フェレットがかかりやすい4つの病気について

好奇心旺盛で、とても人懐こいフェレット。フレンドリーな性格のかわいい小動物ですが、実は、病気になりやすいペットでもあります。長く元気で過ごしてもらうために、かかりやすい病気と治療法を覚えておきましょう。今回は、4つの病気について、解説していきます。

  • サムネイル: 羊田ユウジ
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歯の病気

知らない人も多いかもしれませんが、フェレットは肉食目イタチ科に属し、上下に鋭い歯を持つ肉食動物です。長い犬歯は肉食動物の特徴ですが、この歯はネズミや、リス、ヤマアラシなどを代表するげっ歯類のように伸び続けることはありません。人間と同様、乳歯が抜けると永久歯に変わるため、生えている歯はとても大切なものです。症状によっては抜歯せざるを得ない状況となりますので、症状がひどくなる前に治療を受けましょう。
フェレットがかかりやすい主な歯の病気には歯肉炎と歯髄(しずい)炎があります。

歯肉炎

歯垢の中の細菌によって歯肉が炎症を起こす病気です。歯の周囲に歯垢がたまり、やがて歯石となります。歯石がつくことで歯の表面がでこぼこになり、更に歯垢がつきやすくなります。その結果、歯が黄色や茶色になり、歯肉の腫れや出血がみられることもあります。進行すると、口を気にするような動きを見せたり、ヨダレを出したりすることもあります。3歳以降のフェレットによく見られ、放置すると歯が抜けたり、細菌が体内を巡って全身に広がり心臓や肺、腎臓の疾患を引き起こしたりします。
主な治療法は、症状が進行している場合は動物病院で麻酔処置の後に歯石除去を行います。炎症を抑えるために抗生物質を投与することもあります。治療をしても、その後のケアを怠っていると再発するため日々、適切なケアを続けていくことが大切です。
歯にくっつきやすい半生タイプの餌などは、歯肉炎の原因になりやすい食べ物です。固い物を食べる事で歯から歯垢をこそげ落とす効果が期待できるドライフードを与えたり、定期的に歯磨きをすることが予防に効果的です。歯石取りに効果がある噛むおもちゃも販売されています。

歯髄(しずい)炎

歯の中心部にある、神経や血管が通っている部分を歯髄といいます。歯が何かの拍子で折れたり欠けたときに、内部の歯髄が露出してそこに雑菌が入り、炎症を起こします。その後、雑菌が増殖すると折れた歯の残っている部分が変色し、顎や目の下が腫れるなどの変化があらわれます。さらに、歯髄が露出すると強い痛みを感じるため食欲不振を引き起こし、衰弱していきます。進行すると全身に病原菌が広がり、心臓や腎臓にも悪影響を与える可能性もあるため早期治療が大切です。
主な治療法は、動物病院で抗生剤を投与し、炎症を抑える処置を施します。進行が歯根部に及んでいる場合、状態によっては抜歯を行うこともあります。
予防としては、歯が折れる、欠ける原因を減らすことです。特に犬歯は鋭く長いため簡単に折れやすく、歯髄炎の発症が多いといわれています。例えば、ケージの金網などの固いものをかじった時や高いところから落下した際に顔面を打ち、歯が折れる場合もあるため、十分な広さのあるケージにかじってもいいおもちゃを入れおくなど固いものを噛ませないようにしましょう。また、高いところに登らないよう環境を整え、注意することが必要です。歯が折れる、欠けるだけではなく固すぎるおもちゃをかじってばかりいると歯がすり減り、歯髄が露出することもあります。健康診断などで定期的に歯のチェックをしてもらいましょう。

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目の病気

つぶらな瞳を持つフェレットですが、視力はあまり発達していません。フェレットがかかりやすい代表的な目の病気として、白内障が挙げられます。

白内障

白内障には、主に加齢と共に発生する「老年性白内障」と、遺伝的な要因から1歳くらいまでに発症する「若年性白内障」の2つがあります。目のレンズの役割をする水晶体が白く濁り、悪化すると失明に至る病気です。
老化や遺伝的な原因のほかに、活性酸素による水晶体のたんぱく質の劣化、網膜を構成する細胞に必要なビタミン類の欠乏、外傷による目の炎症などの要因も考えられます。
加齢による「老年性白内障」は老化現象のひとつなので、予防することは難しいです。しかし、動物病院で点眼薬などの内科治療で進行を遅らせることが可能といわれていますので、定期的に健康診断を受ける習慣をつけ早期発見・早期治療に努めましょう。
「若年性白内障」を防ぐには、遺伝と思われる白内障をもつフェレットを繁殖しないことです。

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呼吸器系の病気

人間の風邪やインフルエンザの一部は、フェレットに感染します。風邪やインフルエンザが流行する季節は、飼い主自身が体調管理に気を付け、フェレットにウィルスを感染させないように気をつけましょう。

肺炎

肺炎を起こすウィルスには、ジステンパーウィルスやインフルエンザウィルスがあります。ウィルス以外にも細菌や真菌などの感染が、肺炎の原因となります。発熱、呼吸困難、食欲不振、鼻汁、目やになど、症状は人間とほぼ同じ。動物病院で肺炎の原因となる病原菌を特定し、抗生剤などで治療します。
なお、ウィルスのうち犬ジステンパーウィルスによる感染症は、致死率ほぼ100%の怖い病気です。フェレット用のワクチンはなく、犬用の混合ワクチンで予防するしかありませんが、フェレット専用ではないため、下痢や嘔吐(おうと)の副作用が見られることがあります。ワクチンの接種は、かかりつけの獣医師とよく相談をして決めましょう。

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内臓の病気

フェレットがかかりやすい病気として特に気を付けたいのが、副腎腫瘍、インスリノーマ、リンパ腫の3つです。これらは「フェレット三大疾患」ともいわれています。

副腎腫瘍

副腎は米粒ほどの大きさしかない小さな臓器で、左右2つの腎臓の頭側部にあります。副腎からは、体の機能を調節する数種類のホルモンが分泌されており、この副腎が腫瘍化すると体のどこかに脱毛が見られ、メスは生殖器の腫れ、オスは前立腺肥大による排尿障害などの症状が現れます。
原因ははっきりとわかっていませんが、日本で販売されているフェレットは多くがアメリカのファームから去勢・避妊手術を済ませてから輸入しており、この手術が性成熟、体全体の成長も終わっていない生後数週間の時期で行われていることが副腎腫瘍の原因のひとつではないかといわれています。
予防として十分に成長してから去勢・避妊手術を行うことが考えられますが、去勢・避妊手術を済ませていない、いわゆる「ノーマルフェレット」は入手しにくく、個体の価格とは別に手術の費用もかかり飼い主の負担も大きいため、現実的ではない面があります。
高齢になったフェレットがかかりやすく、動物病院では病状に応じて手術か内科治療のいずれかを選択します。

インスリノーマ

すい臓に発生する悪性腫瘍です。腫瘍化したすい臓がインスリンを多く分泌し、血糖値を下げてしまいます。4歳以降の中高齢期になったフェレットに多く見られ、ぼんやり宙を眺めてよだれを垂らす、泡を吹く、ふらつくなどの症状が現れます。
投薬による内科治療で低血糖を改善することで普段通りの生活が維持できるものの、飼い主は長期にわたって低血糖にならないよう高たんぱくな食事でサポートする必要があります。外科手術によって腫瘍を除去する選択肢もありますので、かかりつけの獣医師に判断を仰ぎましょう。

リンパ腫

リンパ腫は白血球の1つであるリンパ球ががん化する、血液のがんです。「リンパ肉腫」「リンパ性白血病」などの呼び名もあります。原因は遺伝的要因やウィルス、環境などがあげられるものの、はっきりとはわかっていません。
元気がなく食欲がない、体重が減るなどの症状がみられます。また、がん化したリンパ球は全身に広がって増殖する可能性があり、リンパ種ができる部位によってさまざまな症状が現れます。胸腔にできれば肺を圧迫して呼吸困難になったり、腹腔内にできれば消化管を圧迫して食欲不振になります。リンパ節にできれば大きく腫れ、シコリが現れますがリンパ節は肩や脇の下などの皮下のほか、内臓や脊髄など体のあらゆる部位に及びます。体やお腹の中にシコリを感じたら、動物病院で健康診断を受けましょう。リンパ腫の治療は、抗がん剤治療となります。副作用もあるため、かかりつけの獣医師とよく相談しましょう。

今回ご紹介した病気のほかに、耳ダニやフィラリアなどの寄生虫、脾臓の肥大、腸閉塞、日射病や熱中症などもフェレットがかかりやすい病気です。フェレットは体も動きもしなやかで、ケガが比較的少ない動物ですが、病気は多く見られます。体の異変を飼い主が早期に気付けば、治癒する確率も高くなります。病気になってしまったら、飼い主ができる処置はあまりなく、獣医師に頼るしかありません。歯や目をいつも観察して食欲不振や、いつもより元気がない様子などを感じたら早めに動物病院で診察を受けましょう。

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