野良猫の耳がカットされているのには、じつはこんな理由があった
公園や道端にいる野良猫の耳の先に、一文字やV字型の切れ込みが入っているのを見かけたことはありませんか? じつはあの切れ込み、人の手によって施されたものなのです。「耳を切るなんて猫がかわいそう!」と感じるかもしれませんが、この切れ込みには大きな理由が隠されています。野良猫の耳の切れ込みが意味するものについて解説します。
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耳がカットされた野良猫がいる
耳の先がカットされた猫を見かけると、「猫同士でケンカしてケガしたのかな? それとも病気の跡かな?」と心配に思う人もいるでしょう。しかし、あの切れ込みは多くの場合、人間が入れたものです。もちろん、悪意のある虐待ではありません。じつは、この猫の耳の切れ込みは、猫の命を守るために大切な役割を果たしているのです。
耳カットは猫の命を守る
自由に生きている野良猫は、繁殖のシーズンごとに仔猫を生み、さらにその仔猫のほとんどが野良猫になってしまいます。こうした野良猫は保健所に持ち込まれ、悲しいことにその一部は殺処分されてしまう運命をたどります。とくに離乳前の仔猫の場合、保健所では充分な世話をすることができないため、すぐに殺処分されてしまうケースもあります。
殺処分されてしまう不幸な命を少しでも減らすためには、野良猫がこれ以上仔猫を産まないよう、不妊手術を行う必要があります。そこで、日本各地のボランティア団体が、TNR運動と呼ばれる運動を始めました。TNRとは、「罠で捕獲(Trap)・不妊手術(Neuter)・元の場所に返す(Return)」という彼らの3つの活動内容の頭文字です。
不妊手術を行っているかどうかは目で見てわかりづらく、とくにメス猫の場合はカラダの外側から見て判別することができません。そのためTNR運動では、不妊手術を行った目印として、猫の耳の一部をV字や一文字にカットします。こうすることで、その猫が不妊手術済みであることが一目でわかるようになるため、これ以上繁殖しない「地域猫」として、殺処分をせずに地域で見守っていくよう呼び掛けています。耳カットは一見かわいそうに思えますが、その猫自身の命を守り、さらに仔猫たちの殺処分をこれ以上増やさないための取り組みなのです。
耳カットによる痛みはある?
愛猫家としては、耳カットによって猫が痛みを感じるのかどうかが気になるところです。原則的に、耳カットは不妊手術中の麻酔がきいている時に行うため、痛みを感じることはありません。しっかりと止血と消毒が施されているので、猫にとっても安全な方法です。また、耳は通っている血の量があまり多くない部位なので、出血も軽く済みます。
以前は、TNR運動の目印として首輪やピアスなどが検討されたこともありました。しかし、やはりカラダにつける物は動いているうちに取れてしまったり、何かに引っかかってしまったりして危険なため、現在では耳の切れ込みを地域猫の目印とすることが、全国的に主流となっています。
耳カットは、猫たちが地域の人々に愛され、気にかけてもらっていることの証でもあります。人と地域の猫がお互いに思いやりながら共存できる理想の社会に近づけるためには、周囲の理解が必要です。猫の不妊手術と耳カットの関係について、まだ知らない人がいたらぜひ教えてあげてください。また、耳をカットされている猫を見かけた時は、そっと見守ってあげましょう。
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