【獣医師監修】猫も狂犬病になる。 猫が狂犬病にかかるとどうなる?
狂犬病といえば、犬の病気というイメージがありませんか? うちで飼っているのは猫だから関係ない、と思っているあなた。狂犬病は猫にも人間にも感染する可能性がある病気です。今回は、猫の狂犬病についてみていきましょう。
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
猫の狂犬病とは?
狂犬病とは、狂犬病ウイルス(ラブドウイルス科リッサウイルス属)に感染することによって発症する感染症です。狂犬病は、人にも感染する人獣共通感染症の一種で、発症するとほぼ100%の確率で死に至る、非常に危険な病気です。
狂犬病という名前により、犬の病気というイメージを持たれがちですが、すべての哺乳動物が感染する可能性があります。ちなみに、日本では、1957年(昭和32年)を最後に狂犬病の発症例はありませんが、最後の一例は猫だったという記録が残っています。世界的にみると、おもな感染源とされている動物は以下の通りです。
●アジア・アフリカ:犬、猫
●アメリカ・ヨーロッパ:犬、猫、キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ
●中南米:犬、猫、マングース、コウモリ
これをみても、決して犬だけの病気ではないことがわかります。
狂犬病ウイルスに感染したこれらの動物に噛まれることで、人間も狂犬病に感染します。世界では毎年5~6万人が狂犬病に感染し、その多くが命を落としています。2006年には、フィリピンで現地の犬に噛まれた2名の日本人が、帰国後に狂犬病を発症して死亡しています。
猫の狂犬病の症状
猫が狂犬病にかかった場合、どうなるのでしょうか。狂犬病は、感染後に2~3週間ほどの潜伏期間があります。これまでの報告では、最長の潜伏期間は51日間だったそうです。通常、発症の3~4日前からウイルスを排泄し始めるといわれています。発症することで現れる症状は以下の通りです。
●顔つき・性格の変化
●瞳孔が開く
●神経過敏
●全身麻痺
●呼吸不全
●痙攣
●発熱
猫の狂犬病の場合、狂躁型と沈鬱型の2つのタイプに分かれます。ほとんどのケースは狂躁型といわれており、その中でも前駆期、狂騒期、麻痺期の3タイプに分かれます。
前駆期
症状の初期段階といわれ、発症して1日程度の状態を指します。普段甘えてこない猫がやたらとすり寄ってくる、懐いていた猫が急に噛みついたりするなど、性格の変化が現れます。また、鬱のような症状がみられることもあり、暗い場所に隠れたり、ずっと歩き回ったりするなどの異常行動がみられるようになります。その他、食欲不振などの症状がみられます。
狂騒期
発症2~4日目に狂騒期に入ります。狂騒期には、異常なほどに攻撃的になり、見えるものすべてに噛みつくなどの行動がみられます。さらに、絶え間なく動き回る、鳴き続ける、まったく眠らなくなるなどの異常行動が目立つようになります。猫の場合、口から大量によだれを流すのも特徴の一つといえます。その他にも、発熱や、瞳孔が開く、軽度の麻痺などの症状がみられるようになります。
麻痺期
発症から3~4日以降経過すると、嚥下機能が麻痺するため、よだれを垂れ流した状態になり、ご飯を食べることができなくなります。その後は、麻痺が全身にまで進行し、呼吸不全や全身の衰弱により死に至ります。多くの場合、狂犬病の発症から約4~5日の余命といわれています。
猫の狂犬病の原因
猫が、ウイルスに感染している動物に噛まれることで感染します。狂犬病ウイルスは感染した動物の唾液に含まれ、呼吸器の粘膜を経由して感染するため、蚊に刺されることによる感染や、くしゃみや咳などの飛沫が原因で感染することはないといわれています。
猫の狂犬病の治療
上述の通り、狂犬病を発症した場合の死亡率はほぼ100%、有効な治療法は確立されていないというのが現状です。そのため、狂犬病の治療としては、全身の痛みや痙攣を抑えるための対症療法が中心となります。また、更なる感染を防ぐために安楽死させるケースもあります。
感染している動物に噛まれてから、発症するまでの潜伏期間中にワクチンを数回接種することで、発症を免れるケースもあるようですが、はっきりしたことはわかっていません。
狂犬病を予防するためには、ワクチンを接種する以外に方法はありません。ただし、日本においては、昭和32年を最後に狂犬病の発症例はないので、基本的に家の中で暮らす猫は予防接種を受ける必要がないといわれています。
ただし、猫と共に海外へ行く場合は、ワクチン接種をしなければなりません。猫は検疫対象動物となっているので、動物検疫所で検疫を行う必要があります。また、海外では、野良猫や野生動物に近づけないようにしてください。もし、感染が疑われる動物に噛まれた場合は、すぐに傷口を石鹸などで洗浄し、現地の病院を受診してください。さらに、帰国後は検疫所に申し出る必要がありますので注意しましょう。
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