【獣医師監修】猫の歯の状態とサイン、 歯のケアについて

現代の猫は、歯周病にかかるケースが増えています。歯ブラシと磨き粉を使って、定期的な歯磨きを心がけましょう。歯石は歯周病の原因に!

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

猫は虫歯にならない

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猫の歯は何本あるか知っていますか? 猫は全部で30本の歯を持っています。生後3週間くらいから乳歯が生え始め、その後生後4~6ヶ月くらいまでに永久歯に生え変わるのが一般的です。上下に2本ずつある犬歯は口を閉じてもはみ出るほど立派ですが、それに比べて前歯は小さく目立ちません。

獲物をつかまえて食べる時、猫は噛まずに丸飲みします。噛んでいるように見えるのは、飲み込める大きさにちぎっているだけ。歯を使わないため、食べカスが残らず、しかも虫歯菌もいないので、猫は虫歯にならないのです。ただ、やわらかいキャットフードが主食の猫は歯に食べカスが残り、歯石がたまってしまいます。この歯石が原因で、猫の歯周病が急増しているそうです。

歯の変色、口臭は病気のサイン

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毎日、猫の口の中をチェックするのは大変ですが、口腔内の病気は物が食べられなくなることにつながるため、初期の段階で気づいて治療してあげたいものです。

歯が変色している

歯の根元が黄色、もしくは茶褐色に変色しているのは「歯垢」が原因。それが固まったものが「歯石」です。そのままにしておくと、細菌が繁殖して炎症を起こし、「歯周病」を発症してしまいます。

歯茎が腫れている

「口内炎」や「歯周病」になると歯茎が腫れますが、「歯根吸収」も歯茎が真っ赤に腫れて、痛みを伴います。その名の通り、歯が取れ、歯の根元も溶けて吸収されてしまう病気で、発症する原因はわかっていません。痛みが続くため、初期であっても抜歯をして対処することが多いようです。

口臭がする

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「歯周病」や「歯根吸収」でも口臭は発生しますが、口の周りが汚くなるほど涎が出て、ひどい口臭がする時は「口内炎」の可能性があります。口の中に炎症が起き、真っ赤にただれるなどの症状がみられます。この口内炎は、猫免疫不全ウイルス(猫エイズ)や猫白血病ウイルスに感染することで、発症しやすくなるといわれています。

歯ぎしりをする

乳歯から永久歯へと歯が生え変わる時や、「不正咬合」といって咬み合わせが悪い猫は、あくびの後に歯ぎしりをすることがあります。不正咬合は、ペルシャやヒマラヤンなど鼻ぺちゃ種の猫に多いようです。また、「歯周病」や「口内炎」など、歯や歯茎に違和感を覚える口腔内の病気にかかった時も歯ぎしりをします。それ以外で猫が歯ぎしりをする時は、ストレスが原因かもしれません。

歯が抜ける

仔猫の時の生え変わりと違い、成猫の歯が抜けるのは重大な病気が潜んでいる証拠です。細菌感染により、歯茎に炎症が起こるのが歯周病ですが、悪化すると歯を支えている歯槽骨まで炎症が広がり、「根尖部膿瘍」になり、歯が抜けてしまいます。歯肉の腫瘍で、猫ではもっとも発生率の高い「扁平上皮ガン」になると、歯がぐらぐらする症状がみられます。最初は腫れやしこりがないので、歯周病に間違われることが多いそうです。

歯のケア

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人間と生活し、食生活も大きく変わった現代の猫には、口の中のお手入れが必要です。とくに、歯周病を防ぐためには、歯磨きが欠かせません。とはいえ、猫の歯磨きは犬以上に大変です。できれば、永久歯が生え揃う生後6ヶ月頃までに慣れさせておきたいものです。

そもそも、猫は口の周りを触られることを嫌います。いきなり歯ブラシを使うのではなく、口や歯を触っても噛まないようにしつけておくことが大切です。口や歯を触っても怒らなくなれば、次にカーゼを使って歯を磨きます。この時、ガーゼには猫が好きな食べ物の汁や動物用歯磨きペーストを染み込ませると効果的です。ガーゼの歯磨きを嫌がらなくなったところで、初めて歯ブラシを使います。

歯ブラシ、歯磨き粉は猫用のものが市販されているので、それを用意しましょう。ブラッシングは奥歯、犬歯、前歯の3箇所に分け、順番に磨いていきます。念入りに磨きたい部分は、歯石ができやすい上顎の奥歯。短時間で確実に磨いてください。

歯磨きは1日1回が理想的ですが、歯垢が歯石になるまで一週間ほどかかるため、週2~3回程度磨けば大丈夫です。どんなにがんばっても絶対に歯を磨かせてくれない猫には、口腔内スプレーや、噛めば歯磨きの代わりになる便利なケアグッズなどを使ってみるのもよいでしょう。

歯磨きも大切ですが、歯や口腔内のトラブルを防ぐには、どんなエサを選ぶかも重要です。やわらかいキャットフードよりはドライフードの方が歯には良いとされています。デンタルケア用のキャットフードなどもあるので、忙しくてまめに歯磨きをしてあげられない飼い主は、そうしたキャットフードを利用するのも一つの手段です。

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