アナタのネコは もっともっと長生きできる! ネコの死因第一位 「慢性腎臓病」を防ぐ方法
「慢性腎臓病」は、15歳以上の3匹に1匹が発症するといわれている、高齢のネコがもっともかかりやすい病気です。
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「慢性腎臓病」は、厳密にいうと病名ではなく「腎臓に慢性的な病気の症状をもっている状態」と言う意味です。
恐ろしいのは、飼い主が気づかないうちに少しずつ進行して、症状が現れた時には重症になってしまっているということが少なくないこと。今回は「慢性腎臓病」の基礎知識と、その予防法をご紹介します。
監修:くわはら動物病院 院長 桑原 岳先生
ネコはなぜ「腎臓病」になりやすいの?
中東のアナトリアあたりに生息していたリビアヤマネコが祖先と言われているネコ。雨が降らない砂漠環境を生き抜くために、水の摂取量が少なくても生きられるカラダがつくられました。たとえば、腎臓のつくりもその特徴のひとつです。
腎臓は「ネフロン」と呼ばれるパイプ構造の集まりでできています。尿がネフロンを通り抜ける間に、毒素が濃縮され「おしっこ」が出来上がります。このネフロン、腎臓左右合わせて、人間には約200万個、犬は約83万個ありますが、ネコには約38万個しかありません。よって、ネコの腎臓では、一つひとつのネフロンにかかる負担が増えやすいというわけです。
また、ネコは肉食動物なので、多くのタンパク質を必要としますが、タンパク質は代謝される際、多くの老廃物を作り出すので、この点でも腎臓に負担をかけてしまうのです。
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「慢性腎不全」を招きやすい要因
①日常的に塩分の多い食事を与えている
とくに人間が食べるものをネコにも与えている場合は要注意です
②膀胱結石や尿路結石、腎結石を起こしたことがある
腎結石により、腎機能がダメージをうけている可能性があります
③ウイルスに感染している
「猫エイズ」や「猫白血病ウイルス」などを持っていると腎臓機能にも影響を及ぼします
④先天的な腎機能不全形成など遺伝性や免疫低下
ネコの種類によっては先天的に「慢性腎不全」になりやすい傾向があるようです
「慢性腎臓病」になりやすいネコは?
「慢性腎臓病」は、中齢~高齢期(7歳~)に腎機能の低下が引き金となって発症することが多いようです。ただし、若いネコであっても以下のような先天的な奇形や病気により「慢性腎臓病」になることがあるので注意してください。
◆腎異形成
腎臓が発育不全で小さいまま止まってしまった状態で、この場合は2歳までに腎不全が発症する確率が高いといわれています。
<腎異形成になりやすいネコ種>
ペルシャ、ノルウェージャンフォレストキャット
◆アミロイドーシス
腎臓にアミロイドというタンパクが沈着してしまう病気。遺伝的要因が大きく、現時点で完治できる治療法はなく、余命宣言されてしまうことも多く見受けられます。
<アミロイドーシスになりやすいネコ種>
アビシニアン、シャム、ソマリ、ボンレックス、オリエンタルショートヘアーなど
◆多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)
人間では難病指定の遺伝病。腎臓に複数の水袋(嚢胞・のうほう)ができてしまい、腎機能が低下する病気です。だいたい3歳~10歳でその症状が見つかります。
<多発性嚢胞腎になりやすいネコ種>
ペルシャ系、アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールドなど
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「慢性腎臓病」の具体的な症状
初期段階では、一見、健康そうに見えるので気がつかないことが多く、症状が出る頃には、腎臓がかなりダメージを受けている状態です。
<初期に見られる症状>
□よく水を飲むようになる
□おしっこの量や回数が増える
□食欲がなくなる
<症状が進んでくると見える症状>
□体重が減った
□嘔吐する
□おしっこのニオイが減った
□毛並みが悪くなった
□口臭がひどくなった
□歯ぐきが白くなってきた
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予防策① 定期的に健診!
一度かかってしまったら治らない「慢性腎臓病」ですが、早期の発見と治療で一緒にいる時間を長くすることはできます。若いネコでも年に1回、10歳以上であれば年2回は健診したいところ。「慢性腎臓病」の予兆は血液と尿に現れます。血液検査や尿検査で腎機能マーカーを調べることで、腎機能低下の度合いを知ることができます。家で尿を採取して持っていくときは採取してから30分以内に病院へ持っていきましょう。
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予防策② 水を飲む習慣を
「ネコは砂漠の動物だから」という思い込みは禁物。ネコの体重1キロあたり50~70mlを目安に、自発的に飲めるよう工夫しましょう。
<ネコに水分を摂取させるための工夫例>
①食事にウェットフードを加える(水分の多いものほど良い)
②室温から人肌程度のぬるま湯を与えてみる
③様々な形・材質(陶器・ステンレス)の器に水を入れ、複数の場所に置く
④食事場所やトイレの近くには水の器を置かない
⑤流水を好むネコもいるので、ウォーターファウンテンを使ったり、蛇口から少しだけ水を流しっぱなしにしておく
⑥器に氷を浮かべると、興味を持って飲むネコもいる
予防策③ 消化しやすいフードに
ネコは肉食動物で腸が短いため、穀物を消化しにくい体質です。フードの原材料表示を確認して、穀類の含有率が多い場合(先頭のほうに表示されていたら多く含んでいるということです)は見直したほうがいいかもしれません。
予防策④ タンパク質は適量で
肉食動物なのでタンパク質は最も重要な栄養素です。でも摂りすぎると、分解されずに残ったタンパク質が老廃物となり、腎臓に負担をかけてしまうことも。とはいっても、低タンパクでは健康そのものの維持もできないので、適度なタンパク質(30%以下)のフードを選ぶようにしましょう。
予防策⑤ 「リン」の摂取量を抑える
人間同様「ミネラル」はネコにとっても健康維持に不可欠です。中でも「ミネラル」に含まれている「リン」は、強い歯や骨を作り、神経の機能を維持する働きを持っています。成長期は、しっかりとした骨格を作る上で「リン」はとても大切なのですが、加齢により腎臓機能が低下してくると、「リン」を上手く排泄できず、不要物として身体にたまってしまうのです。
ですから、高齢のネコちゃんにはリンの少ないフードをお勧めします。もちろん、療養食を好んで食べるネコちゃんは、療養食で良いですが、いつもの食事に加えることで「リン」の摂取が制限できるサプリメントもあるので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
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