【獣医師監修】犬が人間の喧嘩に割り込んで仲裁する理由とは?

人間同士が口論をしていると、犬が仲裁に入るかのように、間に割り込んできた経験はありませんか。これは、犬特有のコミュニケーションである、カーミングシグナルという行動です。今回は、犬が人間の喧嘩に割り込む時の心理状態を解説します。

  • サムネイル: PECO編集部
  • 更新日:

監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

人間の喧嘩に割り込んでくる犬の気持ち

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

Sundays Photography/Shutterstock.com

人間同士が口論している時に犬が割り込んでくるのは、犬の本能的な行動です。これは、犬同士が喧嘩をしている時にもよくみられる光景で、仲裁しようと間に入ってくるのです。

犬は、いわゆる「空気を読む」のが得意な動物です。喧嘩をしている時の不穏な空気を察知し、自分自身の不安な気持ちを抑えるために、「喧嘩はやめましょう」と割り込んできます。自分より大きな体格の人間や、大型犬の喧嘩の仲裁に小型犬が割り込んでくることもあります。

この、犬が喧嘩の仲裁に入るような行動は、カーミングシグナルの一種です。このカーミングシグナルとは、犬特有のコミュニケーションで、犬が野生時代に群れで暮らしていた時から備わっていたものです。

群れの中では、リーダーを中心として円滑に暮らしていく必要があったため、ほかの犬に自分の意思を伝えるためのボディランゲージが発達しました。

ペットとして飼われている犬の場合、カーミングシグナルはあまり親しくない犬に対して使われることが多いようです。たとえば、散歩中に初めて出会った犬に対し、「私は争うつもりはありませんよ」という気持ちを伝えるために背中を向けるなどの行動があります。自ら争う気がないことを示すことで、犬同士の無用な争いを避けているのです。

この発展した形として、人間同士の口論に割り込んで仲裁するような行動を取るのも、カーミングシグナルの一種だと考えられています。対象が犬であろうと、人間であろうと、犬はその行動で「無用な争いはやめなさい」と伝えてくれているのです。

カーミングシグナルの種類

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

Yuttana Jaowattana/Shutterstock.com

このようにカーミングシグナルは、もともとは犬同士のコミュニケーション手段として発達しましたが、人間に対しても使われることがあるのです。カーミングシグナルには様々な種類があり、その数は現在わかっているだけでも30近くに上ります。以下は、代表的なカーミングシグナルの一例です。

自分の鼻を舐める

飼い主やほかの犬が怒っていると感じた時、犬は相手を落ち着かせようとして自分の鼻を舐めます。犬が活動している時はよく鼻が濡れていますが、あまりにも頻繁に鼻を舐める時は、何かしらのストレスを感じていると考えられるでしょう。

たとえば頻繁に鼻を舐めていた犬が、飼い主が怒るのをやめた途端鼻を舐めなくなったとしたら、犬は飼い主の怒りに対しストレスを感じていたと思われます。このように、犬にストレスを感じている様子がみられた時は、その原因を探りだし、改善してあげる必要があります。

前足を低くして、お尻を高く持ち上げる姿勢を取る

これは、相手に対して構ってほしいという気持ちを伝えるためのカーミングシグナルです。この体勢で尻尾を振っていたら、ほぼ間違いありません。犬が一緒にいる相手とより友好的に過ごしたい時にみせる行動なので、たくさん遊んであげましょう。

あくびをする

鼻を舐めるカーミングシグナル同様、相手が怒っている時によくみられます。飼い主が怒った時にあくびをする犬は少なくありませんが、これは反省していないのではなく、「わかりましたので落ち着いてください」という意味です。

カーミングシグナルを理解すると、犬が飼い主に何を伝えようとしているのか、察することができるようになります。日頃から愛犬の行動をよく観察し、カーミングシグナルに応えてあげることで、より深い信頼関係を築きましょう。

内容について報告する