杉本彩さんが語る、“ペットビジネスの闇”とは? 【直筆サイン本のプレゼントも!】
個性派女優として知られる杉本彩さん。そんな彼女は一方で動物愛護活動に熱心に取り組んでいることでも知られ、今年3月には「それでも命を買いますか?」(ワニブックス)を上梓。日本のペット業界が抱える問題点と、どうやって改善していくかを杉本さんに伺いました。
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一匹の子猫の保護から始まった、動物愛護活動
PECO (以下――)
――「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva」を設立され、動物を取り巻く様々な問題に取り組まれている杉本さんですが、こうした動物愛護活動を始められたきっかけについて教えていただけますか?
杉本彩さん (以下略)
「23歳の頃、仕事中に撮影所で病気の子猫を保護したんです。その子を看病して、里親さんを探し譲渡しました。当時、私は2匹のネコと暮らしていたので、これ以上は大変だろうと思ったんです。きちんと面倒を見られる限界ってありますからね。でも情が移ってしまって、譲渡するとき、あんなにも悲しくて号泣するとは想定外でした。かと言って、感情に流されて、自分の手元に置いておくのは違うだろう、と。そうしてしまったら、その子と同じような子に遭遇したときに、手を差し伸べるのを躊躇してしまうのではないかと思ったんです。それが(動物愛護の)第一歩でした」
「20代後半から30代前半の頃は、本当に地域密着型の、身近なところにいる動物を保護していました。そのうちに、近所の野良猫に不妊去勢手術を施して地域で面倒を見る活動を始めたり、その手術費用を捻出するためにチャリティ・バザーも始めました。そうした活動の中で、ご近所の方に動物問題を知っていただく啓発活動の第一歩が始まり、同時に、動物問題で困っているご近所の方から私に相談が来るようにもなりました。依頼を受けて子猫を救出しに行ったり、チャリティ・バザーもたくさんの方が手伝ってくださって少しずつ大規模になっていきました。また自分がやっていたラジオで動物問題について発信したら、リスナーからたくさんの相談が寄せられたこともありました」
「今から約10年ぐらい前かな。広島の犬の動物園の経営破綻による“日本最大の動物虐待事件”が報道で大きく取り上げられました。私はテレビで見てビックリして、どういう状況なのか知りたくて広島を訪ねました。それから日本全体にある動物を取り巻く問題について知ることになり、全国に向けて本格的な啓発活動をするようになったわけです」
“大量消費、過剰供給”が引き起こすペットビジネスの問題点
――今回、杉本さんの著書「それでも命を買いますか? ペットビジネスの闇を支えるのは誰だ」を読ませていただいて、大変衝撃を受けました。ペットビジネスの裏には実に様々な問題点があることが分かりましたが、一番の問題点はペットの“大量消費、過剰供給”にあるのでしょうか?
「はい。それが一番根っこにある問題だと思います。ペットを売る側が安易な消費を促しているが故に、無責任な飼育放棄につながっていることは確かですね。動物に対する知識が全くない状態でペットを迎えてしまい、手に負えない状況になって一番安易な選択・・・飼育放棄や遺棄、保健所に持ち込む、ということが実際に起こっています。それと同時に、無計画な大量生産にはロスが起こってきます。売れ残りも生じますし、不良在庫と言われるような障害を持った子も出てきます。命を扱っているにも関わらず、『返品も受け付けます』と堂々とやっているビジネスって、異常だと思いますよ」
「流通の問題も大きいですね。大量生産、大量流通を支えているブリーダー→ペットオークション→ペットショップという流通過程の中で、病気や衰弱で死ぬだけではなく、余剰となった動物たちはかつて保健所で殺処分されていましたし、今も様々な形で処分されています。これって明らかに動物愛護法違反、犯罪ですよ。日本は先進国なのに、こういうことがまかり通っていること自体が本当に恐ろしいと思います」
――殺処分される犬や猫は、年間10万頭以上(平成26年度時点)。しかも“窒息死”という方法がとられているそうですね。
「そうです。“殺処分”というと安楽死だと思っている人もいますが、実際には、二酸化炭素ガスで窒息死させるケースがほとんどなんです。窒息死って、死に方の中で一番過酷なんですよ。動物は長時間もがき苦しみ、恐怖におののいて死んでいく、残酷極まりない殺し方です。コストも人の手間もかからないという理由だけで、この方法が選択されているんです。もし人間の都合で動物たちの命を奪うのなら、せめて苦しみと恐怖を与えずに一頭一頭麻酔注射で見送るというのが、モラルある社会として最低限やらなきゃいけないことだと思います。いずれにしても、殺処分の業務は見直す時期にきていますし、廃止すべき行政業務だと思っています」
ペット業界に生まれた“引取り屋”という闇
――さらには、流通過程の中で余剰となったペットを有料で引き取る“引取り屋”というビジネスも生まれています。これについては、どうお感じですか?
「法律が改正されて、保健所は業者からの動物の引取りを拒否できるようになりましたが、そこで受け皿を失って困っている業者を狙った引取り屋というビジネスが生まれました。ペットの終生飼養というものが義務化され、法律としてしっかり明記されているにも関わらず、こういうビジネスを誕生させてしまうとは、本当に緩い法律だと思います。今後は、たとえば『6回を超えて出産させてはならない』という繁殖制限や『一頭につきこれだけの飼育スペースを設けないといけない』という飼養施設規制などについて具体的な数値規制が必要です。
このことは、昨年10月に環境省が規制の導入について乗り出すと報じられました。ですがこの2つは2012年の動物愛護法改正の際、『動物愛護管理のあり方検討小委員会』があげた中で持ち越された課題です。1日も早くこれらの規制の実現を望みます」
「引き取り屋に連れていかれた動物たちって、ロクに世話もされず、生き地獄みたいな状態で放置されているんです。それ自体が“動物虐待”であり、動物愛護法に触れているんですよ。でも、なかなか刑事事件として扱われないし、いくら告発してもちゃんとした捜査が行われないのが現状です。動物愛護法という形はあるけど、まだまだ形だけのもので、しっかりと機能しているとは言えないんですね」
――日本ではペットショップでの生体展示販売が多いですが、これがなくなれば、状況は好転するでしょうか?
「大分、変わると思いますよ。日本のように、どこに行ってもペットショップがあって、生体展示販売されている国は珍しいのですが、“幼齢期の可愛いときに売ってしまえ”という風潮が最近ますます加速し、悪化しているように思います。動物ってあっという間に大きくなってしまうので、売る側が『小さいまま売りたいから』と与える食事を制限して、消費者の手元に渡ったときには栄養失調を起こしていた、なんてことも現実にあるんです。やはり過剰供給を根絶しないと、こういう悲劇はなくならないと思います」
「犬や猫と一緒に暮らしたいという人は、ペットショップでは買わずに、施設などから保護犬、保護猫を迎え入れる形がベストだと思います。(施設などで)これだけたくさん家族を待っているペットたちがいるのに、(売る側が)わざわざ過剰供給しているというのは大きな矛盾ですよね」
高齢者と動物のマッチングが社会を救う
――動物愛護活動の一つの可能性として、杉本さんの著書に書かれていた「一人暮らしの高齢者とペットのマッチング」というのは、とても良いアイデアだと思いました。
「犬や猫をちゃんと見送った飼い主さんの中には、ご自分が高齢だからという理由で、次のペットを迎えるのを諦めている方が多いんです。動物を愛しているが故に諦めているんですよ。私はペットとの暮らしがどれほど豊かで、どれほど素晴らしいものか知っていますから、高齢だからと諦めるのは気の毒な気がするんです。
そこで民間の施設や行政に協力していただいて、社会全体でサポート体制を構築できれば、と思うんです。いわゆる『長期間お預かりいただく』というスタンスで、高齢者の方に合ったペットの里親さんになっていただく。そして、その方に万が一のことがあったら、行政が責任をもって残されたペットの飼い主さんを探す、という仕組みが構築できればいいなと。そうすれば、高齢者の方も安心してペットをお迎えすることができると思います」
――今後、動物愛護に関してどんな活動をしたいとお考えですか?
「国や自治体に対していろんな政策を提言しつつ、動物福祉の向上に尽力していく、というのが私たちの役割としてあります。ただ国や地方自治体に訴えるだけでは、問題は解決していきません。消費者がもっと賢くなって、ペットビジネスの背景にどんな問題があるのかということをしっかり知って、動物たちにやさしい選択をしてもらいたいと思っています。
そのために、皆さんに真実を知っていただく啓発活動は重要になります。地道な活動なので遠回りに見えるけど、実はこれが一番近道なんじゃないかと感じています。今、中心に取り組んでいるのが身近なペットの問題ですけど、動物問題は、実験動物、畜産動物の福祉、毛皮の問題などたくさんあるので、そういった問題にも積極的に取り組んでいきたいと思います」
――今、ユーザーの皆さんに対して一番訴えたいことは?
「『ペットショップで衝動買いをしない』ということでしょうね。おそらく真実を知れば、多くの人たちがペットショップを利用しなくなると思います。私はそういう“人としてのモラル”というものを信じていますので。そして需要がなくなれば、買う人がいなくなれば、ビジネスとして成立しなくなります。動物を売っている業者自体が社会から白い目で見られたり、社会全体が『今どき、ペットをお金で買っているの? 時代遅れ』という雰囲気になれば、どんどん需要がなくなっていくと思います。最終的には生体展示販売を根絶するのが、私たちの目指すところです」
最後に
「これはいつも皆さんにお伝えしたいと思うことですけど・・・保護犬、保護猫ってめちゃめちゃ可愛いんですよ! 比較的お利口な子が多いし、仮に問題行動があったとしても専門家にしっかりトレーニングされて(問題行動を)解消してから譲渡されますから。『大人になってしまうと、人に懐かない』と思っている方も多いけど、そんなことはありません。保護犬、保護猫は一緒に暮らしやすいんです。私が一番最初に迎えた保護犬の小梅は、11歳で迎えて、今17歳です。落ち着いていて、今も元気で、とってもお世話しやすいです」
「子犬、子猫の時期に、その子の性格をちゃんと把握するのは難しいけど、大人になったワンちゃん、猫ちゃんは性格を把握しやすいんです。自分との相性や、自分の生活環境にその子が向いているかどうかも分かりやすいので、マッチングもしっかりとできます。これは大きなメリットですよね。先住のワンちゃん、猫ちゃんがいる場合は、一度トライアルで家に迎えて、馴染んでくれるかどうか試すこともできますよ。ぜひ、保護犬、保護猫に目を向けてみてほしいですね」
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Tomo Dora
2016年08月24日 10:15
太田純一
2016年08月23日 23:35
梅田 えり子
2016年08月23日 16:47