【シニア犬オーナーさん座談会】 噂の「中医学治療」どうでした?
ペットたちの身体のバランスを整え、自然治癒力を高め、健康長寿をサポートする。そんな予防医学の決定版「ペット中医学」について紐解くこのシリーズも、いよいよ第4回目を迎えました。今回は、実際に中医学治療を受けて効果を実感した、3名の飼い主さんたちのリアルな体験談をご紹介します。シニア犬オーナーなら今すぐ参考にしたい生の声が満載です!
中医学は、生理学、病理学、薬学などの理論と臨床経験に基づく中国の伝統医学です。季節の変化など外部とのバランスと、体の内部のバランスの両方を理論的に診断し、体質・病気の原因・発病のプロセスを分析、それに基づき、中薬の処方(日本でいう漢方)、薬膳、鍼灸、推拿、気功などによる治療を行います。
座談会メンバー紹介1
■Oさん×ミニチュアダックスフンド ナナ(15歳/オス)
《病歴&病状》胸腰部椎間板ヘルニア(グレード5)、高齢による心臓・腎臓機能低下
座談会メンバー紹介2
■Mさん×日本テリア ネフティス(13歳/メス)
《病歴&病状》馬尾症候群、心不全、腸炎(写真右、左はイシス)
座談会メンバー紹介3
■Iさん×ミニチュアダックスフンド ビビ(12歳/メス)
《病歴&病状》胸腰部椎間板ヘルニア(グレード4)、肝機能低下
Q/まずは、これまでの病歴や対処法、さらに飼ううえで気を付けていたことから教えていただけますか?
■Oさん(ナナ)/うちのナナはミニチュアダックスフンドで、腰のヘルニアを発症しやすい犬種です。そのため、太って腰の負担にならないよう食事制限をしていたのですが、6年ほど前からヘルニアになってしまって…。初期のグレード2から現在のグレード5まで、数度にわたって発症しています。
■Mさん(ネフティス)/これまで与えるペットフードの添加物や体調管理に気をつけると同時に、年齢に合わせた適度な運動を心掛けてきました。年に1度は定期健診で血液検査もしていたのですが、5年前から蛋白漏出性腸炎(※1)になり、3年前からは僧房弁閉鎖不全症(※2)に。同時期に悪性の乳腺腫のため乳腺を半分摘出しました。さらに2年前からは馬尾症候群の腰仙椎狭窄症(※3)を患ってます。
※注1/腸管から多量の蛋白が漏れ出てしまうことで、血液中のタンパク質が少なくなって低蛋白血症となる病気。
※注2/心臓の僧帽弁がうまく閉じず、本来は一方通行の血液の流れが逆流してしまう状態を引き起こすもの。小型犬に多い。
※注3/馬尾症候群とは、腰から尾にかけて背骨の中にある馬尾神経や周囲の血管が圧迫されることが原因で様々な症状を起こす病態の総称。正式名称は変性性腰仙部狭窄症。
■Iさん(ビビ)/うちのビビは肝臓が弱いためか、夜の寝付きが悪かったり、バタバタ興奮した後にぐったりして、病院で点滴を受けるという繰り返しでした。そのうえ今年の春には、腰のヘルニアにかかり全然動けなくなって。突然のことでとっても驚きました。
Q中医学に出会ったきっかけは何でしょうか? 中医学診療を受けることを決意した理由を教えてください。
■Oさん(ナナ)/私が中医学に出会ったきっかけは、約6年前にナナが軽度のヘルニアを発症したときのこと。インターネットで「ヘルニア 治療」と検索してみると、鍼治療を経て元気に歩いているミニチュアダックスフンドの動画が見つかったんです。そこで大阪府内で中医学診療をしてくれる病院を検索し、「はやし動物病院」にたどり着き来院。その時の診断はグレード2(※4)程度で、すぐに治りました。
でもその1年後に再発して、下半身がまったく動かなくなってしまって。突然だったので地元の病院に駆け込んで、ステロイド注射とエラスポールという治療のために、2週間ほど毎日通院しました。けれどもなかなか完治せず、「はやし動物病院」へ再来院。グレード3(※5)という診断でしたが、5~6回ほど通院すると元気に復活して、また元の生活に戻ることができたんです。
※注4・5/椎間板ヘルニアには、神経学的症状によるグレード判断検査が用いられる。ちなみにグレード2・3ともに後肢不全麻痺で、2は自力歩行可でよろけながらも歩くことができる。3は、自力歩行不可。後肢は動くが、脱力のため歩くことはできない。
■Iさん(ビビ)/うちもミニチュアダックスフンドなんですが、やっぱりヘルニアで急に動けなくなってしまって…。でも手術には抵抗があったので、いつも通っている動物病院に相談したら、中医学診療をしている病院を紹介してもらえたんですよ。
■Mさん(ネフティス)/2015年の11月下旬に馬尾症候群による痛みが出だして、かかりつけの病院では「レーザー照射による保存的治療以外は難しい」と言われてしまったので、12月上旬に外科治療を行っている病院を受診しました。
CT・MRI検査により診断が確定しましたが、背骨のズレを手術で矯正するという手術の成功確率に疑問を抱いたことと、心臓疾患もあるので手術はしたくなかったんです。かといって、腸炎の治療でステロイドを服用していたので、痛みをコントロールすることもできず…そんな八方塞がりの状況から、鍼治療に関心を持ちました。調べたところ自宅の近くに中医学診療の動物病院があったので、藁にもすがる思いで受診してみることを決心しました。
Q初診の際の先生からの説明や治療、処方など、中医学診療病院での診察の様子を教えてください。また、再診及びその後の経過などはいかがでしたか。
■Iさん(ビビ)/初診の際、先の病院で撮影したヘルニア患部のCTを見ながら、「鍼で治る子もたくさんいますよ」と、先生が優しく説明してくださいました。「自分の力で治るよう、免疫力を高めるのが中医学」というお話しも、心に残りましたね。中医学診療後は、まず2種類を処方していただきました。その後、週に2回ほど通っていたところ少しずつ反応があり、5回目くらいから歩き出すようになったんです。処方も、ビビの症状に合わせて徐々に切り替えていきました。
■Mさん(ネフティス)/診察室ではまず、先生が後ろ足の麻痺具合を調べ、後ろ足の付け根で脈を取り、舌を診ていらっしゃいました。それから持ち込んだCT・MRI画像を見ながら、病態を一緒に確かめました。「腰仙椎の狭窄により神経が圧迫されて痛みが生じている」との診断後、気・血・水の流れに働きかけ、全身の循環を良くしていくという、中医学的な視点による説明を受けました。鍼による痛みのコントロールが治療のメインということでした。
診療中にじっくり話をすることができたので、先生や中医学の考え方などはとても理解しやすかったです。対話を重ねていくうちに信頼が生まれ、一緒に病気に立ち向かえる気持ちになれましたね。
■Oさん(ナナ)/ナナの場合も、ヘルニアによる鍼治療について丁寧なご説明をいただきました。手術という治療法だけでなく、飼い主の意志を尊重した治療法をご提案くださる点が、何よりも嬉しく信頼できました。先生おすすめの漢方も処方していただき、それが相性が良かったのか、回復がとても早かったです。
Q中医学の診療や処方に関して、いままで通っていた西洋医学の病院との違いを感じましたか?
■Mさん(ネフティス)/診察方法の違いをもっとも感じたのは、血液検査や画像などのデータだけで診断するのでなく、目の前にいるネフティスの身体をしっかりと先生が観察してくださる点でしょうか。動作や姿勢、顔つき、毛艶などから、その時の身体の状態を判断しているように見えました。
中医学の処方は、西洋医学の薬のようにピンポイントで症状に作用するわけではないようで、全身のバランスを整えたり、循環をよくしたりする作用がメイン。西洋薬と組み合わせて使うことで、治療効果が高まるとのことでした。ネフティスの病気は完治するものではないのですが、中医学の処方により進行速度を遅らせることができて、症状も落ち着いています。
中医学の診療では、通うたびに飼い主側で治療法を自ら選択し、判断する手助けをしてもらえることを実感。病状の理解度や処方に対しての納得度が深まって、飼い主として、とてもありがたかったですね。
■Iさん(ビビ)/ほんとうにそうですね。
■Oさん(ナナ)/私もそう思いました。ヘルニアを発症した場合、西洋医学のアプローチですと、多くの獣医さんは手術をするようすすめると思うんです。でも私は絶対に手術はしたくなくて、ほかに方法がないか探した結果、中医学に出会いました。じつは、2016年の11月に3度目の大きなヘルニア(グレード5※注6)にかかったのですが、後遺症が若干残ったものの、中医学診療によって外科手術をすることなく、走れるまで奇跡的に回復しています。
※注6/椎間板ヘルニアのグレード4では、後ろ足が全く動かなくなる。 グレード5になると、深部痛覚までも消失し、後ろ足を強く掴んでも何も感じなくなってしまううえ、自力での排尿も不可能になる。
Q先生から食事や運動、マッサージなど、生活習慣や自宅でのケアなど具体的なアドバイスはあったのでしょうか?
■Iさん(ビビ)/自宅がフローリングでしたので、滑らないように敷物をしたり、段差をなくしたりするようアドバイスをいただきました。適度な散歩のさせ方や食餌の注意点なども役立っています。
■Oさん(ナナ)/私も床に絨毯を敷きました。それまでベッドでナナと一緒に寝ていたのですが、昇るときの腰の負担を考え、布団に変えました。また、先生から教わって自宅で取り組んでいるのは、肉球の付け根を軽く揉んで感覚を取り戻すマッサージ法です。さらに足の間にタオルを巻く筋トレも、イラストでわかりやすく指導してくださいました。心臓と腎臓が悪いナナ向けの食餌アドバイスもありがたかったですね。いまは、甘いおやつをやめて、ドライフードと半々ですが、塩分控えめな手作り食を与えています。
■Mさん(ネフティス)/ネフティスの場合は、「運動は、室内を歩き回るぐらいが丁度いい。関節が固まらないよう、後ろ足の屈伸をさせるといい」と言われました。あと、先生からのアドバイスで、自宅での灸を始めました。びわの葉エキスをスプレーした布をツボにあて、その上から灸をするのですが、意外と簡単にできるんですよ。
Q処方された薬は? 自宅での投薬で困ったことはありますか?
■Mさん(ネフティス)/僧房弁閉鎖不全症のケアとして、アピナックという西洋薬に加えて、中医学の処方として、2年前から体内の循環を良くするもの、1年前から代謝を良くするものを併用しています。ネフティスは蛋白漏出性腸炎のため、与えられるフードが限られているのでとても気を遣っていますが、食事と一緒に中医学の処方を与えても、食欲的には問題は今のところありません。
■Iさん(ビビ)/高齢ペットにおすすめという中医学の処方を与えているのですが、ビビはもともと食べることにあまり興味がないタイプ。フードもすぐ飽きちゃって、同じものを食べなくなるんです。そこで、大好物のレバーを茹でたものにこっそり混ぜて与えることに。毎日けっこう神経を使いますね。
■Oさん(ナナ)/2回目の治療までは代謝を高める処方でしたが、3回目からは元気が出て関節炎などにもおすすめという処方になりました。結果、血行がよくなったのか、身体のポテンシャルがあがった気がします。飲ませる点に関しては、ナナの場合はとくに困ったことはないですね。
Q中医学の治療を始めてからのペットの体調の変化、治癒の経緯などはいかがでしょうか。
■Iさん(ビビ)/治療をはじめて半年たちましたが、その間、めきめき良くなってきました。中医学の処方は、副作用も少なくて安心できます。肝臓の数値も落ち着いてきて、夜もよく眠ってくれるようになったのは本当に良かったです。
■Mさん(ネフティス)/中医学の治療により何より良かったのは、痛がらなくなった点。食事中も前脚に体重が乗ると後ろ脚がナックリング(※注7)することが多かったのですが、最近はその頻度が減っています。もう一匹飼っている同じ犬種のイシスも、レントゲンで腰に問題を抱えていることがわかったので、予防の意味も含めて鍼と循環を良くする中医学の処方を始めました。
※注7 脊髄神経の麻痺により、まるで拳を握るように足先が曲がった状態になる症状。
■Oさん(ナナ)/何度も危機を脱出できたことに加え、中医学の治療を始めてから、ナナの毛並みがとてもきれいになりました。15歳のわりには若々しく見えるという変化も。なんだか美容にもいいようですね。
Qそれぞれに治療の効果があったようですが、今後も中医学の治療を続けたいですか? 中医学の治療をはじめてペットへの意識やふれあい方など、気持ちが変化した点がありますか?
■Iさん(ビビ)/続けたいですね。中医学の治療を始めてから、飼い主の私も、漢方の薬を飲むようになりました。
■Oさん(ナナ)/私もそうですね。今後もナナの再発予防と健康・美容維持のために続けたいです。
■Mさん(ネフティス)/私は「気」など、目に見えないものを意識するようになりました。そして、「身体」に対する考え方や捉え方も変わって、物質ではないものを意識できるようになり、中医学の身体観に抵抗感がなくなってきたんです。
人も犬も同じ生き物として「気」というものがあるとすれば、飼い主が「気」を意識することで、犬ともっと深くコミュニケーションできるのかもしれない、と考えるようになりました。具体的に言えば、妻は頭痛や肩こりの治療のために鍼治療を受けるようになったし、私は合気道や気功などを体験し、「気」と心身の健康について考えるようになったのが大きな変化ですね。
Q最後にこれから中医学治療を受けてみたい方へ一言、メッセージをお願いいたします。
■Mさん(ネフティス)/身体の不調だけでなく、身体と心を一体として診る中医学。飼い犬の治療を通して、飼い主の心までを癒し診てくれているような、貴重な体験を得ています。
■Iさん(ビビ)/ヘルニアの治療に鍼という選択肢があるのを皆さんにもっと知ってもらいたいですね。
■Oさん(ナナ)/そうですね。重度の場合は難しい場合もありますが、軽度の場合は治る確率は大いにあると思います。ヘルニアかな?と思ったらなるべく早く獣医師の先生に診てもらった方がいいですよ。
ナナの3度目のヘルニア発症はなかなか良くならず、心が折れかけたこともあります。車椅子も覚悟しました。すべての子が治るわけではないのです。しかし、先生から治療のたびに「前回よりいいよ。悪くはなってないよ」とおっしゃっていただけたので、愛犬を信じて頑張りました。ナナの頑張りはもちろんですが、マッサージ、筋トレなどを含む小さな努力の積み重ねの結果だと私は思っています。
まとめ
貴重なご意見やご感想をありがとうございました。みなさん中医学の治療を通して、ペットとの関係性をはじめ、飼い主自身の健康意識まで変化されたようですね。とくにシニアペットには加齢により様々な体調の変化が現れるので、身体に負担が少ない治療や処方が求められていることがとくにわかりました。
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