【ねこ好きリレーエッセイ】毎日が猫の日

『GOMES THE HITMAN』でのデビュー以来、バンド活動と並行しながら数多くの楽曲提供を行い、また、ソロ活動も精力的に続ける山田稔明さん。その豊かな才能の一つ、穏やかで詩的な文章で綴られた著書やブログでも、多くのファンを魅了しています。
昨年10月の吉祥寺PARCOで好評を博した近藤研二さんとのトークイベントに続き、2月3日から渋谷ヒカリエ ShinQs「ShinQs ネコフェス！！」で開催中の「PECO NEKO館 POP-UP STORE」にもご協力いただき、著書やCDが大人気！ 山田さんもまた、PECOになくてはならない存在なのです。
15年11月に出版された初の自伝的小説『猫と五つ目の季節』は、主に先代の愛猫・ポチちゃんとの物語。今回のエッセイでは、現在の愛猫・ポチ実ちゃんとの大切な日々の風景を、私たちに伝えてくださいます。

猫と暮らす人生

朝、窓から射す光に目を覚まして、まず耳を澄ましてみる。物音ひとつ聞こえないことを確認した僕は、そっと起き上がり、息を殺して抜き足差し足で寝室から仕事部屋へ。ハンガーの針金を再利用してドーム状の天蓋をつけ、厚いブランケットで覆ったフェルトのベッドでぬくぬくと眠っているのは、わが家の愛猫ポチ実だ。

「チミ！（ポチ実の愛称）おはよう」と声をかけるとハッと目を開け、バツの悪そうな顔で伸びをして、小さな声で鳴いて、大きなあくびを三回。その様子を撮影してインスタグラムにアップするのが僕の朝の習慣。反対に、僕が寝坊した朝は、どすんと僕の腹の上に飛び乗ってきて、ポチ実は手荒な目覚まし時計となる。「ニャアニャア、窓を開けろ」と騒ぐので僕は眠い目をこすって起き上がり、ベランダでの屈伸運動に付き合うことになるのだ。

午前中のわが家のリビングは燦々と日差しが降り注ぐから、お湯を沸かし、豆を挽いてコーヒーを淹れるとその湯気が美しく揺れて鼻をくすぐる。日向の窓辺で毛づくろいしていたポチ実が「庭に出してよ」とせがんできて、彼女が早速いつものように小さな庭をパトロールするのを僕はコーヒーを飲みながらぼんやりと見守る。雨の日に憂鬱そうな顔で雫を眺めている横顔を見ると、猫も人間も案外同じようなことを考えているんじゃないかなという気分になる。

幼いころからの猫の思い出、東京・吉祥寺で十余年を共に過ごした先代猫ポチとの暮らしと彼女の旅立ち、そして奇跡みたいなポチ実とのめぐり逢いをありのままに綴った『猫と五つ目の季節』は自分の半生を振り返る私小説になった。今いるこの場所にたどり着くまでの道程、いつも気付けばそばには猫がいたのだ。人間には「猫と暮らす人生」と「猫と暮らさない人生」のどちらかの道が伸びていて、僕は前者を選択した。これから先も笑ったり泣いたり、褒めたり叱ったり、嬉しかったり悲しかったりしながら、この道を歩いていくのだろう。どんな風景が僕らを待ち受けているのかと考えるとわくわくする。

人生とは思い出づくりだ、と僕は考える。丁寧にメモを書き込んで注釈をつけた、とっておきのアルバムを何冊完成させることができるだろう。最後の最後に「嗚呼、なんと猫にまみれた人生よ」と目を細めてページをめくるのが僕の理想。平凡な毎日の暮らしのなかにも無数の起伏があって、まったく同じ一日なんてひとつもないことに気付いたとき、僕らの人生は今より少し楽しくなる。

午後のお昼寝ーシエスターを終えたポチ実がまたニャアニャアと鳴きながらリビングにやってきたので、少し傾いて橙色を帯びた日差しの残る庭で彼女を遊ばせる。フッと風の吹く方向を見上げたポチ実につられて、空を見上げると沈丁花の匂いがどこからともなく漂ってきた。昨日までは気づかなかった匂いだ。 昨日と今日が同じようでいて、少しずつ違うっていうのが面白い。

猫の日実行委員会が1987年に制定した＜猫の日＞。「今日は2月22日だから」と愛猫にいつもより美味しいご飯をあげたり、格段丁寧にブラシでその美しい毛を梳いてあげたりするから猫たちは怪訝そうな顔をするけれど、猫と暮らす人間は、実はみんな思っている。2月22日は＜猫の日＞だけど、それ以外の364日もすべてが＜猫の日＞なんだよな、と。

URL：http://www.gomesthehitman.com/html/
blog：http://toshiakiyamada.blog.jp/
instagram：https://www.instagram.com/toshiakiyamada/

各種イベント情報

◆山田稔明「ポチバッジ展」

愛猫をモチーフにした人気バッジの歴史を展示、販売も行います。

日程：2017年2月10日（金）- 14日（火）
場所：経堂 cafe+gallery 芝生（東京都世田谷区経堂2-31-20）
TEL：03-3428-5722
HP：http://shiba-fu.com/）

◆ちよだ猫まつり 山田稔明＋近藤研二 チャリティーミニライブ

今年も近藤研二さんとちよだ猫まつりに音楽を添えます！

日程：2016年2月18日（土）15時頃から／観覧無料・予約不要
場所：千代田区役所1階 ちよだ猫まつり2017特設会場（千代田区九段南1-2-1）地下鉄九段下駅6番出口
HP：ちよだ猫まつり2017 HP（http://chiyoda-nekofes.jp/）

＊ちよだ猫まつりは18日（土）と19日（日）の二日間開催されます
＊終演後グッズの販売等を予定しています

◆猫ラボ個展「紫陽花の庭」LIVE

人気フェルト猫作家「猫ラボ」さんの個展期間中の3月25日にライブイベントの開催が決定しました。どこまでもこちらを見つめてくる手作りグラスアイの瞳とその柔らかな曲線に相応しい歌を奏でようと思います。猫ラボさんとのトークも。

日程：2017年3月25日（土）19時開場 19時半開演／前売3000円（税込）
場所：南青山 ビリケンギャラリー（東京都港区南青山5-17-6-101）
出演：山田稔明
TEL：03-3400-2214（ビリケン商会）

オフィシャル通販STOREにて2月20日19時より申込受付開始
→http://gomesthehitman.shop-pro.jp/?pid=113393538
＊限定人数につき売切の際はご了承ください

気になる次回のエッセイは・・・