写真展<世界ネコ歩き2>開催記念!動物写真家・岩合光昭さんに聞く〜猫が好きなわけ、猫を撮るということ
猫を撮りつづけて40年。地球上のあらゆる動物たちと向き合いながらも、「猫はライフワーク」「自分は猫の味方」と語る。動物写真家・岩合光昭さんはそんな人です。この5月、日本橋三越本店で開催された写真展<世界ネコ歩き2>について、PECOが独占インタビュー。BS放送の番組でおなじみの、あのフレーズもいただきました!
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写真展<岩合光昭の世界ネコ歩き2>って?
全国各地の猫ファンに支持される、NHK BS プレミアムの人気番組<岩合光昭の世界ネコ歩き>の写真展です。
撮影地は、世界60 ヶ所以上。展示された作品数は170点あまり。まるで旅をするように、世界の猫たちと出会える写真展です。それぞれ個性も表情も異なる猫と、彼らの暮らしをとらえた作品の数々は、岩合さんだから撮れた奇跡の記録でもありました。
岩合さんが、猫を撮りつづける理由って?
PECO (以下――)
――今回の写真展は猫が主役なのですが、被写体として、猫の魅力ってどんなところにあるのでしょうか。
岩合光昭さん(以下略)
「僕は、昔から家畜と野生動物の両方に興味をもってきました。猫は家畜でありながら、ひもで結ばれず野生を残しているところがいいんです。顔を見ても目が非常に大きい動物なので、愛らしさがあります」
――他の動物との決定的な違いはどこですか。
「地面にしばられない、視点の自由さでしょうか。ときどき高い塀の上から猫に見下ろされるようなときがあると、『よろしくお願いいたします』って、頭が自然と下がる思いがします。それから、体のかたちや、どこかへ飛んで昇ったり降りたりする動き。美しい身のこなしには、いつもハッとさせられるし、惚れ込んでいます」
――猫たちと出会うたびに、発見があるわけですね。
「写真でも映像でも収めていきたいのは、自分が“おっ!”と心が動いた場面なんですね。そして、写真展へお越しになるみなさん、テレビでご覧になるみなさんにも、“おっ!”というものを感じていただけたらうれしい。そのような作品をつくっていきたいと常々思っています」
――そもそも、作品として猫を撮りはじめたのは、どれくらい前からですか。
「もう40年以上経ちますね。かれこれ、50ヶ国くらいの猫を撮っています。猫が好きであることって、世界中のどこでも共通言語のようなものなんです。たとえば世界遺産で、普通は撮影の許可が得られない場所でも、『猫だけしか撮りませんから』と交渉すると、『うちの猫を撮るならいいよ』と言っていただけることがあります」
――国境を越えて、猫がご縁を結んでくれるわけですね。
「まさにそうです。世界中で猫がいない場所って、たぶんないと思います。人間が暮らしてるところには、必ず猫がいる。同じくらい、世界中に猫が好きな方もいる。そういった意味で、猫のおかげで国境を越えて縁を頂いていると思います」
今回、展示した作品のうちで、おすすめの猫は?
――今回の写真展には170点を超える作品があります。中には、カメラをこわがる猫もいたのでは?
「人間が一人ひとり違うように、猫も一匹一匹、個体によって違いますね。考え方も、おそらく動き方も。撮影のときは、しっかり個性を見ながら、関係をつくっていくようにしています。人間以上に注意深く。猫の前で動く時は、ゆっくり歩くとか。大きな声は出さず、やさしく声をかけるとか。なでるときも、飼い主の方がいらっしゃる時には、そちらの許可をもらってからとか。取材ロケを重ねていくにしたがって、いろいろなやり方ができあがっています」
――写真展の看板猫といえる、ブラジル・コパカバーナビーチの“シキンニョ”はずいぶん大胆ですね。
「素晴らしい猫でした。写真的にもアピールしてくれて。ビーチでくつろぐ姿勢をとってくれたのも、シキンニョらしいですし。別に無理にそんなポーズをお願いしたわけではなく、毎日飼い主さんと海に来ていつも通りやっていることを撮っただけなので。いつもたくさんの人と触れあっているので、カメラなんてまったく気にしていなかったですし」
写真展ではシキンニョと写真が撮れるフォトブースが大人気でした!
――他にも素晴らしい猫が、この写真展にはたくさんいます。
「スペインのマドリードで会った黒猫の“プレタ”は、まさに書店の看板猫で本当に人気者です。かわいいお店のディスプレイの1点のような、愛くるしさをもった猫でした。写真は体をあらわす、ではないですが、本当に写真通りの猫なのです。ぜひ、『私はどの猫が好き』とか、そういう視点でご覧いただいたらうれしいなと思いますね」
――確かに来場されたみなさんは、年代を問わずニコニコ楽しんでいて。和やかな空気の写真展でした。
「写真を見て、『えっ、猫ってこんなことするの?』と、身近な存在である猫を再発見される方もいるかと。そうした体験が、『猫そのものについてもう一度考えてみよう』という気持ちを呼び起こすかもしれません。だんだん世の中全体として、猫がいかに人間にとって大切な存在であるか、再認識されるといいなと思っています」
――岩合さんは、ずっと前から「自分は猫の味方である」と公言していますよね。
「<世界ネコ歩き>というテレビ番組も、猫の味方を増やしたくてつくっているようなものです。少しずつでも、猫の味方にみなさんを引き込んでいきたいという、強い思いがありますね」
猫をうまく撮るために、大切なことは?
――PECO読者の方々に、猫の写真をいい感じで撮るコツを教えていただけますか。
「自然な様子をとらえることです。たとえば、朝。日差しがカーテンの隙間から入ってきたとしますね。その光が、部屋でぐーっと背伸びしている猫の輪郭を照らしている。そんな瞬間こそが、僕にとってのシャッターチャンスに結びつくんです。こっち向いて小首かしげてるのが最高にかわいい、とは限らないと思うんですよ」
――猫の動き、流れの中から、いい瞬間を切り取っていくわけですね。
「そのためには、猫の動きに合わせることが大事です。自分のリズム、写真を撮るリズムを、猫のリズムに合わせるんですね。『こういう写真を撮ろう』と最初に決めるのではなく、猫をよく観察して、これ!という場面を見つけていただく。その方が、きっとかわいい写真になると思いますね」
――PECO読者の方々に、メッセージをいただけますでしょうか。
「PECOをご覧のみなさんには、猫の味方であっていただきたいと思います。<世界ネコ歩き>の番組も、ぜひご覧いただければ。みなさんの期待に応えられるような映像を撮るため、スタッフ一同頑張っています。よろしくお願いいたします」
――最後に、もう一言お願いします!
みなさん、ほんとにいい子だね。(笑)