情や動きを見たいんです」

猫はいろんな言葉を話す

ーー撮影をされている時、猫ちゃんに対して「ボキャブラリーが豊富」とお話ししているのを聞いたことがあります。そのボキャブラリーとはどういった意味なのでしょうか。

「“ニャア”という猫の声一つでも、『お腹がすいたよ』と『もう飢えて死にそうだ』とでは声が違うんですよ。猫語を理解できるわけではないけれど、猫の声のトーンとか『このタイミングでこういう顔をして、こういう鳴き声だったら、きっとこうなんだろう』とか、そういう判断はしていますね。耳を平たくして壁に向かっている猫がいれば『寒いねぇ』って言ってるんじゃないかなとか思います(笑)。その意味で“猫はおしゃべり”というか、ボキャブラリーを持っていると思いますね」

スマートフォンで撮影するコツは「光」と「丸み」

ーーPECOのユーザーさんから、スマートフォンでも猫を上手に撮影できるコツを知りたいという声が寄せられているのですが、アドバイスなどあれば教えてください。

「猫の毛の色によって色々と撮り方が違うと思いますが、撮影で大切なのは“光”なんです。映画にしても、金髪の方を撮る時と、黒髪の方を撮る時とでは撮影の仕方が違うんですね。金髪の場合は逆光の時、輪郭がきれいに光って写りますが、黒髪の方ですと、光を吸収してしまうので後ろから光を当ててもあまり効果がないんです。猫も同様で、白い猫の場合は逆光気味で撮ってあげるのがいいですね。黒い猫の場合は、窓辺にいるなら自分は壁側に寄って、光の入り方に対して横から撮るなど、顔の輪郭や体の線の丸みが見える場所を選ぶといいかなと思います。今少し触れましたが、猫特有の身体の“まるみ”を際立たせて見せるのは、猫を可愛く撮る秘訣かなと思います」

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「それと、顔にこだわっている写真をよく見かけるのですが、猫は全身も美しい。窓辺に上った時のシルエットなんか綺麗なんですよね。だから猫の顔にとらわれすぎず、全体のフォルムを撮ってあげると良い写真が撮れると思います。『猫のこういう写真が撮りたい!』など明確な理想を決めてしまうと、シャッターも切れないし撮られる猫も緊張してしまう。理想を決めずに撮影すれば、色んな意味でシャッターチャンスが限定されないですし、猫の動きの中から“良い一瞬”を発見してもらえるといいと思います」

最後に

ーー最後になりますが、PECOには多くの岩合さんファンがいらっしゃいます。そんなユーザーさんたちに向けてメッセージをお願いします。

「一番伝えたいことは感謝です。みなさん本当にありがとうございます。
いつも、カメラの前の動物や自然を大切に思いながら撮影をするようにしています。被写体を愛さなければ、人に楽しんでもらえるような写真を撮ることはできない。犬を撮るときはその犬を愛さなければ上手く撮れないし、猫がカメラの前に来たときは、もう『猫しか目に入らない』という思いで撮ります。決して八方美人というわけではなく、被写体になってくれる動物を好きにならないと、ご覧いただいたときに『可愛い』とか『きれい』といった言葉が生まれてこないと思うんです。みなさんがいるから、いっそう彼らと真摯に向き合えます。そういった意味で写真や映像を楽しんでくださる方々の存在に心から感謝しています。
お一人お一人に楽しんでもらえるものを作りたいと、いつも考えています。こちらが真剣になればなるほどその“想い”であったり“熱量”が見ている人に伝わると思うんです。なので、写真はもちろん、テレビ番組もスタッフ一同真剣に作っています。少しでも油断したら絶対に伝わってしまう。『とにかく真剣に作ること』、番組が続いている一番の秘訣だと思っています」

「ごめんなさい、長くなっちゃった、全然一言じゃないですね(笑)。
本当にみなさん、見てくれてありがとう。アーティストじゃないけど、『愛してるよ、みんな!!』(笑)」

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写真 / ©Mitsuaki Iwago

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