【獣医師監修】猫の血尿 血尿の原因や考えられる病気、治療法、予防法について
猫の血尿には様々な病気が潜んでいることがあります。血尿に伴う症状や様子をよく見て、早めの対処を行うようにしましょう。
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
目次
猫のルーツと生態における尿の特徴
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健康な猫の尿はやや濃い黄色をしています。しかし、「色が薄くなる」「白濁する」「血尿が出る」「光る結晶が混ざる」などの異常が見られた場合、何らかの病気を発症している可能性があります。
猫の祖先は、砂漠に住んでいたリビアネコというヤマネコで、乾燥した環境に適応できるよう、少量の水で生活することができます。それには尿の濃縮が必要になるため、腎臓には常に負担がかかります。ですから、猫はもともと腎臓病や尿路結石といった泌尿器疾患にかかりやすいといえるのです。
猫の血尿から疑われる病気とは?
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尿に異常が見られる場合、とくに猫の尿に血液が混ざっていたら、膀胱や尿道が炎症を起こしている可能性があるので注意が必要です。疑われるものとしては、次のような疾患があります。
膀胱炎
細菌や真菌等の感染や尿結晶が原因で、膀胱に炎症が起こる病気です。
尿路結石症(尿石症)
尿がアルカリ性になるとできる「ストルバイト」、酸性に傾くと生じる「シュウ酸カルシウム」による結石が、膀胱や尿道を傷付けたり、尿道に詰まったりすることで起こります。
尿道閉塞
結石が尿道に詰まる、腫瘍等が尿道を圧迫することが原因で、尿が出にくくなる、またまったく出ないという状態が続きます。放置すると膀胱破裂や、尿毒症に発展。数日で死に至るので、緊急の治療が必要です。
前立腺肥大
猫では犬ほど発生頻度が多くはありませんが、去勢していないオスに多く見られる病気です。男性ホルモンの分泌過多で肥大した前立腺が尿道を圧迫し、尿が出にくくなります。
腫瘍
何らかの腫瘍が体内にできているため、血尿が出るケースがあります。
タマネギ中毒
タマネギや長ネギといったネギ類に含まれる成分「アリルプロピルジスルファイド」が、猫の赤血球に含まれるヘモグロビンを酸化させることにより引き起こされる中毒症状です。厳密には血尿ではなく、血液中の赤血球が破壊されて、赤い色素が尿中に排泄されることによって生じます。
血尿に伴う猫の不調サインを見逃さない
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血尿が出ている場合は、猫の様子を見ることが大切です。何らかの疾病が疑われる主な症状としては、「嘔吐」や「下痢」をはじめ、「頻繁にトイレへ行く(頻尿)」「トイレに行っても尿が出ない」「長くトイレにいる(排尿困難)」「排尿時に痛みを伴うことがある」「下腹部や陰部をしきりに舐める」などがあげられます。血尿に次のような症状があるようなら、早めに病院へ連れていくようにしてください。
■嘔吐:膀胱炎、尿路結石症(尿石症)、尿道閉塞、前立腺肥大、タマネギ中毒など
■下痢:タマネギ中毒など
■頻尿:膀胱炎、尿道閉塞、尿路結石症(尿石症)など
猫の血尿はストレスも原因?
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近年「特発性膀胱炎(猫間質性膀胱炎とも呼ばれる)」という病気を発症する猫が増えています。原因の多くはストレスによるものとされていますが、詳しいことはまだわかっていません。発症理由として考えられているものには、「多頭飼育」「生活環境の変化(引っ越し、家族構成の変化、ペットフードの変更など)」などがあります。この場合は血尿のほかに排尿困難や頻尿といった症状が出るようです。
メスは泌尿器系の病気にかかりにくい?
オスもメスも血尿を伴う原因は同じです。しかし、オスは細く長い尿道を有しているため、オスの方が尿路結石や尿道閉塞を発症しやすいといえます。メスは、オスに比べ尿道の直径が太く、また膀胱から尿道口までの距離が短いため、膀胱炎や尿道炎を起こしやすい傾向にあります。また、メスは子宮などの病気で血尿が出る可能性もありますから、オス・メスともに、様子がおかしいと思ったら獣医師に相談しましょう。
猫に起こりやすい病気の治療法
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猫が発症しやすい膀胱炎、尿路結石症(尿石症)、タマネギ中毒では、次のような治療が行われています。
膀胱炎の治療
細菌感染が原因になっている場合は、抗生物質を投与して経過を見ます。
尿路結石症(尿石症)の治療
尿道口からカテーテルを入れて尿道を洗浄、結晶を体外へ洗い流します。ただ膀胱の中に結晶が残っているケースもあるため、しばらくは治療を続ける必要があります。また先述の治療で除去できない大きな結石の場合は外科的な治療、手術を行います。
タマネギ中毒の治療
まず催吐処置によってタマネギを吐かせます。間に合わず中毒が発生してしまった場合は、抗酸化剤やステロイド剤を使用し、赤血球の破壊を食い止める治療を行います。それでも症状が改善されなければ輸血をしますが、この状況まで悪化すると死亡率が高くなります。
猫の様々な疾病のサインとなる血尿を見逃さないためには、週に1度の尿チェックがおすすめです。排尿時におたま状のもので採尿、ビニールシートの上で確認するなどして、尿の状態を把握しておきましょう。尿の感じがいつもと違うようなら動物病院へ行くのはもちろんですが、病気予防のために、年に1度は病院で尿検査をしてもらうといいでしょう。
また、普段の餌にも注意が必要です。普段から食べ過ぎないようにすること、またタマネギをはじめネギ科の食物に加え、生のイカ、チョコレートやココアなど、トラブルを起こすような食物を口にしないよう、気を付けてあげてください。