ハリネズミがかかりやすい病気とその予防法。3大疾患について

ちょこちょこと歩き回る愛らしいハリネズミ。ハリネズミは一般的に飼育難度の高い動物といわれますが、とくに温度と湿度の差が大きな日本の環境下では、体調を崩しやすくなります。もしもの時も慌てずに、適切に対処しましょう。

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ハリネズミの3大疾患

日本で飼育できるハリネズミはヨツユビハリネズミと呼ばれ、もともとアフリカのサバンナ気候の広い範囲に生息しています。
本来は丈夫な生き物ですが、体内の保温効率が悪いという特徴があり、四季のある日本の気候は苦手です。適切な飼育環境であれば健康を保てますが、大きな温度変化や高い湿度、ストレス、栄養バランスの乱れた食事などが原因で、体調を崩すことがあります。

ハリネズミがとくにかかりやすい病気としては、「皮膚病」「腫瘍」「歯周病」の3つが挙げられます。

皮膚病

ハリネズミは皮膚のトラブルが多く、中でもよくみられる症状に「ダニ症」(疥癬)があります。皮膚にヒゼンダニという小さなダニが寄生することで発症し、針の付け根にかさぶたのようなフケがみられ、重度の感染になると針が抜け落ちてしまうこともあります。ほかのハリネズミとの接触により感染するため、ハリネズミを家に迎える時に、動物病院で検診を受けておくと安心です。なお、ヒゼンダニの死骸は、人間のアレルギーの原因になることもあるので注意しましょう。
ダニ症(疥癬)の治療としては、動物病院で駆虫剤を滴下します。さらに、ダニの再発生を予防するため、ケージ内は熱湯消毒します。

真菌と呼ばれるカビによる皮膚病「真菌症」にも要注意。感染した場合には、フケが発生して針が抜け落ちます。悪化すると耳の周辺まで感染が広がり、皮膚の肥厚や乾燥もみられます。また、ダニ症による免疫機能低下に伴い、真菌症を併発する場合もあります。治療法としては、動物病院で抗真菌剤を投与します。

腫瘍

腫瘍には良性と悪性があり、悪性腫瘍はいわゆる「ガン」です。3歳以上の高齢で発症しやすく、患部にしこりや腫れがみられ、体重減少、食欲不振、元気喪失、下痢、呼吸困難、腹水、患部出血などの症状が現れます。治療としては、手術による腫瘍の摘出、抗がん剤投与を行います。症状が悪化すると死に至る場合もあるので、早期発見、早期治療が重要です。

歯周病

とくに高齢のハリネズミに起こりやすく、歯茎が腫れる、歯が抜ける、口臭がきつくなるなどの症状がみられます。歯の汚れに細菌が繁殖することで発症し、細菌が全身を巡って肝臓や腎臓の障害を引き起こすこともあります。治療は動物病院で麻酔をかけた後、歯石の除去や抗生剤の投与を行います。日頃からドライフードや昆虫など繊維質の多い食事与えたり、かじって遊べるおもちゃを与え、歯垢をとって予防しましょう。

その他、ハリネズミに見られる病気

プルプル症候群(WHS)

神経系の病気で、ふらつき症候群とも呼びます。後ろ足の震えから始まり、徐々に四肢が動かなくなります。症状が進むと食事や排便・排尿が困難になり、ほとんどの場合死に至ります。遺伝性なのかウィルス性なのか、あるいは環境に起因するのか、現在のところ原因は明らかにされておらず、治療法も確立していない難病です。発症が認められた場合に飼い主ができることは、ストレスのない穏やかな環境を維持し、最期の日まで見守ってあげることくらいです。

アレルギー

ハリネズミを飼育する際、ケージの金網に足が挟まってしまわないよう床材を敷きますが、
その床材の材質が杉や松などの針葉樹の場合、アレルギー反応を示す場合があります。同じ針葉樹でもヒノキはアレルギーが出にくい、さらに広葉樹はアレルギーになりにくいともいわれますが、ハリネズミごとに個体差があります。症状としては、針の生えていないお腹や脇の下、顔などが赤くただれたようになります。アレルギーは食物が原因の場合もありますが、症状がみられた場合、まずは腹部が直に接する床材を疑いましょう。原因物質を突き止めて取り除けば、症状は改善します。

夏眠、冬眠

ハリネズミの適切な飼育温度は24~29℃が目安です。20℃を下回ると冬眠、30℃を上回ると夏眠に入ってしまいます。野生下のヨツユビハリネズミは、夏眠するものの冬眠はしません。また、夏眠する時は栄養をカラダに蓄えて準備をします。飼育下のハリネズミが温度変化に反応して、準備もなく冬眠や夏眠に入ってしまうと、そのまま餓死してしまう可能性があります。また、飼育温度が30℃を超えた場合、夏眠しなくても熱中症の危険があるので注意しましょう。

万が一夏眠してしまった時は、ハリネズミを涼しい場所に移し、冷たい濡れタオルをビニールに入れて、ハリネズミのカラダを包みます。徐々に体温を下げたのちに、動物病院へ連れていきましょう。冬眠の場合はペットヒーターなどで少しずつカラダを温め、ハチミツ水をスポイトかシリンジで飲ませます。元気が出てきたら、動物病院で診察を受けましょう。

ハリネズミの病気は、ほかにも消化器系の病気、呼吸器系の病気、目や鼻の病気、寄生虫や細菌の感染など、様々なものがあります。基本的に飼い主ができることは少なく、動物病院での診察・治療が最善の対処法となります。ただし、ハリネズミはペットしての歴史がまだ浅く、ハリネズミを診察できる病院は限られているのが実情です。ハリネズミを飼育しようと決めたら、まずハリネズミを診察可能な病院が近くにあるかどうかを確認しましょう。

そして、なにより重要なことは、病気にさせないために、適正な飼育温度を保ち、ハリネズミが快適に過ごせるよう、飼育環境を整えることです。大切なのは栄養バランスのいい食事とストレスのない環境、適度に運動させることを心掛けましょう。

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