【獣医師監修】猫の甲状腺機能亢進症 考えられる原因や症状、治療法と予防法

猫の甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)は、甲状腺ホルモンの分泌量が増加してしまう病気で、高齢の猫がよく発症するといわれています。ここでは、甲状腺機能亢進症の症状、原因、治療法、予防法についてみていきましょう。

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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

甲状腺機能亢進症の症状

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甲状腺機能亢進症とは

猫の甲状腺機能亢進症は、喉元にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが、過剰に分泌されることにより発症します。甲状腺ホルモンにはトリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)という2種類があります。甲状腺ホルモンは、全身の細胞に働きかけて代謝をあげるという役割を持っています。これらのホルモンの分泌量が増えることで、カラダに様々な異常をきたしてしまう病気が「甲状腺機能亢進症」です。

上述の通り、甲状腺ホルモンは代謝を促進する機能を持つため、甲状腺機能亢進症にかかった猫のカラダは常に活発化した状態になり、心臓や消化器官などの働きに乱れが生じます。猫が発症するホルモン関連の病気の中でも発症率が高い病気で、日本では10歳以上の高齢の猫が発症しやすい傾向にあります。

甲状腺機能亢進症の症状

猫が甲状腺機能亢進症を発症した場合、以下のような症状が現れます。

●体重減少
●食欲亢進
●多量に水を飲み、尿量も増える
●嘔吐や下痢
●攻撃性が増したり、落ち着きがなくなったりする
●毛づやの悪化

甲状腺機能亢進症にかかった猫のうち、約90%の猫には体重減少の症状がみられます。じっとしていてもエネルギーを消費するのでお腹が空きますが、食べても太ることはできません。最終的には食べる元気もなくなり、食欲も低下していきます。また、心肥大や呼吸困難がみられることもあります。

甲状腺機能亢進症の原因

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甲状腺機能亢進症は、甲状腺の過形成、甲状腺の腫瘍、下垂体の腫瘍(甲状腺に甲状腺ホルモンを分泌するように働きかける場所)、甲状腺ホルモンの過剰投与によって起こると考えられます。猫の甲状腺機能亢進症では、甲状腺の過形成が原因となるケースが多くみられますが、猫の甲状腺が過形成を起こす原因についてはまだ充分に解明されていません。ここでは、参考までにいくつかの説を紹介します。

遺伝・地理

地域によって発生率が異なるため、遺伝や地理的な要因が疑われます。

フード

猫の甲状腺機能亢進症は、1980年代以降に急増しました。これは、ちょうどペットフードが普及した時期と重なるため、フードに含まれる何らかの物質が関与しているという説もあります。

化学物質

住宅を建築する際に使用される化学物質などが、甲状腺機能亢進症の発症に関与するという説もあります。

甲状腺機能亢進症の治療方法

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猫の甲状腺機能亢進症の治療には、おもに以下のようなものがあります。また、欧米においては「放射線ヨード(ヨウ素)治療」が行われていますが、日本の現行法では、獣医療の現場で行うことが禁じられています。

投薬治療

甲状腺ホルモンが過剰に生産されるのを防ぐために、抗甲状腺薬の投薬が行われます。内服を辞めると、再び甲状腺ホルモンがたくさん分泌されてしまうので、生涯にわたる投薬が必要になります。

外科手術

甲状腺を手術によって切除します。甲状腺は喉元に2つあり、片方だけを切除する場合と、両方を切除する場合があります。両方を切除した場合、今度は甲状腺ホルモンが足りなくなってしまうので、生涯にわたって甲状腺ホルモンの内服が必要になることがあります。

療法食

甲状腺機能亢進症の猫のための療法食があります。療法食を与えることで症状の改善がみられるようであれば、内服薬も必要なくなる場合があるようですが、この食事以外の食べ物は一切口にすることができなくなります。

慢性腎臓病を併発していたら…

甲状腺機能亢進症では、慢性腎臓病を併発することが少なくありません。しかし、甲状腺機能亢進症により血圧が上がり、腎臓への血流量が増えることで、実際には慢性腎臓病を発症しているにもかかわらず、腎臓病の症状が現れないこともあります。その場合、甲状腺機能亢進症の治療をし、血圧が正常に戻ることで腎臓病の症状が現れてしまいます。このようなケースでは、甲状腺機能亢進症をどのように治療していくのが一番よいのか、かかりつけの獣医師とよく相談して決めてください。

甲状腺機能亢進症の予防方法

甲状腺機能亢進症は、発症する原因がまだ充分に解明されていないので、それに対する予防策もないというのが現状です。日頃から愛猫の様子をよくチェックして、カラダに異変がないかを確認するとともに、定期健診を受けさせることで、早期発見・早期治療を心がけることが大切です。

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