「あの動物病院に行くのが楽しい!」そう評判なのが宮崎市内の篠原動物病院。扉を開けた瞬間、目の前には白衣を着た可愛らしい猫のお医者さんがいるからだ。
彼の名は「ドクターゴーくん」(3歳♂)。ゴーくんは病院の敷地内にある院長の実家の庭で鳴いていたところを保護された。まだミルクを必要とする生後2、3週。そのまま病院の猫として暮らすようになり、篠原理絵副院長たちが可愛がると、ゴーくんは飼い主さんや来院する動物とも親しくなっていった。
病院で繁殖させたインコたち。ゴーくんに温められ世話された子たちは、譲渡先で愛され上手になっている
(提供:篠原動物病院)
ゴーくんは不思議な猫で、動物たちと触れ合うことを至上の喜びとしているようだった。患者が来ると大急ぎで待合室や診察室に向かうゴーくんを見て、いつの頃からか飼い主さんたちは「ニャンコ先生」と呼ぶようになった。
旅行に行く直前に乳飲み子猫を保護し途方に暮れていた飼い主さん。大丈夫、ゴーくんに任せて! 病院では外猫保護も支援している
(提供:篠原動物病院)
理絵先生は最初、ゴーくんが診察室に入ることを、良くないのではないかと心配した。しかし好意的に受け止める飼い主さんが多く、じわじわファンが増え、ゴーくんの後押しをするようになった。
フェレットのモカちゃんはゴーくんにとって馴染みの患者さん。病院の保護猫トトちゃんとともに出迎える
(写真:鈴木美紀)
ある日、ぬいぐるみの白衣を着せてみると、気に入ったゴーくん、白衣姿で受付に立った。その姿がかっこいいと、飼い主さんたちは絶賛。褒められてゴーくん、すっかり病院スタッフとしての使命を自覚したらしい。ケガや病気で病院に連れて来られる動物たちは緊張している。診察を前におびえていると、ゴーくんは優しく頰を寄せるなどして出迎え、恐怖心をほどいていく。そのまま診察にも立ち会うのだ。
1年前、膵臓の腫瘍を摘出したフェレットのモカちゃん。定期的な血糖値チェックのための採血を、傍らで見守る
(写真:鈴木美紀)
「ゴーくんがそばにいると、動物たちが落ち着くんです」と理絵先生。ゴーくんはまるで予備診察をするかのように動物の匂いを丁寧に嗅いだり、傍に寄り添ったりして助手の役目を果たし、見事「ドクターゴーくん」に昇格した。
種を問わずどんな動物にもホスピタリティを発揮するゴーくん。犬とも仲良し
(提供:篠原動物病院)
もちろん重篤な患者や猫に慣れていない動物が来院したときは別室で待機するが、ほとんどの動物はゴーくんと仲良し。「ゴーくんは犬に吠えられたり猫に威嚇されたりしても、決して反撃せず無邪気に近づいていくんです。自分とは違うものを排除してしまいがちな私たち人間は、ゴーくんに『寛容さ』を教えられています」。
トカラヤギとご挨拶。ゴーくんは人馴れしていない動物にも忍耐強く寄り添い、心を開かせる優秀なスタッフ
(提供:篠原動物病院)
上腕骨の骨折を手術で整復した、リハビリ中のアオバズクに興味津々。篠原動物病院は傷病野生鳥獣保護の協力病院に指定されている
(提供:篠原動物病院)
もしかしたら野良猫のまま命を落としていたかもしれないゴーくんの活躍。いつまでも元気で、動物の味方としてお手伝いしてね!
篠原動物病院
宮崎県宮崎市清水3-54
TEL0985-26-1136
診療時間/月〜土曜9:30〜12:00、16:30〜19:00、日・祝日9:30〜12:00
休診日/木曜
文 鈴木美紀