【「ワンワン」吠えるのとは少し違う!? その真意とは……】声にならない声を聴けっ!!
犬は吠える、それだけ。なんて感じている読者の方はいないはず。そう、犬もブツブツ言ったり話しかけてきたりする。無口な子もいるが、よくしゃべる子もいる。では何を言っているのか。一緒に考えてみよう。(Shi-Ba 2017年11月号 Vol.97より)
- 更新日:
その声色で一体何を伝えたいのかを意識する
愛犬がなんかしゃべってる。かわいいね。面白いね。そんな話で盛り上がることってないだろうか。
犬の気質や性格にもよるが、犬は吠える以外に案外よくしゃべってるような気がする。ブツブツ言ったり、明らかに不満を口にしているようであったり、あるいは強烈に自己主張を言葉にしているようだったり。
滑舌が悪いって言うなよ
そこにはどのくらいの意志が含まれているのか、何を言おうとしているのか、飼い主としてはとても気になる「言葉」である。
会話ができないから本当のところは知る由もないのだが、いくつかカテゴライズできるのではないかと思ってまとめてみた。これらのような意志、主張がある時に犬は、吠えるのとは違う声色で訴えかけているのではないか。
そのような意識を持って犬のおしゃべりを聞いてみると、伝わってくることも増えるかもしれない。
柴犬が出す9つの声
いろいろな種類、意図があると思われる犬たちの声。様々な人の体験を聞いた上で、編集部ではだいたい9つの種類に分けられるのではないか、と大別した。
警戒、唸り
低く静かに喉を「ウーッ」と鳴らす。意にそぐわないこと、物、人などに対して自分の気持ちを表しているとも言える。オモチャ遊びの時にも出ることがある。
ストレス
警戒の声に近いが、それよりも多少軽い感じか。「それはちょっと嫌だな」という気持ちが思わず声に出てしまうというパターンが多いようである。
ひとり言
誰にともなく、どこに向かうでもなく、「フウン」やら「オウン」やらよく聞き取れない声が出ていることがある。たまによく一人でしゃべってる子がいる。
遠吠え
犬の本能の残り火。現在では救急車や子供の楽器演奏など、高音が聞こえた時につられて出るということが多い。
要求
要求吠えというものがあるが、吠えるというレベルではない時は、やはり声に聞こえる。ただ、放置するとエスカレートしていく危険性もあるので、注意が必要。
興奮
興奮すると声が出る、というのは動物共通の生理的行動である。それが楽しい場面で出るのであればいいが、限度を超えると手がつけられなくなるので、これも要注意。
不安、恐怖
ネガティブ要素満載の声。飼い主は犬を安心させてあげることが必要。そしてその感情が大きくならないように行動すべき。危険行動の種になりかねない声である。
文句、捨て台詞
意外とよく聞く声。「ブーブー」言ったり、口の中で「モゴモゴ」と言ってみたり。一言言わないと気がすまん、でも強く主張できないし、といったところだろうか。
ため息
諦めの状況にある時に出ることが多い。どうも柴犬にはため息をする子が多いという説もある。「またか」「仕方ない、付き合ってやるよ」といった大人の対応とも取れる。
笑ってばかりもいられない しつけ面から見た声
その声、スルーしていいの? それともやめさせたほうが……。飼い主として知っておきたいいくつかのこと。
くあぁ~!
要求の強さイコール声の大きさと捉えるべし
愛犬が変な声を出せば、それは微笑ましい光景。ついつい家族と和んでしまうこともあるだろう。その声をまた聞きたくて、つい促してしまう人もいるかもしれない。だがそれには見極めが必要だと戸田先生は言う。
「仮にそれが要求吠えだったとしたら、辞めさせるべきです」
せっかくしつけてきたのに、その声を見逃したためにコントロールできない子になってしまった、なんてことにならないように。
「要求の強さと声の大きさは、基本的には比例します」
その点だけはしっかりと留意すべし。マイナス面がないのであれば、愛犬とおしゃべりを楽しもう。
犬たちの声
よく聞くのだぞ!
注意すべき2つの声
明らかな要求を含む声はきちんと抑えるべき
犬の声でよく聞かれるのが要求を意味するもの。「あれをくれ」「これがしたい」といった意志が込められた声は、そのまま放っておくべきではない。これは必ずエスカレートしていく。そうなると、いうことを聞かない子になる危険性がある。かわいい声を出して要求する子もいるが、これも同様。放置厳禁だ。
唸り声はいつ爆発するかわからない危険を孕む
小さく低く唸る声。これにひるんでしまうと、「唸れば思いのまま」の学習が確立してしまう。引っ張りっこして遊んでいても、「はい、おしまい」で素直に従うのであれば、関係性が確立している証拠。ちょっとくらいの唸り声は無礼講だが、あくまでも飼い主主導で。
日本犬
いつも文句言ってる
日本犬はあまり変な声は出さないが、いつも文句を言ってるような子が多い。自分を律しているとも取れる。子犬時には「ヤンヤン」言う子もいるが、きちんとしつければ変な声や要求はなくなる。
洋犬
主張がくどい子も
「バンバン」「バオウバオウ」と大きな声を出すのがビーグル。それがいつまでも止まずにくどいことも……。ダックスやシュナウザー、ハスキーなどは甲高く、必死感な印象。
多頭飼いの声
やはり先住犬の真似をするように
かりん「マネしちゃお♪」
こはな「しない方がいいよ~」
先住犬にチャイム吠えがあれば、2匹目の子にそれが移る可能性は高い。だから、真似されたくないことがあれば、2匹目を迎える前にその行動を止めさせたほうがいい。
必見! 飼い主の対応が今後を左右
最初は止むを得ないことも でも次からどうするかが重要
愛犬が今までに聞いたこともない変な声を出した。当然飼い主は「今の何?」と笑いながら愛犬を見る。突然思いもよらぬ声が聞こえれば、最初はそれも仕方がないこと。だが、次に同じ声が聞こえた時にどう対応するかがとても重要と戸田先生は指摘する。
「その声を続けさせてもいいのか、近所迷惑ではないか、エスカレートしていかないかと、様々なシチュエーションを想定しなければなりません。その上で、止めさせたほうがいいのか、続けても問題ないのかを冷静に判断すべきです」
問題行動に繋がるような声と判断したら、当然ダメと言わなければならない。それを続けていけば、その声は出さなくなる。逆にその声を出していても誰にも迷惑をかけず、危険性もないと思ったのであれば、楽しんでも構わないと戸田先生は言う。要求と唸り以外はまず大丈夫とのこと。
戸田先生が聴いた声にならない声
唸っているのに嬉しいの? 感情と声が合致しない例
とある犬が唸っている、お母さんに。何か気に入らないことでもあるのだろうか。すると飼い主のお母さん、「実はこれ、喜びの表現なんです」。なんと。子犬の頃から見られる表現で、飼い主はそれにひるまず対応している。そのため、唸り声は出しても、攻撃などの問題行動には発展していないとのこと。
あまり大きな声は出さないけれど 小声の文句は多い
profile 神奈川県 取屋 桃(メス・3歳)
内弁慶ってカッコイイ響き~
内弁慶で人見知り、犬見知りの桃。外では相性の悪い犬に会った時以外は吠えない。散歩も基本的には嫌い。車や自転車の音、子供が走る音が苦手。リラックスするとフセをして、後脚が伸びる。
小さくぼやくことで心の平静を保っているの?
内弁慶で人見知りなだけに、あまり仰々しい声は出さない桃。それでも小さくブツブツと文句を言うことは多いように感じる。
音の鳴るボールが出てくると嫌なようで、「ウニャウニャ」言ったり、「ニャーニャー」と言ってやんわりと拒否の姿勢を貫く。
休みたいのに休めない時や、落ち着かない時などは「ブッ」「ブブゥ」「プクプク」などと明らかに文句を言っている。でも誰に対してということもなく、小声でガス抜きしているよう。
まったりしている桃の近くにお母さんがやってきて、ちょっとかまいはじめる。「ツツツツッ」と口元にオモチャを近づけると、その表情は「やめてよ」のアピール。それでもやめないと、「チャッチャッ」と口元から漏れる。声というよりは、まるで無関心を装うかの如く。でもあからさまに怒ったりはしない。
時:日中のリビング 相手:お母さん
そのボールは好きなの?
これ、音が出るやつだ!
いつも遊んでいる青いボールが目の前に差し出される。お母さんがボールをキューキュー鳴らすと、桃はあまり表情を崩すことなく「ウニャウニャ」としゃべる。ぼやきのようにも聞こえる。
時:日中のリビング 相手:お母さん
もう遊ばないから
も~寝たい~
オモチャで遊んで興奮している時は、ほとんど声を出さない。遊び終えてもなお、しつこく遊ばせようとすると、やんわり拒否してソファでリラックス。文句の声は小さく「プクプク」。
時:朝の散歩の公園 相手:お母さん
催促の声がちょっと変
早く食べたい!
散歩中は飼い主と付かず離れずの距離を保つ桃。しかしオヤツが出てくると欲しくて後脚立ちの得意技。お預けの時間が長くなると欲しくてたまらず「ブブッ」と催促の声が止まらなくなる。
時:日中の窓辺 相手:外にいる人
うるさいってばぁ
バッチリ警備中!
外で子供たちがわさわさと歩いて行ったり、自転車が通る音が聞こえると窓辺へ行って確認、そして「ワウッ」。玄関のチャイムが鳴るとそれよりも小さな声で短く「ワゥ」。その違いは一体?
時:散歩の終わり頃 相手:お父さん
少し休ませてよブーッ
もう帰っていい?
遊ぶのは大好きだけど、でも無尽蔵という感じではない桃。休みたい時に休ませてもらえないと文句が出る、「ブーッ」。まさにブーイング。それでも促されれば、文句を言いつつ渋々立ち上がって重たい足取り。
ピアノに合わせて可憐な節回しで歌い 他の犬には自己紹介
千葉県 下村こはな(メス・3歳/左)かりん(メス・2歳/右)
こはな「いろいろ」
かりん「しゃべっちゃうよ~」
犬見知りで大人びてる先住犬のこはな。寝言を言う。
ボールに目がなく、散歩中に他の子が遊んでいるボールを見ても突っ込んで行こうとするかりん。ともにテリトリー意識が高く、ともに魚好き。
落ち着いたこはなの声と無邪気なかりんの声は違う?
先住のこはなは落ち着いていて慎重、後輩のかりんは無邪気で活発。気質の違いは声にも出るのか。
こはなはお父さんが大好きで、抱っこされて撫でられるとうっとりと声が漏れる。しかしかまってもらえないとわかるとすねて、部屋の隅へ行って遠吠えで訴える。また、ソファなどでくつろいでいる時に下にかりんが来ると、「ガオーッ」と威嚇とも不満とも取れる声が出る。
一方のかりん、「ボール投げて」の優しい要求が「キューキュー」。お父さんとの激しい遊びで「ヴーッ」「アヴーッ」。度が過ぎると高めに抜けた「オホオホ」の声。
なるほど、何となく気質で声も異なるものだ(本当か?)。
ちなみにこはなは仲間と一緒に散歩している時、他の犬がやってくると進んで前に出てしゃべり出すという。あたかも自己紹介をしているかのように。犬見知りなのにリーダータイプなのだ。
時:かりん幼犬の頃 相手:お姉ちゃん
私の歌の伴奏でしょ
今は大人だから
かりんが4~5ヶ月の頃、お姉ちゃんがピアノの練習を始めると足元に来て、一緒に歌っていた。「きちんと節があって、ピアノが終わるとかりんも歌うのをやめました」その美声、聴いてみたい。
時:休みの日 相手:お父さん
遊ぶ時は声出します
ヘンホンははふ~!!(テンションあがる~!!)
かりんはお父さんと激しく遊ぶのが好き。興に乗ってくると「ヴーッ」「アヴーッ」という声が自ずと出てくる。だが、お父さんが「おしまい」と言うと、すっぱりとやめて声も止まる。素晴らしいメリハリ。
時:朝の散歩の公園 相手:お父さん
ボール投げてよお願いの声
ボール待て~~!
ボール遊びが好きなのはかりん。ほとんどエンドレス。ボールを投げてほしい時、はじめは表情で訴えるが、そのうちに「キューキュー」という優しい要求の声を出す。怒っている感じではない。
時:休日など 相手:お父さん
お父さんの前では女に
むふふ♥ 独占♪
2匹ともお父さんが大好き。特にこはなはお父さんに撫でられるとうっとりとした表情に。そんな時は文字通り声にならない言葉が漏れるという。その姿に「女を感じる」とはお母さんの言葉。
時:夕方の散歩前 相手:お父さん、お母さん
リード着けるの嫌なのよ
散歩は好きだけど……
朝の散歩の時、こはなにリードを着けるのにいつも一悶着。テーブルや椅子の下に潜り込み、時には「ウーッ」と反抗的に。これが散歩のたびに繰り返される。かりんはシッポフリフリ、自らリードに。
まとめ 良し悪しを見極めてしゃべらせてあげよう
犬だってしゃべりたい、文句のひとつも言いたい。取材を通してそんなことを感じた。それはそうだろう、人間だってそうなんだ。だから文句やひとり言くらいだったら大目に見よう。
でも、自分の欲求を押し通そうとする声には耳を傾けてはいけない。飼い主がしっかりと管理する必要があるのだ。その点を踏まえていれば、愛犬にいっぱいしゃべらせてあげてもいい。それが良いコミュニケーションを生み出すのであれば、お互いの距離はなおのこと縮んでいくはず。飼い主の見極めが、愛犬とのおしゃべりタイムをより楽しくできる。
Text:Takahiro Kadono Photos:Michio Hino、Minako Okuyama
監修:戸田美由紀先生
JAHA認定家庭犬インストラクター。JKC・PD公認訓練士。埼玉県、東京都北西部を中心とした個別出張トレーニングなどで活躍中。著書に『ほめてイイコに! 犬のしつけ&ハッピートレーニング』(西東社)、『子犬の育て方完璧宣言!』(誠文堂新光社)。
☎090-3543-1148
http://www.inu-shituke.com/