【獣医師監修】健康で丈夫な歯を一生キープしたい! デンタルケアに関する<Q&A>30連発
ペットのデンタルケアへの関心が高まっている一方で、まだまだ不安なことや分からないこともたくさんあります。「間違ったケアをしてかえって歯にトラブルが生じた」、などということがないようにデンタルケアについての正しい知識をつけておきたいものです。今回は、三宅先生に“歯に関する30の質問”に答えてもらいました!
- 更新日:
監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長
【1章】歯のトラブルって?
犬や猫も人間と同じように虫歯など歯のトラブルがあるのでしょうか? まずは、トラブルの内容についてどんなものがあるか確認してみましょう。
1)Q:犬や猫の歯も、人間のように乳歯から永久歯に生え変わるの?
A:もちろん犬や猫の歯も生え変わります。乳歯は生後3〜4週間ほどで生えてきます。その後、4〜6ヵ月齢くらいから乳歯が徐々に抜け始め、7ヵ月齢〜1歳くらいまでに永久歯が揃います。乳歯が抜けたのに気づかない人が多いのは、抜けた乳歯を飲み込んでしまうことが多いからです。便と一緒に排泄されるので心配はありません。
2)Q:甘い物を食べさせると虫歯になるの?
A:甘い物はあまり関係なく、口腔内の環境が人間と異なることにより、犬や猫は通常虫歯にはなりにくいといわれています。むしろ歯垢がたまることによって発生する歯周病がほとんどです。
3)Q:歯垢がたまりにくい食事とかはあるの?
A:ドライフードの方がウエットタイプより歯垢がつきにくいといわれています。また、歯垢をつきにくくするフードなども販売されています。
4)Q:すでに口臭があるけど、どんなトラブルが考えられるの?
A:歯肉炎、歯周病、その他口腔内の炎症(口内炎、怪我、腫瘍など)、内臓疾患なども考えられます。
5)Q:歯石を放っておくとどうなる?
A:歯肉炎、歯周病になるおそれがあります。歯周病は顎の骨を溶かしたり、心臓や腎臓などの臓器にも悪影響を与えたりする疾患なのであなどってはいけません。
6)Q:ガムを噛ませていると、丈夫な歯をキープできるって本当?
A:歯垢がつきにくいというメリットで、歯みがきガムを与えることが多いようです。ある程度の効果が得られると思いますが、やはり歯みがきが必要です。
7)Q:犬と猫で歯のトラブルの違いは?
A:歯のトラブルというよりも口腔内のトラブルですが、歯肉炎、歯周病になりやすいというところは共通です。また、猫では難治性の口内炎ができることがあります。
8)Q:固いヒヅメや生の骨は、口腔内の清掃に役立つって本当?
A:以前は歯のためにひづめなどを与えることが推奨されていましたが、固すぎて歯を痛めてしまうことが分かったので、今では積極的に与えない方がよいといわれています。
9)Q:犬の歯は丈夫だと聞くけど、引っ張りっこで歯が折れたりしないの?
A:通常の引っ張りっこで抜けたり折れたりすることはありませんが(その前に犬が離すでしょう)、ロープなどに歯が引っかかっていることに気づかず無理に引くと、そのような事故が起こるおそれはあるでしょう。
10)Q:犬種や猫種によって、歯が丈夫なタイプ、弱いタイプはあるの?
A:種類によって、強い、弱いということはありません。
【2章】歯のトラブルが起こったら?
口臭がしたり、食欲が落ちたりしたら歯のトラブルかもしれません。放っておくと痛みが生じたり歯が抜けたりするだけではなく歯周病により内臓疾患につながることもあるので、早めに対応しましょう。
NEstudio/Shutterstock.com
11)Q:口臭を感じたら、まずどうすればいい?
A:口腔内を観察しましょう。大きな異常がなければデンタルケアをして口臭に変化があるか確認してみてもいいでしょう。
12)Q:歯専門の病院でなくても、一般の動物病院で治療してもらえるの?
A:歯垢や歯石の除去、グラグラした歯の抜歯などはほとんどの病院で行っているでしょう。ただし、欠けた歯を埋める必要があったり、重度の歯周病だったりする場合は歯科に精通した病院を紹介されることもあります。
13)Q:歯肉炎や歯周病の場合、病院ではどんな施術をするの?
A:麻酔をかけ、スケーリング(歯垢や歯石を綺麗に除去)し、歯周ポケットの中まで掃除をします。グラグラしている歯があれば抜歯をし、場合によっては抜歯で開いた歯肉の穴を縫うことも。その後、歯の表面を綺麗に研磨し消毒をして終了となります。
14)Q:10歳と高齢ですが麻酔しても大丈夫?
A:術前検査で問題がなければ心配する必要はありません。
15)Q:麻酔なしで歯石を取る方法はあるの?
A:歯石を取るだけならできますが、歯肉炎や歯周病は歯肉ポケットの中の掃除をしないと意味がないので、それらの治療にはなりません。
16)Q:犬と猫でトラブル対策の違いはあるの?
A:基本的には同じです。ただ、猫の方が犬よりも家庭でのデンタルケアは難しいでしょう。猫の場合、口を触られることを嫌がる子が多いので、子猫のときからデンタルおやつなどを使って少しずつ気長に慣らしておく必要があります。
17)Q:歯グキが黒ずんで来たのですが、どんなトラブルが考えられる?
A:心配のいらない色素沈着もありますが、歯肉に悪性腫瘍ができることがありますので、受診して必要に応じて病理検査をしていただいた方がいいでしょう。
18)Q:歯石を取ってもらう費用って、いくらぐらいかかるの?
A:抜歯の必要がない簡単なスケーリングであれば、歯科処置料としては1万円ほどです。そこに術前の血液検査、レントゲン検査、麻酔料金などが加算されます。重度の歯周病の場合は、歯石を取るというよりも口腔外科の領域になることも多く、費用もかなり高額になることもあります。
19)Q:歯石は、定期的に病院で取ってもらった方がいいの?
A:可能であれば、一度歯石を取ってもらった後は自宅でのデンタルケアを頑張って、歯石をつけないようにすることが理想です。それが難しいようであれば、病院での定期的なスケーリングが必要になるでしょう。
20)Q:人間の子どものように、犬や猫もフッ素塗布をしてもらえるの?
A:エナメル質の結晶構造を丈夫にし、強い歯をつくるという目的で、スケーリング→研磨の後にフッ素塗布をする病院もあるようです。
【3章】自宅でできるケアとは?
犬や猫のストレスを軽減するためにも、できるだけ病院に行かずに自宅でケアしたいもの。上手くできる方法を教えてもらいました!
Sladic/Shutterstock.com
21)Q:何歳くらいから、家でどんなケアをすればいいの?
A:まずは、口の周りを嫌がらず触らせてもらうよう徐々に慣らしていきます。これはどんなに小さいうちから始めてもらっても構いません。その後は様子をみながら、歯ブラシを使用しての歯みがきができるまで少しずつステップアップしていきましょう。
22)Q:人間の歯ブラシを使っても大丈夫?
A:人間用ではなく、歯ブラシも歯磨き粉も動物専用の物を使用しましょう。
23)Q:自宅のケアで、歯石がたまらない効果が本当にあるの?
A:もちろんです。歯垢は3日ほどで歯石に変わってしまい、歯石になってしまうともう自宅で取ることはできませんが、歯垢はデンタルケアで除去することができます。
24)Q:自宅で歯石除去はできる?
A:歯垢除去はできますが残念ながら歯石は取れません。歯石になってしまったら、病院で取ってもらいましょう。
25)Q:口を触らせてくれない子はどうしたらいい?
A:少しずつ慣らしていくことが重要です。焦らず無理をせず、ご褒美を与えながら一歩ずつ階段を上っていくように行いましょう。
26)Q:どうしても歯みがきが苦手なのですが、病院でやってもらうことはできるの?
A:歯みがきをしてくれる病院やトリミングサロンもあります。ただ、口を触られるのが嫌いな子に病院で無理やり歯ブラシをすると、ますます嫌いになってしまうので、できるだけ自宅で慣らすことは重要です。
27)Q:簡単にできる、歯垢の取り方やグッズはあるの?
A:歯垢を取り除くためにデンタルロープで遊ばせたり、歯みがきが好きになるように嗜好性の高いデンタルペーストやデンタルジェルを使用したりするといいでしょう。また、歯にスプレーするタイプの物もあります。
28)Q:歯みがきは1日何回、いつ頃するのが効果的?
A:1日1~2回です。歯みがきのタイミングはいつでも構いません。毎日のデンタルケアで歯周病を防げるので、歯みがきはぜひ毎日してあげましょう。
29)Q:楽しく歯みがきができる方法はありますか?
A:人のように虫歯予防で食後に歯みがきをしなくてはいけないわけではないので、食事を与えながら、おやつを与えながら楽しく歯みがきをしてもらっても大丈夫です。
30)Q:特に、念入りに磨いた方がいい場所は?
A:上あごの最も大きい歯や奥歯の上の付近に食べかすがたまりやすいです。奥の方の歯は磨きにくいのですが歯垢がつきやすいので、その辺りは丁寧にブラッシングしてあげるといいでしょう。
Ermolaev Alexander/Shutterstock.com
人間同様、犬や猫も丈夫な歯をキープしてあげれば長生きにもつながります。飼い主の愛情で大切なペットの歯を守ってあげましょう。