【獣医師監修】犬に起こる急性肝炎で考えられる原因や症状、治療法と予防法

犬も人間同様、肝臓のトラブルから急性肝炎を発症する場合があります。急性肝炎の初期症状は嘔吐や下痢などですが、症状が悪化すると命に関わる怖い病気です。今回は、犬の急性肝炎の原因や症状などについて解説していきます。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

犬の急性肝炎の原因

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犬の急性肝炎はその名の通り、突然肝臓に炎症が起こる病気です。肝臓は、ホルモンやビタミン・消化酵素の生成やアンモニアなどの解毒、脂質の合成・分解など、様々な機能をつかさどるとても重要な臓器です。

急性肝炎を発症すると、この肝臓が正常に機能しなくなるため、最悪の場合は命を落とすおそれもあります。愛犬が急性肝炎になった時は、飼い主がなるべく早くそのサインに気づいてあげることが重要です。

この犬の急性肝炎には、「肉芽腫性肝炎(にくがしゅせいかんえん)」と「化膿性肝炎(かのうせいかんえん)」の2種類があります。

肉芽腫性肝炎

肉芽腫性肝炎は、細菌や寄生虫などの病原体に免疫系が反応し、肝臓に肉芽腫ができることで発症します。肉芽腫性肝炎を発症させるおそれがあるのは、ミコバクテリア・ブルセラなどの細菌、ヒストプラズマ・ブラストミセス・ピシウムなどの真菌、フィラリア・肝吸虫(かんきゅうちゅう)などの寄生虫です。

化膿性肝炎

化膿性肝炎は、直接的な外傷やその他の疾患などにより、肝臓が化膿してしまうことで発症します。具体的には、注射や外からの刺し傷などによる外傷、胆管炎・クッシング症候群・糖尿病などの基礎疾患、免疫抑制剤・グルココルチコイドなどの薬剤によるものが考えられます。

犬の急性肝炎の症状

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では、犬が急性肝炎を発症した時のサインとしては、どのようなものがあるのでしょうか。

まず、いつもは活発に動いている犬の元気がなくなり、嘔吐・下痢といった症状がみられます。そして、食欲が落ち、歯茎や耳の中、白目が黄色くなる黄疸症状も出てきます。また、たくさん水を飲み、おしっこの量が増える多飲多尿が見られたり、肝臓から出血がある場合は、血の混じった黒色の便や吐血したりすることもあります。

急性肝炎の症状が悪化すると、痙攣や腹水などが起こり、口臭がアンモニアのニオイになります。そして、数週間以内に肝性脳症(かんせいのうしょう)といわれる意識障害・昏睡状態に陥り、そのまま死に至る場合もあります。

犬の急性肝炎の治療方法

犬が急性肝炎になってしまった場合は、まず症状の進行を抑える処置を取ります。犬の肝臓に負担がかからないように安静を保ち、動物病院で処方される療養食を指示通りに与えるとともに、肝炎の原因に応じた投薬治療を行います。また、肝性脳症の予防としてアンモニアを抑制する治療も行い、症状が悪化しないようにします。

犬の急性肝炎の予防方法

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犬の急性肝炎は、人間の目には見えない病原体により引き起こされる場合もあるので、完璧に予防するのは非常に難しいのが現実です。

飼い主ができることとしては、散歩の時にできる限り汚れた草むらや土の上を歩かせないようにするなどして、犬を病原体から遠ざける配慮をしましょう。また、肝臓にダメージを与えるような外傷には、くれぐれも気をつけてください。

犬の急性肝炎は、突然発症する可能性のある病気です。しかも、最悪の場合は命に関わるおそれもあるので、上記の症状がみられた時はすぐに動物病院に連れていきましょう。

また、日頃から愛犬の体調をチェックする習慣を持つことで、愛犬の些細な変化にいち早く気づくことができます。愛犬の健康を守るためにも、日頃のコミュニケーションを大切にしてください。

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