【獣医師監修】本当に人になつく? フェレットを人慣れさせるためのポイント
胴長短足のカラダつきとつぶらな瞳がとてもキュートなフェレット。犬や猫ほど一般的なペットではないため、人になつくのかな? と思う人も多いはず。しかし、じつはフェレットはペットとして古い歴史を持つ動物。今回は、フェレットをなつかせるためのポイントを紹介します。
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監修:ヴァンケット動物病院 松原且季院長
フェレットはなつく?
フェレットはイタチ科に属する哺乳小動物です。日本でのペットとしての歴史は浅いですが、古代エジプトの壁画に描かれるなど、およそ3,000年もの昔から人と共に生活してきたといわれています。
野生のイタチを家畜化し、改良を重ねた品種なので、野生種は存在しません。ただし、ペットのフェレットが脱走して野生化してしまうケースがあるので、飼育環境にはくれぐれも注意してください。
飼い主に従順な犬に比べると、性格は自由奔放でマイペース。長い年月をかけて家畜化された動物とはいえ、警戒心は強く、仕草には野性味が感じられます。
フェレットは祖先のイタチ同様とても賢く、社交性に富みます。好奇心旺盛で人との接触を好み、飼い主になつくことが多いです。飼い主を主人として従うというより、飼い主と遊ぶのを喜ぶ、フレンドリーな小動物です。
フェレットは飼い主とボール遊びなどでコミュニケーションをとるのが大好き。人の感情や言葉を理解し、自分の名前を覚えることもあります。芸を覚えるフェレットも珍しくありません。
フェレットはペットに最適?
フェレットは鳴き声が小さく、そもそも普段はほとんど鳴きません。うれしい時や、危険を感じた時に鳴く程度です。鳴き声が近所迷惑になりにくいため、集合住宅でも飼いやすいペットです。決まった場所で排泄をする習性があるため、トイレのしつけも可能です。
人間の感情を理解できるため、飼い主が悲しんでいる時にはそっと寄り添ってくれることもあります。フェレット自身も寂しがり屋なので、かまってほしい時は自分から寄ってきて、膝の上に乗ることも。ベタベタと甘えてくることはありませんが、飼い主とのほどよい距離感が、フェレットの魅力でもあります。
好奇心が強いフェレットは散歩が大好きです。犬のようにリードを装着して散歩することができることもあります。
ただし、フェレットは室内で遊ばせるだけでも充分運動不足を解消できるので、散歩が毎日必要というわけではありません。散歩には脱走のリスクもあるため、完全に室内で飼育する飼い主もいます。また、一人で過ごしてもあまりストレスを感じないため、お留守番も得意です。
フェレットの飼育で問題になるのは“ニオイ”です。フェレットはイタチ科の動物によく見られる「臭腺」という器官が肛門の脇にあり、外敵から身を守る時、あるいは縄張りを主張するための臭いつけ行動の時に、特有の強烈なニオイを発します。また、発情期になるとニオイが強くなる傾向もあります。
通常、ペットとして一般家庭に迎えられるフェレットは、この臭腺の除去と、避妊・去勢手術を済ませているのが一般的ですが、まれに手術が不完全なケースも見られるようです。フェレットを家族に迎える際は、この一連の手術が済んでいるかどうかの確認が必要です。
しかし、臭腺の除去が行われていても、フェレット特有の独特のニオイはあるため、気になる場合は空気清浄機などで対策をしましょう。
フェレットのしつけについて
フェレットに必要な最低限のしつけは「フェレットに自分の名前を覚えさせる」「トイレ」「噛み癖の矯正」の3つです。
フェレットに自分の名前を覚えさせる
フェレットに自分の名前を覚えさせるには、フェレットにごはんやおやつをあげる時、一緒に遊ぶ時などに、名前呼んであげることが重要です。この時、なるべく同じイントネーションで名前を呼ぶように心がけましょう。これを根気よく続けると、フェレットは「名前を呼ばれるといいことが起こる」と学習し、自分から近づいてくるようになります。
トイレ
フェレットはケージの隅の決まった場所で排泄する習性があり、その場所さえ決まってしまえば、トイレのしつけは簡単です。ケージの隅にトイレを置き、あらかじめ小さなフンを入れておけば、そこがトイレになります。
トイレ以外の場所に排泄した場合は、きれいに掃除をしましょう。フンのニオイが残っていると、そこをトイレと認識してしまうため、消臭剤を使ってニオイも消します。
ケージの外にトイレを作る場合は、ケージ内に設置しているものと同じ形のトイレを部屋の隅に設置します。トイレ以外の場所に排泄した場合は、同じく臭いが残らないように掃除します。これを根気よく繰り返し、フェレットにトイレの場所を覚えさせます。
また、部屋の四隅すべてにトイレを置き、フェレット自身に場所を決めさせる方法もあります。フェレットが部屋の角に向かってそわそわしている時はトイレのサイン。粗相をしてしまう前に、トイレに連れていってあげましょう。
噛み癖の矯正
フェレットの噛み癖は早めに矯正しましょう。フェレットは基本的に噛む動物であり、とくに子どものフェレットはよく噛みます。
フェレットが噛むタイミングは、怯えている時や遊んでほしい時、お腹がすいている時、歯の生え変わりで歯が痒い時などです。まずは噛むという行動に出る前に、その気持ちを察してあげることが大切です。
また、フェレットに噛まれた時は「ダメッ」と、いつも同じ言葉で、そして大きな声で反応し、その言葉が制止の意味を持つことを根気よく学習させます。この時、名前を呼ぶと混乱するため、「ダメッ」などの一言に決めておきましょう。体罰は信頼関係を失うことになるので厳禁です。
よくなつかせるためのポイント
フェレットは好奇心旺盛ですが、臆病で警戒心も強い動物です。よくなつかせるためには、飼い主から積極的にアプローチするより、警戒心を解いてもらえるまで待つ、思いやりのある姿勢が大切です。
フェレットを家に迎えた直後はあまりかまわず、十分な食事と水を用意したケージに入れ、新しい環境に慣れるまで見守ります。食事の交換や掃除の時には、やさしく声をかけてから作業します。無理にケージから出したり、抱っこしたりするなどの強制的な行動は控えましょう。
フェレットに触れる時に飼い主が怖がると、緊張が伝わってフェレットも怖がります。フェレットが新しい環境に慣れ、ケージから出して部屋の中で自由に遊ばせることができるようになれば、フェレットの方から飼い主に寄ってきます。その時に、そっとひと撫でして嫌がるそぶりを見せなければ、もう触れても大丈夫です。
フェレットとコミュニケーションをとる方法としては、遊びが効果的です。フェレットが警戒心を解く様子をみせたら、ボールや猫じゃらしなどのおもちゃで遊んであげましょう。フェレットには狭いところに潜り込む習性があるので、不要になったズボンなどを床に置いておくと、潜り込んで遊びます。
信頼関係を築くためには、おやつを手からあげるほか、抱っこなどのスキンシップも有効です。フェレットにストレスを与えないよう注意しながら、じっくり信頼関係を深めていきましょう。
フェレットは犬や猫と比べて、なつくまで時間がかかるペットです。なかなか距離が縮まらなくても、焦らずフェレットのペースを尊重してあげましょう。性格も個体差があるので、自分のフェレットがどんな子なのか、じっくり観察してください。
毎日愛情をこめてお世話をして、名前を呼んでスキンシップを心がければ、きっと素晴らしいパートナーになれるでしょう。