【獣医師監修】ミズガメ(水棲ガメ)がエサを食べなくなる原因と対処法

エサをしっかり食べて元気に暮らしていたペットのミズガメが、突然エサを食べなくなったら不安になります。それはミズガメからのSOSのサインでもあります。エサを食べない原因を特定して、いつもの元気なミズガメに戻してあげましょう。

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監修:オールペットクリニック 平林雅和院長

ミズガメがエサを食べない原因

ミズガメは一見タフで我慢強く見えますが、じつは神経質でデリケートな生き物です。ミズガメの飼育でよく見られるトラブルが、エサを食べなくなること。ミズガメの食欲不振の原因はどこにあるのでしょうか?

水温の低下

変温動物のミズガメの体温は水温に依存する割合が大きいため、水温が下がると消化機能も低下することなどを原因とし、食欲不振に陥ります。そのため、水温管理はミズガメの飼育の命ともいえます。ミズガメの種類によって差はありますが、たとえば、ミドリガメの場合の適切な水温は20℃~25℃が理想的です。

日光不足

ミズガメにとって、バスキングはとても大切な習慣です。
バスキングとは日光などの熱源の力を借りてカラダを温める行為を指し、二つの役割があります。一つは体温を上昇させることによって、カラダの代謝を活発にします。1日に数回、このバスキングを行うことで健康を維持します。
もう一つは日光(紫外線)を浴びることによるビタミンD3合成と、それによるカルシウムの取り込みの活性化です。

環境の変化

ペットショップから家に迎えたばかりの時など、環境が一変するとエサを食べないことがあります。ミズガメは意外と臆病なので、環境の変化に慣れるまで時間がかかります。

エサの与えすぎや嗜好の変化

ミズガメはお気に入りのエサを好んで食べる傾向があります。しかし、どんなにお気に入りのエサでも、与えすぎると食べなくなってしまうことがあります。ミズガメの嗜好に合わせて、適切なエサの種類と量を見極めることが大切です。

抱卵期間中~産卵前

メスの場合、抱卵期間中(メスの体内で卵の生産が始まってから産卵するまでの期間)や産卵時期に食欲が低下する場合があります。とくに産卵前は神経質になり、産卵場所を探すなどの行動に追われて食事をとらなくなります。産卵後は元の食欲に戻ります。

ただし、メスのカメがすべて産卵をするとは限りません。カラダの発達状態や栄養状態、飼育環境により、メスのカメでも産卵をしない場合があります。また、産卵を始める年齢にもかなりの個体差があるので、「メスのカメが食欲不振に陥った。これは抱卵期間中~産卵前なのだろう」と決めつけず、体調不良の可能性がないか、しっかりチェックするようにしましょう。

このように、カメの食欲不振には様々な原因が考えられます。そのため、カメの健康を管理するためには、正確なグラム測定による食事量の増減・体重・甲羅の大きさ・水質・脱水の有無(眼のくぼみ、皮膚の張り、口腔内の唾液の粘り気)・脱皮不全(脱皮が正常に行われていない状態)の有無・爪や甲羅の変形・冬眠の有無などを日誌に記録し、小さな変化にもすぐに気づけるような態勢を整えておくことが大切です。

ミズガメがエサを食べない時の対処法

ミズガメには皮膚や甲羅や目などに異変が起こる様々な病気がありますが、「エサを食べない」という症状だけであれば、上述の通り、水温の低下による低体温症や、環境の変化や悪化によるストレス、抱卵期間中~産卵前の習性としての食欲不振が疑われます。

ミズガメの低体温症は半冬眠の状態となり、エサが食べたくても体が動かず食べることができない、ミズガメにとってとてもつらい状態です。まずは低体温症を引き起こしてしまわないよう、水温管理と日光浴(バスキング)の習慣を徹底しましょう。

とくに気温が下がる季節には、専用のヒーターやを設置するなど、亀にとって過ごしやすい環境を用意してあげることが大切です。

一方、夏場の日光浴は熱中症に注意が必要です。カメが熱中症になった場合、口や鼻から泡が出る、ぐったりするなどの症状がみられます。夏場にカメを日光浴させる場合は、直射日光が当たる場所は避け、カメが逃げ込めるような日陰を必ずつくってあげてください。

また、ミズガメの水槽は、金魚の水槽とは比較にならないほど水が汚れます。ろ過フィルターは必須ですが、汚れのスピードが速いのであまり頼ることなく、水は毎日交換しましょう。

メスのミズガメを飼育している場合、抱卵期間中~産卵前はエサを食べなくなりますが、産卵後も食欲がない場合は、体内に卵が残っていないか(卵詰まりを起こしていないか)動物病院でレントゲンなどで確認しましょう。

産卵後も、さらに産卵場所を探して穴を掘るなどの仕草がみられた場合は要注意。卵詰まりは、カルシウム不足や産卵場所の不足、肥満、やせ過ぎなどを原因として起こります。なお、卵詰まりはカメの命に関わる可能性があるため、すぐに動物病院に連れて行きましょう。

考えられる病気

食欲がなくなって口を開けっぱなしにしていたり、口からネバネバした液体が出たり、食事の時などにしきりと顔をこするような仕草をしたりする時は、口内炎などの口内感染(マウスロット)を疑います。

口内炎は細菌感染や栄養障害を原因として起こる病気で、口を閉じると痛みを感じるため、カメが口を開けたままの状態になります。口内炎などの口内感染を発症した場合は、薬を投与するだけでなく、口内の洗浄や膿の除去、感染部分の切除など専門的な治療が必要になるため、速やかに獣医師の診断を仰ぎましょう。

また、食欲不振のほかに、くしゃみや口をぱくぱくするなどの症状がみられた場合は、風邪や肺炎など呼吸器系の病気を患っている可能性があります。カメにとって、呼吸器系の病気は命に関わるケースが少なくないので、この場合もすぐに動物病院で診てもらってください。

そのほか、ミズガメが食欲不振に陥る原因としては、代謝性骨疾患(クル病)が考えられます。上述の通り、ミズガメは日光(紫外線)を浴びることでビタミンD3を生成することができます。このビタミンD3にはカルシウムの吸収を助けるという働きがあるため、日光浴ができない環境下におかれたカメは、カルシウム不足から代謝性骨疾患を発症する場合があります。

代謝性骨疾患を患ったカメは、骨や甲羅がやわらかくなり、変形してしまいます。紫外線には皮膚や甲羅を殺菌し、皮膚病を防ぐ効果もあるので、定期的な日光浴(バスキング)を欠かさないようにしましょう。

そのほかの原因としては、食滞(便秘)や膀胱結石などが考えられます。この場合、排泄物の量や状態を毎日チェックし、日誌に残すことが早期発見・早期治療につながります。

カメは普段から動作がゆったりとしている上に、カラダの大部分が甲羅に覆われていることもあり、体調不良を見逃してしまいやすい動物です。「気づいた時には手遅れだった…」ということがないよう普段から正確な測定による食餌量の増減・体重・甲長・水質・脱水の有無(眼のくぼみ、皮膚の張り、口腔内の唾液の粘張性)・脱皮不全の有無・爪や甲羅の変形・冬眠の有無などを日誌に記録し、異常がみられた際にはすぐに動物病院に連れて行きましょう。

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