【獣医師監修】マルチーズとの旅行術と生活管理のコツ
真っ白なコート(被毛)が美しく、つぶらな瞳が愛らしいマルチーズ。 日本ではかつて人気ナンバーワンの座を10年以上も守り続けた、小型犬です。 そんなマルチーズのコートの管理や、一緒に旅行をする際のポイントなどを頭に入れておきましょう。
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マルチーズの歴史
マルチーズは紀元前1500年頃からの歴史を持つ犬種と伝えられていますが、その原産国については謎が多いのも事実。
もっとも有力なのは、現在のレバノン近辺に都市国家を築いていたフェニキア人が、彼らの海洋貿易の中継地点であった地中海のマルタ島(現在のマルタ共和国)にアジアから持ち込んだというもの。
そのため、マルタ島を由来とするマルチーズという犬種名が付けられました。
国際畜犬連盟(FCI)による原産地は、中央地中海沿岸地域とされています。
アジアをルーツとするのであれば、マルチーズより少し大きなサイズで中国原産のシー・ズーと遠い血縁関係にあるかもしれません。
風貌も、シー・ズーと少し似ています。けれども、マルチーズの毛色の種類はホワイトのみです。
船員によってヨーロッパ各国へ渡ったマルチーズは、15世紀にはフランス貴族に愛され、19世紀になってからはイギリス貴族をも虜にしました。
ビクトリア女王も、マルチーズの愛好家のひとりだったとか。
日本では、1968年から1984年まで、ジャパンケネルクラブ(JKC)の登録頭数ナンバー1をキープするほどの人気犬種でした。
(ちなみに2018年の登録頭数のトップはトイ・プードルで、2位がチワワ)。
マルチーズの性格と特徴
マルチーズは、船員のペットとして紀元前から世界中を旅してきた犬種です。
そのため、順応性が高く、性格は朗らか。
成犬になっても3kgほどの体重である点や、シングルコートなので抜け毛が少ない点などを考えると、日本でも、列車を利用しての旅行もしやすい犬種だと言えます。
ただし、子犬のうちに箱入りにして育ててしまうと、社会化不足によって少しの刺激でも吠えやすくなってしまうので注意しましょう。
子犬期から、社会勉強のためにも、ほかの人や犬に慣れるためにも、さらにはストレス発散のためにも、毎日の散歩は欠かせません。
マルチーズの手入れの秘訣
マルチーズの飼い方でむずかしい点があるとすれば、純白の美しい被毛をキープすることかもしれません。
マルチーズは、カットしなければ地面に裾を引きずるほど長く被毛が伸びます。
ドッグショーで絹のような被毛を揺らしながら歩くマルチーズのように、フルコートにしてみるのも楽しみのひとつ。
その場合は、トリマーに相談をしながら適切なコートの管理をしてください。
日常生活で手入れしやすいのは、ドッグショーに出る犬のようにフルレングスにしないペットカットです。
ただし、もとは直毛のコートですが、ブラッシングをしながらドライヤーをかけないと、くせっ毛のように毛足が跳ねてしまうことも。
自宅シャンプー後のドライングのコツを、トリマーさんに聞くなどして愛らしいルックスをキープしたいものです。
なお、アンダーコートがないマルチーズにサマーカットを施すと、かえって体が熱を受けやすく熱中症などのリスクが高まるのでご注意を。
皮膚が見えるほど短くヘアカットをするのではなく、ある程度被毛が皮膚を覆うほどの長さを保持しましょう。
マルチーズと旅行をする際は、被毛のもつれを解消するためのブラシ、静電気と切れ毛を防げるブラッシングスプレー、被毛を汚さないための洋服、足先やしっぽが汚れてしまった場合などの部分洗いに便利な、洗い流さないですむシャンプーなどを持参すると便利です。
マルチーズの平均寿命は?
マルチーズは小型犬なので、寿命は長め。トリミングが必須の犬種だと、トリミングサロンでトリマーさんが病気の早期発見をしてくれることもあるでしょう。
ケアや病気の適切な治療と管理が行き届くという事情も手伝い、12~15歳が平均寿命と言われています。
マルチーズのかかりやすい病気
心臓病
マルチーズは、僧帽弁閉鎖不全症や動脈管開存症などの心臓病に、他犬種に比べてかかりやすいことが知られています。
子犬のうちから、動物病院を訪れた際は定期的に、聴診をしてもらうなど心がけておきましょう。
流涙症
通称は、涙やけ。そもそも真っ白なコートを持つマルチーズは、涙やけが目立ちやすいので気になるかもしれません。
多少の涙やけは、体質にマッチする良質なフードを食べると軽減したり、こまめに涙や目ヤニを、涙やけにも効果があるケア用スプレーなどをコットンに付けて拭いてあげると改善することもあります。
先天的に鼻涙管が狭いケースや閉塞しているケース、あるいは眼瞼内反症が原因で、流涙症が引き起こされるパターンもあります。
その場合は、目薬による内科治療や外科治療を行うこともあるので、涙やけが気になるようであれば獣医師に相談をしてください。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
小型犬全般に発症しやすい、膝蓋骨脱臼。
マルチーズでも、子犬期から発症するケースがめずらしくありません。
遺伝的な要因があると言われていて、簡単に表現すると膝のお皿がはずれる疾患です。
滑る床での生活や、高いところから飛び降りることが多いと発症リスクが高くなります。
生活環境に注意をしつつ、ワクチン接種などのついでに、獣医師に膝の状態をチェックしてもらうようにしてください。
温存療法もありますが、外科手術をするのであれば若齢のうちが理想です。
外耳炎
垂れ耳の犬種には、外耳炎が発症しやすくなります。
飼い主さんはブラッシングの際に、耳の状態を見るように心がけて、耳垢が増えていたり、臭いがするようであれば早めに獣医師に相談を。
外耳炎の治療開始が遅れると、耳の内部まで炎症が広がり治りにくくなるので、早期に治療できるように努めましょう。
マルチーズの価格相場は?
マルチーズの価格は20~40万円ほどです。
遺伝病などに関する管理がしっかりしていて、神経質でなく本来のマルチーズらしい明朗な性格の親犬を用いて繁殖を行っている、優良なブリーダーのもとで生まれた子犬を探して迎えましょう。
まとめ
真っ白なコートが印象的で、世界中で人気のマルチーズ。
サイズ的にも、性格的にも、マルチーズの祖先が続けてきたのと同じように、現在でも旅のパートナードッグにぴったり。
散歩やストレス発散の遊びを欠かさず、ハッピーなマルチーズを育てながら、一緒に楽しい生活を過ごしてみてくださいね。
監修者情報
箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科
ライタープロフィール
臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。
コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally