【獣医師監修】毛づくろいの役割。犬と猫で毛づくろいの意味は違うの?
自分のカラダを舐める毛づくろい。犬も猫もよく毛づくろいをしているイメージがありますが、何のためにしているか知っていますか? じつは、犬と猫とで毛づくろいをする意味は違うのです。
- 更新日:
監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
犬は毛づくろいをしない?
Jaromir Chalabala/Shutterstock.com
犬は、毛づくろいのために自分を舐めることをしません。これは、より正確にいうと「被毛の手入れのために、自分の毛を舐めることはしない」ということです。
ここからわかることが二つあります。一つは、犬の被毛の手入れは飼い主がしなければならないということ。もう一つは、犬が自分のカラダを舐めている時は、何か異変を感じているサインであるということです。
犬の被毛の手入れは飼い主の役割
繰り返しになりますが、犬は自分で毛づくろいをしないので、犬の被毛を綺麗に保つためには、飼い主がお手入れをしてあげなくてはなりません。被毛のお手入れには、お風呂に入れたり、シャンプーをしたりするのはもちろん、ブラッシングやトリミングなど様々な要素があります。これら犬のお手入れ全般を指してグルーミングと呼びます。
グルーミングを施すための前段階として、犬が飼い主にカラダを触られても嫌がらないようにしつけることが重要です。また、お手入れの最中には、犬にじっとしておいてもらう必要があります。犬がじっとしていられなければ、被毛の手入れはもちろん爪切りや耳掃除などもすることができません。
そのため、仔犬の頃から少しずつ慣れさせて、成犬になってからも落ち着いてお手入れを受けられるようにしましょう。
何か異変を訴えている
犬が自分を舐める原因としては、皮膚の痒みや炎症が考えられます。たとえば、皮膚にダニやノミが付着している場合、痒みを緩和させるために患部を舐めます。そのほか、皮膚病やアレルギーなどが原因で、皮膚に炎症を起こしていることも考えられます。
ダニやノミは散歩中に付着することが多いので、普段から定期的にノミ・マダニ駆除剤を使用するほか、ブラッシングを欠かさないようにしましょう。また、皮膚に炎症を起こしている場合は、早めに動物病院へ連れて行ってください。
皮膚のトラブル以外では、ストレスが原因となっている場合もあります。多くの場合は、飼い主に構ってほしいというサインであるといわれていますが、まずはここしばらくの生活を振り返り、ストレスの原因を特定しましょう。
猫が毛づくろいをする理由
Massimo Cattaneo/Shutterstock.com
犬とは違い、猫は自分の毛を自分で手入れする習性を持っています。起きている時間の約10%にあたる時間を自分の毛づくろいに充てているともいわれています。被毛の長さや毛質にもよりますが、猫は基本的に毛の汚れを自分で取り除くので、グルーミングはそれほど必要ではありません。爪を切ったり、換毛期にブラッシングをしたり、カラダが汚れた時にお風呂に入れるくらいでいいでしょう。
猫が毛づくろいをするのは、食後やくつろいでいる時が多いです。食後の毛づくろいは、猫の本能的な習性の一つで、捕まえた獲物を食べた後についた汚れやニオイを取り除くためにしていた行動が、現在も残っていると考えられています。また、毛づくろいには体温調節の役割もあります。猫は肉球にしか汗をかかないので、発汗で体温調節をすることができません。そこで、毛づくろいをして唾液を被毛にたっぷりつけ、その唾液が蒸発し気化熱を奪うことで体温を下げています。
そのほかに、猫が極度の緊張や興奮、ストレスを感じた時、自分を落ち着かせるために毛づくろいをする場合もあるようです。
猫がまったく毛づくろいをしなくなった時は、どこかをケガしているか、病気のサインと考えられます。普段から猫の行動を観察し、異常を感じた時はすぐに動物病院に連れて行ってあげてください。
このように、犬と猫で毛づくろいをする意味はまったく異なります。飼い主として正しい知識を持ち、日常的な行動にひそむ病気のサインを見逃さないように心がけましょう。