【獣医師監修】猫の急性胃腸炎 考えられる原因や症状、治療法と予防法

猫に急な嘔吐や下痢の症状がみられた時は、急性胃腸炎かもしれません。今回は、猫の急性胃腸炎の症状、原因、治療法などについて解説します。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

猫の急性胃腸炎の症状

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猫の胃腸炎には2種類あります。症状が1週間程度で治まるものを「急性胃腸炎」、1週間以上続く胃腸炎を「慢性胃腸炎」と呼びます。このうち、急性胃腸炎のおもな症状は次の通りです。

●突然の嘔吐
●下痢
●血便
●軟便
●吐しゃ物の中に血が混じる
●食欲不振
●脱水症状

初期症状としては、突然の嘔吐や下痢が多くみられ、重篤化すると血便や脱水症状などが現れます。とくに脱水症状は命に関わる危険があるので、動物病院での治療が必要です。また、胃の中のものを吐き出す時に、胃酸が逆流することで食道を傷つける「逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)」を発症することもあります。

急性胃腸炎による嘔吐とよく似た症状として、喉や食道に引っかかったものを吐き出す「吐出(としゅつ)」や、エサや水をうまく飲み込めずに口の端からこぼしてしまう「嚥下困難(えんげこんなん)」があります。

これらと急性胃腸炎とを見分けるポイントは、お腹を大きく伸縮させながら、胃の内容物を吐き出しているかという点です。胃に炎症を起こしている場合は、胃の中を空にしようとして、腹筋や横隔膜を使って吐き出すので、お腹が大きく動きます。よく観察して見極めてください。

急性胃腸炎の原因

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猫が急性胃腸炎を発症する原因は様々です。

誤飲や誤食

猫が食べてはいけない食物、植物、毒物などを摂取した時に急性胃腸炎を発症します。これは急性胃腸炎を起こす原因として、もっとも多いといわれています。誤飲・誤食したものによっては中毒症状が出るだけではなく 、緊急を要する可能性もあるので、必ず獣医師に診てもらってください。

傷んだ食べ物を食べた

猫に与えた食べ物が傷んでいたり、腐っていたりすると、急性胃腸炎を発症することがあります。梅雨から夏にかけては、暑さや湿気などにより食べ物の劣化が早く進むので、食事を与える際には注意しましょう。水分量が多く、傷みやすいウェットフードはとくに注意が必要です。また、水もこまめに交換してあげましょう。

キャットフードの変更

キャットフードを変更した場合、消化機能が新しいフードに慣れず、胃腸炎を起こすことがあります。フードを変更する際は、それまで与えていたフードに新しいフードを少しずつ混ぜながら、1ヶ月ほどかけてゆっくりと切り替えてください。

ウイルスや細菌に感染

猫がパルボウイルスやコロナウイルスなどのウイルス、サルモネラやクロストリジウムなどの細菌に感染することで、急性胃腸炎を起こすことがあります。

急性胃腸炎の治療方法

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誤飲・誤食への対処

誤飲・誤食が原因の場合、猫が異物を飲み込んだ場合と同様の処置を取ります。固形物の場合は、催吐剤(さいとざい)や内視鏡、鉗子(かんし・手術用のマジックアーム)を用いて取り除き、液体の場合は胃洗浄や吸着剤の投与を行います。

絶食・絶水

体力のある猫の場合は、12時間の絶水と24時間の絶食を行い、傷ついた胃を回復させます。その後、水を飲むことからスタートし、消化しやすい低脂肪、単純たんぱく質(アミノ酸のみで構成され、他の化合物を含まないたんぱく質のこと。アルブミン、グロブリン、グルテンなど。)、単純炭水化物(ブドウ糖や果糖、精白した穀類など)などの食事を与えながら様子をみます。

輸液

嘔吐によって失った体液を補給するため、輸液が行われます。症状が重篤な場合は静脈点滴が行われることもあります。

基礎疾患の治療

ウイルスや細菌の感染が原因の場合は、それらを体内から除去するための治療を施します。

急性胃腸炎の予防方法

急性胃腸炎の予防方法としては、定期的な健康診断と予防接種が挙げられます。また、食事や水の管理を徹底し、食べ物は猫が口にしても安全なものかどうか確認してから与えるようにしましょう。さらに、猫が誤飲や誤食をしてしまわないよう、食べ物の保管場所は猫の手が届かない場所にしましょう。

急性胃腸炎は慢性化する場合もあるので、発症した時には迷わず病院へ連れていってください。また、日常生活において誤飲・誤食しそうなものを猫から遠ざけたり、食生活に気をつけたりすることである程度予防することもできます。大切な愛猫が胃腸炎で苦しむことがないよう、普段の生活から気をつけるようにしましょう。

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