【獣医師監修】猫の歯磨き、しないとどうなる? 歯磨きの頻度とやり方

歯磨き粉はつけた方がいいのか、いつから始めるのか、歯磨きガムや歯磨きおもちゃはそろえた方がいいのか、猫の歯磨きについて考えます。

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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

猫に蔓延する歯周病

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人にくらべて猫は歯垢が歯石にかわるまでが早く、歯肉炎や歯周病になりやすいことが知られています。また、ドライフードよりも缶詰食を好む猫に多くみられるとの報告もあります。

「歯周病」とは、歯垢の中の細菌が原因となって起こる炎症で、歯肉だけが炎症を起こす歯肉炎とは違い、歯や歯の周囲にある靭帯、歯を支える骨にまで炎症が起こることがあります。歯周病により歯が抜け落ちたり、病巣部が顎の骨を貫通して顔に小さな穴が開きそこから排濃したりすることがあります。また、口の中の症状にとどまらず、歯周ポケット深くに入り込んだ細菌が血管を伝って全身に広がり、臓器にダメージを与えてしまうことも分かってきました。

予防のためには、人間と同じく歯磨きがもっとも効果的です。飼い主が定期的に猫の口の中をチェックし、歯ブラシで歯垢を取り除いてあげましょう。

歯磨きの頻度

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基本的には初めてされることに対して簡単には言うことを聞いてくれません。歯ブラシで歯を磨こうとしても、ほとんどの猫は嫌がります。無理に口を開けようものなら、噛まれてしまうかもしれませんし、二度と口を触らせてくれなくなるかもしれません。

そうならないためにも、仔猫のときから歯ブラシの習慣をつけておきたいものです。永久歯が生えそろう生後6カ月ごろまでに慣れさせると、素直に磨かせてくれるようになります。

歯磨きは毎食後するのが理想ですが、なかなか難しいと思いますので、1日1回を目標にガーゼなどで歯の汚れを拭き取るか、可能であれば歯ブラシを利用して歯磨きをしてあげましょう。それも難しいようであればまずは週に2~3回を目標にしましょう。

歯磨きの方法

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猫が歯ブラシに慣れるまで、トレーニングの期間が必要です。猫が嫌がる素振りを見せる前に終了するよう心がけましょう。

歯の磨き方

口周りを触るところから始めます。

口の周りを触る
手前の歯を触る
歯ブラシ(歯磨きシート)が顔の近くにあることに慣れさせる
歯ブラシ(歯磨きシート)で歯を触る
歯ブラシ(歯磨きシート)で歯を一本磨いてみる

全てのステップを、ご褒美を与えながら行います。少しでも嫌がる素振りを見せたらすぐにやめましょう。一回に行う時間はごく短くします。

次のステップに進めるまでに1週間ほどかかることもありますし、前のステップに戻ってやり直しをした方がいいこともあります。嫌な思い、怖い思いをすることなく、ご褒美という自分にとって良いことが起こるんだと学習させながら少しずつ階段を上っていくイメージで行えば、受け入れてくれるようになります。
嗜好性の高い歯磨きペーストもありますので、指や歯ブラシ、歯磨きシートにつけてあげると自分から舐めにきてくれ、抵抗が薄まることもあります。
無理に口に触ると思わぬ怪我を招きます。また、歯磨きシートの誤飲事故なども増えているので気をつけたいですね。

デンタルケア製品

どんなに練習してもまったく慣れない猫には、歯磨き代わりのデンタルケア製品を使ってみましょう。たとえば、デンタルジェル、口腔内スプレーはつけるだけ、吹きかけるだけなので手軽に使えます。

噛んで、または食べて歯垢除去などの口腔ケアに効果があるのが、「歯磨きガム」や「歯磨きおやつ」です。味の種類も豊富で、だいたいの猫が喜んで食べてくれるようです。ただし、噛まないと効果がないので丸のみしないよう注意が必要です。

それ以外にも、噛んで歯垢を落とす「歯磨きおもちゃ」は、またたび入りなど猫が好むようにつくられており、遊びながら歯もきれいになるアイディア商品です。こちらも、いろいろ出ているので、試してみるのもいいでしょう。

プロに任せる場合

猫の歯磨きは、動物病院やトリミングサロンでやってくれますが、トリミングサロンの場合、猫を扱うところが少ないので、事前の確認が必要です。トリミングサロンでは、オプションとして設定しているところが多く、犬の場合は追加料金という形で価格は500円程度のところが多いようですが、料金も確認しましょう。

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動物病院は口内診療として、歯周病の有無をチェックし、その原因となる歯石があれば除去してくれます。歯周病治療のための歯石除去には全身麻酔が必要です。料金は2~3万円程度ですが、病院によってことなるため直接電話などで確認しましょう。また、術前の血液検査なども必要になってきますし、症状によっては抜歯や歯肉の縫合なども行うため単なる歯石除去ではなく口腔外科の領域になることもあり、費用は大きく異なります。

猫の歯周病は思った以上に深刻で、2歳以上の成猫のじつに8割以上が歯周病や口腔内のトラブルを抱えていると言われています。「食」に直接かかわる病気だけに、痛みでエサが食べられない心配もありますし、口の中だけにとどまらず多臓器への影響もあります。口腔内のケアは、仔猫のうちから始めましょう。

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