【獣医師監修】猫の認知症として考えられる原因や症状、治療法と予防法

人間と同じように、猫も認知症になります。猫の完全室内飼いが増加している近年、猫の平均寿命の延びも手伝って増加傾向にあるようです。ここでは、猫の認知症について解説します。

  • サムネイル: PECO編集部
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

認知症の症状

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猫の認知症とは、認知力が低下することによって起こる行動の変化で、脳の病理学的な変化や、神経伝達物質の減少なども起こります。猫での統計は取れていませんが、14歳以上での症例報告がいくつかあるようです。

猫の認知症の症状には、以下のようなものが挙げられます。

●意味もなくうろうろする
●家族への態度が変化する
●家具や物の間で身動きが取れなくなる
●トイレの失敗
●意味もなく鳴き続ける
●寝る時間が変化する など

DISHA

認知症の5症候として知られている「DISHA」というものがあります。この「DISHA」を参考に、猫の行動を評価する習慣を持つことで、小さな変化にも気づきやすくなるでしょう。

Disorientation(D:見当識障害)

空間認知の変化、周囲の環境に対する把握不全、身につけた経験の混乱等を意味します。

●よく知っている室内で迷子になる
●よく知っている人を認識できない
●家の中でドアを間違える
●落ち着きがなく、家の中で歩き回る  など

socio-environmental Interaction change(I:社会性や周囲環境とのかかわりの変化)

人間やほかの動物とのかかわり方の変化、学習したはずの指示に対する反応の低下などを意味します。

●撫でられることへの反応の低下
●飼い主と遊ぶことへの反応の低下
●指示に対する反応の低下
●飼い主に異常に付きまとう
●同居動物への攻撃性

Sleep-wake cycle change(S:睡眠、覚醒周期の変化)

日中の睡眠時間が増え、逆に夜間の睡眠時間が減少することを意味します。

●就寝時間になっても寝ようとしない
●不眠と過眠を繰り返す
●夜中に徘徊して鳴く
●日中の睡眠時間が延びる

House soiling(H:不適切な排泄)

室内での排尿・排便のコントロールの喪失を意味します。

●トイレ以外の場所で排泄する
●睡眠場所で排泄する
●排泄の前兆が見られなくなる
●排泄場所の変更
●突然粗相をする

general Activity change(A:活動量や内容の変化)

目的を持った活動の低下と、無目的な活動の増加を意味します。

●慣れ親しんだ場所に対する反応の低下
●何もない場所を見つめたり、噛みついたりする
●人や物、自分のカラダを異常に舐め続ける
●食欲の低下や増加
●人や騒音などに対して不安や恐怖心を抱く

これらの項目に対して、当てはまるような状態が続いた場合は、認知症を患っている可能性が疑われます。

認知症の原因

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はっきりとした原因はわかりませんが、脳の実質的な変化や神経伝達物質の減少などが確認されています。

認知症の治療方法

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行動学的な治療

規則的な運動を促す、おもちゃを使う、日中にたくさん活動させる、触れ合う時間を増やすなど、毎日の生活の中で積極的に運動させたり、良質な刺激を与えたりすることが大切です。

食事の見直し、サプリメントの導入

DHA、EPAなどがたくさん含まれたフードに変更したり、サプリメントで補ったりすることで、認知力や記憶力などの向上が期待されます。

薬物療法

認知症の治療として、神経伝達物質を増加させるような薬を使用することもあります。

猫の認知症を完治させるための治療方法は存在しません。また、投薬によって症状を軽減することはできるかもしれませんが、薬の効果は猫によって差があります。愛猫が認知症と診断されたら、最期を迎えるまで愛情深く向き合ってあげてください。

認知症の予防方法

認知症の予防方法としては、運動、食事、コミュニケーションの3点が挙げられます。心とカラダに適度な刺激を与えるよう、普段からおもちゃを使って遊んだり、積極的にスキンシップをとったりすることで、脳の様々な機能が活発化します。

食事については、DHA、EPA、抗酸化物質を含んだエサを与えることが、認知症の予防に効果的であるといわれています。

猫が認知症を発症した場合、問題行動が増加する傾向があります。しかし、加齢に伴う脳の劣化は、猫自身にはどうしようもできません。だからこそ、飼い主が日頃から予防に努め、もし万が一愛猫が認知症を発症してしまった時は、厳しく叱らずに見守りましょう。

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