【獣医師監修】猫の耳疥癬(耳ダニ感染症) 考えられる原因や症状、治療法と予防法
猫の耳にダニが寄生し、発症してしまう耳疥癬(みみかいせん)。耳ダニという名前でも知られています。猫の耳の病気の中で、もっとも痒い病気のひとつといわれている耳疥癬を予防する方法はないのでしょうか?
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
耳疥癬の症状
耳ダニに感染された猫は、痒みを何とかしたいがために、頭を振ったり、耳をさかんに引っ掻いたりするようになります。猫が引っ掻きすぎるせいで出血したり、耳が傷ついたしたりしてしまうこともあります。症状が進むと炎症が激しくなり、悪臭を伴った膿を出すようになります。また、耳の中に黒っぽい耳垢がたまります。黒い耳垢の正体は、ダニのフンや死骸、卵などで、ダニの数が増えれば増えるほど、耳垢は多くなっていきます。
このまま放っておくと、耳だけではなく全身に痒みが広がったり、目の周りで炎症が起こり始めることもあります。慢性的に外耳炎にかかっているような状態が続き、中耳、内耳へと炎症が広がると、最悪の場合、聴力を失う可能性まであるのです。
耳疥癬の原因
耳疥癬は、耳ヒゼンダニと呼ばれる0.3㎜程度のダニが、猫の耳の外耳道に寄生することで発症します。一般的なダニと違い、皮膚を食いちぎってカラダの内部に侵入することはありませんが、耳の中の耳垢やカサブタ、リンパ液、血液などを栄養として摂取し、耳の中に住み着いてしまいます。耳の中でダニが繁殖することで、猫は痒みを感じるようになり、吸血した時の傷口に、ダニの排せつ物などが入り込むことで外耳炎を発症すると、痒みはさらに激しいものになります。
原因① 環境から感染する
猫の耳垢を手入れしなかったり、飼育環境が不衛生だったりする場合、耳ダニにとって住みやすい環境が整ってしまいます。発生した耳ダニは生命力がとても強いので、一度住み着いてしまうとみるみる繁殖し、感染を拡大させてしまいます。
原因② 接触して感染する
もう一つの原因は接触感染です。耳疥癬を発症するほとんどのケースが、接触感染が原因といわれています。完全室内飼育でない場合、猫が家の外で耳ダニをもらってくることで、感染します。また、仔猫の場合は親猫から耳ダニをもらってしまうことが多く、多頭飼育の場合は感染が一気に広がってしまうこともあるようです。
耳疥癬の治療方法
猫が耳疥癬にかかってしまった場合、早急に動物病院へ連れていきましょう。耳の中を洗浄し、抗ダニ剤やダニ駆除剤などを投与することで治療をしていきます。状態がひどい時は、炎症を抑えるために抗生物質や抗炎症剤を投与しますが、場合によっては外科的手術が必要になることもあります。
耳疥癬の予防方法
愛猫を耳疥癬から守るためには、完全に室内のみで飼育することが大切です。そして、室内環境にも気をつけたいところです。人が使う布団や毛布、じゅうたんなども念入りに掃除をして清潔に保ち、ダニが増えやすい環境を作らないようにしましょう。また、家の外に出る猫の場合、耳ダニをもらってきやすいので、ダニの駆除薬を定期的に使って予防しましょう。
さらに、毎日のブラッシングや定期的な耳掃除が、耳ダニの予防や早期発見につながります。耳疥癬は、早期発見できれば、猫の耳を傷つけることなく完治できる病気なので、愛猫のためにも日頃の手入れを怠らないようにしましょう。
普通のダニとは違って耳にだけ寄生し発症する耳疥癬は、感染力が非常に強いので、じつに厄介な病気です。症状が進んでしまうと、治療も大変になってしまうので、日頃から様子をよく観察しましょう。少しでも耳疥癬が疑われるようなしぐさが見られたら、早急に対処してください。飼い主として、正しい知識を持って、愛猫の健康のための努力を怠らないようにしましょう。
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