『愛犬のトイプードルが前足を挙げて痛がっている…』
『そこまで痛がってはいないが、後ろ足の歩き方がおかしい…』
ということはありませんか?もしかすると愛犬は骨折を起こしているかもしれません。
本記事では犬の骨折の手術費用、治療期間、症状と見分け方などについて実際の症例を交えて獣医師が詳しく解説します。
犬の骨折の原因
骨折とは骨に衝撃が加わることで、骨が欠けたり、ヒビが入ったり、折れることをいいます。
骨折は小型犬で起こりやすく、長い足のわりに骨が細く筋肉量も少ないため
ソファや椅子などの高い所から跳び下りた着地の際に前足の骨(橈骨・尺骨)が骨折してしまうことがあります。他にもフローリングで滑って転んだだけで骨折することもあります。
その他にもドアで足を挟んでしまうなどの怪我、交通事故、高所からの落下などの外傷によって骨折する場合があります。
骨折しやすい好発犬種と年齢
骨折はどの犬種・年齢でも起こりうるものですが、骨折が起こりやすい好発犬種や年齢があります。
骨折が起こりやすい好発犬種は、以下の通りです。
- トイプードル
- ポメラニアン
- ヨークシャテリア
- パピヨン
- マルチーズ
- ミニチュアピンシャー
- チワワ
このような小型犬の骨折が起こる年齢としては、2歳以下の若齢犬が多いです。
また、腫瘍などの病気によって骨が弱ったシニア犬でも骨折が起こることがあります。
骨折しやすい犬の体の部位
骨折しやすい体の部位は小型犬と大型犬で異なります。
小型犬の多くは橈尺骨、まれに上腕骨・大腿骨・脛骨が骨折しやすいです。大型犬に関しては腫瘍による病的骨折がほとんどです。
犬の骨折と捻挫や脱臼の違い
骨折と似たような症状を引き起こす骨関節疾患として、捻挫や脱臼があります。
症状や触診、レントゲン検査などでそれぞれの疾患を見分けることが可能です。
骨折
骨折とは、その名の通り骨が折れた状態のことで、骨の完全な断裂や亀裂が起こります。
症状としては、激しい痛み、腫れ、骨の変形や異常な動きをします。骨折はレントゲンによって骨折部位を確認することができます。
脱臼
脱臼とは、関節の骨が正常な位置から外れた状態です。症状としては強い痛み、関節の変形が起こります。レントゲンによって、関節の位置が普通とは違う位置にあることを確認することができます。
捻挫
捻挫は関節を支えている靭帯や関節包などの軟部組織が傷つくことで、骨自体は壊れていません。
症状としては、関節の腫れや熱感、痛み、関節や靭帯周辺で内出血が起こります。捻挫は骨折や脱臼とは異なり、レントゲンでは診断することができません。
犬の骨折の症状と見分け方
骨折でよく起こる症状としては以下のようなものがあります。
- 足をつけないように挙げたり、引きずりながら歩く
- 触ると痛がったり、抱き上げるとキャンと鳴く
- 骨折部位が腫れて熱感がある
- 骨折してる場所を気にしてしきりになめる
骨折が起こった場合、脱臼とは違って痛がらないことはなく、強い痛みを感じます。その強い痛みにより、足を触ろうとすると嫌がって噛みついてきたり、なるべく骨折した足を地面につけないように歩くこともあります。
また、明らかに他の場所よりも熱感があって腫れていたり、しきりに足の一部をなめている場合、その場所が骨折している可能性が高いです。
骨折の治療において重要なことは、上記のような症状があった際に早めに専門的な動物病院を受診することで、早期に診断•治療を行うことで治療期間を短くすることができます。
骨折していても痛がらない場合
通常骨折は痛みを伴いますが、亀裂骨折や若木骨折といった不完全骨折は軽度の痛みしか感じないため、”痛がっていない”ように見えてしまうことがあり、飼い主様は愛犬の骨折に気づくことが難しい場合もあります。
ですので、日頃から愛犬の様子を注意深く観察することが必要です。
骨折は自然に治ることもある
骨折は自然に治ることはあります。
ですが、骨折をそのまま放置してしまうと、痛みや腫れが続いたり、骨が変形した状態でくっついてしまうことがあります。また、筋肉量が落ち、関節の動きも悪くなっていきます。
その場合、手術を行ったとしても後遺症が残ることがあるため、骨折が疑われる場合は可能な限り早めに専門治療を行うことができる病院を受診することが重要です。
犬の骨折の診断
犬の骨折はレントゲン検査によって診断を行います。
交通事故や落下により骨折が起こっている症例では、患部以外にも骨折などの外傷が認められる場合もあるため、身体検査や超音波検査、レントゲン検査などの画像検査を慎重に行うべきです。
さらに、レントゲン検査で骨折が開放性か閉鎖性かを判断します。
開放性
開放性骨折は、折れた骨により皮膚が貫通して損傷を起こし、骨が露出している状態です。
開放性の場合は、骨が体外に曝されているため、骨折部に感染が起こる可能性を考慮する必要があります。
閉鎖性
閉鎖性骨折は、折れた骨による皮膚の損傷は起こっておらず、体内のみで骨折が起こっている状態です。
閉鎖性骨折は、皮膚の下で骨折が起こっているため、骨折部位によっては肉眼や触診で骨折しているかどうか判断にくいことがあります。
犬の骨折の治療
骨折は年齢や骨折部位•状態や骨の太さなどによって、愛犬の状態に応じて最適な治療を選択することが重要です。
以下で骨折の具体的な治療法を説明します。
ギプス固定(外固定)
ギプス固定はギプスを骨折部位に巻いて固定する治療法です。添木などを当てることもあります。
外科手術ではないため、愛犬の負担や金銭的な負担も少なくて済みます。
単純な骨折はギプス固定だけで治療できる場合もありますが、
基本的には、外科手術の前や後に手術のサポートや痛みの軽減を目的として使用する場合がほとんどです。
また皮膚の感染症、浮腫、虚血、関節拘縮、癒合不全といった合併症がよく起こるため、こまめに来院してギプスをチェックしてもらうことが必要です。
特にトイプードルでは、ギプス固定のみで治療を行った場合、83%の確率で変形癒合•癒合不全が起こることが分かっています。
基本的にギプス固定は禁忌と考えており、当院ではギプス固定を行うことは推奨しておりません。
プレート固定法
小型犬で多い橈尺骨骨折で行う外科治療は、プレート固定法になります。
プレート固定法は皮膚を切開して骨折した部分をプレートやネジを使って固定させる治療法です。
プレート固定法は固定力が強く、合併症のリスクも低いため、第一選択として行われる外科手術になります。
髄内ピン法
海綿骨の部分にピンを入れて安定化させる治療法です。
髄内ピン法は、固定の強度が低く、また変形して癒合したり、癒合不全のリスクが高いため、橈尺骨骨折などで使用されることはほとんどありません。
治療期間と手術後の過ごし方にについて
骨折が完治するまでの治療期間はおよそ6週間〜8週間です。粉砕骨折や術後の合併症が起こっている場合は、完治まで半年以上かかることもあります。
流れとしては、手術が終わって数日は絶対安静下で入院が必要となります。退院した後も2週間程度は骨の再形成を促すために安静期間となります。また激しいお散歩は控えてもらいます。
手術後2週間〜1ヶ月が経過して、安静期間を終えれば関節のストレッチやリードをつけてお散歩に行く事ができます。
またリハビリを行うことで、萎縮して弱った筋肉や動きの悪くなった関節をもとの状態に戻し、新しい骨を作るために物理的な刺激を与えていきます。
再骨折を引き起こした橈尺骨骨折の症例
こちらは他院で骨折の手術を行なったものの再骨折してしまい、当院で再手術を行なったトイプードルの症例です。
当院が犬の骨折の診療で心がけていること
犬の骨折の手術費用
当院で専門的な骨折の外科手術を受ける場合の費用例をご紹介します。
手術、症状の程度などにより料金は異なりますので、詳しくは当院へお問い合わせください。
片足骨折の入院費と手術費用骨
項目 | 料金の目安 |
---|---|
術前検査 | 25,790円 |
手術費用(片足) | 300,000円〜 |
入院費用(2〜3日) | 16,500円〜 |
合計 | 342,290円〜 |
気になる症状がある場合はご相談ください
特に重症の場合、ぐったりして元気がなくなってしまうので、できるだけ早く動物病院に行くことが薦められます。
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