【PWJ熊本地震現地レポートVol.1】被災地で暮らすペットたちの“今”

【PWJ熊本地震現地レポートVol.1】被災地で暮らすペットたちの“今”

2016年4月14日21時過ぎに発生した熊本地震。4ヶ月以上経った今でも、現地には生々しい災害の爪痕が残っています。今、ペットやその飼い主さんたちはどのような生活をしているのでしょうか。今回は、現地で支援活動を行っていたNGO団体ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の協力を得て、被災地の“今”をお送りします。

  • サムネイル: PECO編集部
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熊本地震から4カ月、今だから知ってほしい"ペットと災害"

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日本は地震や津波、台風など、様々な災害に見舞われる機会が多く、ペットと共に被災する人も多いです。実際、東北大震災や、2016年4月に起きた熊本地震でも、多くの飼い主とペットが避難生活を送ることとなりました。

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愛するペットを守るため、備えをしているという飼い主さんも多いかもしれません。しかし、実際に避難生活を送ったことで見えてきた問題点もありました。熊本地震でペットや飼い主たちの避難生活を支えた、NGO団体ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)さんから、ペットと災害についてお伺いしました。

ペットと一緒に避難する"同行避難"を心掛ける

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まず、災害が起きたとき、飼い主はまず"同行避難"というものが推奨されています。同行避難とは、「ペットと飼い主が共に避難すること」で、環境省からも推奨されている避難の仕方です。

東北大震災ではこの同行避難の考えが浸透しておらず、「一時的避難」と言われてペットを家に置いてきたところ、避難が長引き、ペットが迷子になったりするケースが多発したそうです。しかし、東北大震災後に飼い主さんたちの防災意識が高まったことで、熊本地震では多くの飼い主さんたちが同行避難をしました。

しかし、"同行避難"はあくまで「ペットと一緒に避難する」ことで、「避難先でペットと一緒に過ごす」ことではないので、避難所では周りの人に配慮して、別々に暮らした人が多かったようです。ペットと一緒に過ごしたい飼い主さんの多くは、車中泊を余儀なくされました。

その現状を受け、PWJはペット連れ専用の避難所として、バルーンシェルターを設置したそうです。そこへ、車中泊をしている飼い主さんや、大型犬を飼っている、多頭飼育などが理由で避難所に入れなかった飼い主さんなどを受け入れました。

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設置されたバルーンシェルターにはフードやおやつなども支援されていました。

出典 http://peace-winds.org

テントの大きさは約10畳、36個のテントを設営しましたが、全ての飼い主さんを受け入れるのは難しかったようです。しかし、この支援によって多くの飼い主さんたちがペットと一緒に避難することができました。

PWJの避難所に来た人たちの中には、ペットと別々に被災したために同行避難することができなかった、という人もいましたが、ほとんどの人が同行避難できたそうです。

もし別々に被災しても、近所の人にあらかじめペットを飼っていることを伝えておいて、いざというときに様子を見てもらえると安心かもしれませんね。たとえ短時間の避難が予定されていても、必ずペットと一緒に避難するようにしたいですね。

被災地では、PWJのペット専用避難所のような"ペット可の避難所"が設営されます。ペットと離れ離れに暮らすことがないように、ペットを受け入れてくれる避難所の情報を常にキャッチするように心がけましょう。ネットは便利ですが、誤情報が出回ることもあるので、周りの人に聞くなどして、情報の整理を心掛けることが大切です。

ペットと一緒に避難できた人と、できなかった人の差

PWJの避難所に避難してきた方々は、ペットを飼っていない人に配慮し、通常の避難所で過ごすことができなかった人たちばかりです。しかし、だからといって悪いことばかりではなく、ペットのおかげで心が和らいだ、心の支えになったという方々も多く居たそうです。

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不安な今だからこそ、夜は一緒に寝てあげたい。そんな希望を叶えられる避難所を作ったことで、多くの飼い主さんから感謝の言葉をもらったことが励みになったとPWJは語っています。今後、ペットを飼う人への配慮がされた避難所が増えれば、より良い環境での避難生活ができるかもしれません。

そのためにも、飼い主さんは周囲の人への配慮をしましょう。ペットを飼っていない人への配慮ももちろんですが、飼っている人同士でトラブルがおきないように、しつけを見直したり、生活習慣を改めてみることも必要です。

ペットと一緒にいることができず、やむをえず別々に避難した飼い主さんたちもいました。毎日ペットホテルに預けた場合は、毎日数千円の宿泊代がかかるため、経済的に苦しいという声も届いています。避難所から出た後も、ペット不可の住宅やアパートが多くて、苦労しているという人も多いそうです。

避難所に行かずに、自宅避難をするというのも方法の一つです。家が倒壊する危険がなく、住める可能性があるなら別々に暮らすよりも自宅避難することも検討したいですね。常に備えを欠かさずないようにして、避難所に頼らなくてもある程度自立した生活を送れるようにしておくと安心です。

車中泊にひそむ危険 "熱中症"と"エコノミー症候群"に注意

PWJの避難所も受け入れ人数には限界があるため、引き続き車中泊を余儀なくされた飼い主さんも多くいました。PWJは車中泊をする場合「車内温度」に気を付けるべきだと注意を促しています。特に、熊本地震は外気温が上がり始める4月に起こったので、日中は夏日になることも多かったようです。

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人間が耐えられる温度でも、ペットには耐えられないことがあります。特に外気温が高い夏などは、ちょっと目を離しただけでも車内温度が急上昇します。短時間目を離す際もクーラーを欠かさないようにするなど、配慮が必要です。

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また、飼い主さんにとっても注意したい点があります。長時間座った態勢でいることで、呼吸困難や血液循環に支障をきたし、最悪の場合死亡する「エコノミー症候群」に注意しましょう。適度な時間で立ち上がり、運動をして血流が滞留しないようにしたいですね。

不足したのは"食料"と"トイレ" 防災バッグには十分な備えを

PWJが避難所を開設した当初は、一時預かり場所を運営していたこともあり、ペットシーツやフードが不足し、調達に苦労したようです。全国から支援物資が届き始めれば、フード不足は解消されましたが、ペットの好き嫌いによって特定の餌しか食べないという問題がありました。

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これらの問題を解消するためには、飼い主さんが防災バッグに日頃食べているものをストックしておくことが大切です。避難物資が届くまでに飢えたりすることがないように、1週間分ぐらいの貯蓄はしておきたいですね。ペットシーツの不足も目立ったそうなので、ペットシーツも多めに持っておきましょう。

避難後に問題になる"ストレス" 飼い主さんのケアが重要

いくら個別のテントが与えられても、いつもと違う環境はペットにとって強いストレスになるそうです。多くのワンちゃんに、吠える、人を噛む、ケージを嫌がる、お腹を下すなどの"ストレスサイン"と呼ばれる行動や症状が見られました。

猫ちゃんもストレスを感じると、食欲が無くなったり、元気が無くなるなどの症状が見られることがあります。ストレスにより体調を崩すこともあるので、飼い主さんは、いつもよりもペットたちの行動に気を配ってあげましょう。

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触れ合いはペットのストレス解消だけでなく、動物好きな人にとっては癒しにもなります。

出典 http://peace-winds.org

PWJでは、そんなペットたちのストレスを少しでも減らすために、外へ連れ出して散歩したり、匂いを嗅いでおやつを探すゲームや、撫でてあげる、といったことをしてあげたそうです。災害時は普段当たり前のことができなくなるので、少しでも安心できるように、こまめにコミュニケーションを取ってあげることが大切です。

今の避難所で足りていないのは"場所"と"人手"

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復興が始まった今ではペットの預かり所も併設

出典 http://peace-winds.org

災害から4カ月以上経った今でも、住宅の事情などで預かりを希望する飼い主さんは多いそうです。しかし、ケージの数が足りていても、預かれる頭数には限界があり、拡張するのも現状は難しいとのことです。更に、ワンちゃんの数が多いため、人手も足りていません。

PWJはペット専用の避難所の運営だけでなく、一般の被災者の方の支援なども行っているため、あまり人員を割くことができないそうです。一週間ごとにスタッフが交代して避難所の支援をしている他、ドッグトレーナーやボランティアの方の協力で避難所は成り立っています。

しかし、飼い主さんにもできることはあります。例えば他の家庭のワンちゃんの散歩を手伝ったり、簡単なお世話などを飼い主さん同士で協力して行えば人員不足も解決するかもしれません。受動的になるのではなく、ペットを守るために飼い主さん自身が行動することが、大切なんですね。

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取材先・制作協力

取材先

特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

熊本地震の発生直後、災害救助犬とレスキューチームを現地に派遣、行方不明者の捜索活動を行う。被災者支援においても、これまで見過ごされがちだったペット同行避難世帯を対象としたテント村、ユニットハウス村などを継続的に運営している。

制作協力

+ソナエ・プロジェクト

日常生活に「備え」という意識をプラスしようというコンセプトから生まれたプロジェクト。生活者目線で防災・減災に取り組んでいる。

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