どうすればうまくいく? 猫の多頭飼い。新入りの受け入れ準備から日常生活まで
一緒に遊んだり、猫団子をつくったり。多頭飼いは楽しさも倍増しますよね。でも一方で難しい面も多くあります。今回は、幸せな多頭ライフを実現するためのコツを詳しくご紹介します。
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長
多頭飼いする前に、知っておくべき4つのこと
1.じつは猫にとって、多頭飼いはあまり嬉しいことではない
猫は本来、単独で生活する動物。仲良くすごせる猫もいますが、新入りは基本的に縄張りへの侵入者であり恐怖の対象となります。これは新入りを群れのメンバーとして受け入れられる犬とはまったく違います。
猫にとって独りでいるのは普通のこと。むしろ多頭飼いは迷惑であると念頭におかなければなりません。頭数を増やす場合は、ストレスがかからないよう細かな気配りが必要となります。
2.経済的、時間的に負担と責任が大きくなる
多頭飼いには大きな責任が伴うのはもちろん、経済的、時間的な負担も大きくなります。決断前に次のことを確認しましょう。
◆頭数分の餌代、猫砂代、各種医療費を払えるか
◆全頭の健康管理がしっかりできるか(時間的余裕があるか)
◆同時に病気になっても治療できる経済的・時間的余裕があるか
◆家に十分なスペースがあるか(適正頭数=猫が自由に使える部屋数-1)
3.先住猫と新入りの相性が重要
犬のように飼い主がリーダーとして関係をコントロールすることができないため、猫の場合はお互いの相性が重要になってきます。
<良いと言われる相性>
◆母子関係
◆兄弟・姉妹
◆子猫同士
ほか、猫種としてはアメリカンカール、ノルウェージャンフォレストキャット、メインクーンなどは他の動物とも仲良くしやすいといわれていますが、こればかりは個体差が大きく関係しているので一概には言えません。
<悪いと言われる相性>
◆血縁関係のない成猫のオス同士
◆社会経験の乏しい成猫同士
先住猫の性格も相性に影響します。大らかで社交的な猫であれば問題はあまりおきませんが、神経質で他猫が苦手な性格であれば、数ヵ月、年単位の長期戦となる覚悟も必要です。
ちなみに保護団体から引き取る際はトライアル期間が設けられている場合も多く、その間に相性を見極めることができます。
4.新入り猫の健康状態は必ず確認
◆感染症キャリアの有無
感染症の種類によっては同居できません。獣医師と対処法を相談しましょう。
◆寄生虫の有無
寄生虫も先住猫にうつることがあるので、直接対面する前に必ず駆虫してください。
◆体質の確認
吐き癖がある、お腹が弱い、アレルギーの有無など。
新しく猫を迎える場合、必ず入手先(ペットショップ、ブリーダー、保護団体)に健康状態について確認を。また、入手先の健診では問題なくても、その時点では発症していないだけかもしれません。かかりつけの病院で再度診察を受けてから迎えるほうが安心です。家に入れたとしても、診断が出るまでは隔離して先住猫には会わせないようにしましょう。
新入り猫の迎え入れの準備物と手順
事前に必要な準備物
◆新入り猫専用の隔離部屋(ケージで代用も可)
◆ケージ
◆猫タワーなど高い場所、猫が一人になれる場所を確保
◆トイレ(頭数+1個以上)
◆新入り猫用の食器、キャリーバッグなど
※上記の準備物に加え、ケンカをしても流血しないよう、双方の爪は必ず切っておきましょう。
迎え入れの手順とコツ
迎え入れはたいてい順調にはいきません。シャーシャー威嚇が始まると飼い主さんはひるんでしまうかもしれませんが、あきらめず次の手順でじっくり取り組みましょう。
1.新入り猫は隔離部屋へ直行
すぐに先住猫と対面させず、隔離部屋にキャリーバッグごと直行してください。部屋に着いたらケージから出しましょう。
2.隔離部屋で数日過ごす
3日〜4日間は隔離し、それぞれのニオイがついた布やおもちゃをそれぞれに与えて存在を認識させます。この時フェリウェイ(心を落ち着かせるフェロモン剤)を部屋に散布してもよいでしょう。
3.隔離部屋でケージ越しに対面
新入りをケージに入れ、部屋のドアを開けます。無理強いせず、先住猫が自然に対面するようにしてください。1日に何度か繰り返し、少しずつ時間も長くしていきます。
4.隔離部屋でケージ越しに食事
ケージ越しでお互いが見える状態のなか、食事をさせるのも仲良くなるきっかけとなります。最初は難しくても繰り返し行って慣れさせましょう。
5.先住猫のテリトリーに、新入りをケージを入れて対面
今度は先住猫のテリトリーでケージ越しに対面させます。双方また威嚇が始まるかもしれませんが、時間が経てばおさまっていくはずです。
6.威嚇が止まないときは
いったんケージを隔離部屋に戻して、新入りをケージから出し、部屋のドアを数cm(猫が出ない程度)開けて数時間過ごさせます。この状態で、お互いに食事ができるようになれば、ドアをもう少し開けたり、開ける時間を増やしたりしましょう。
7.直接対面
上記6の流れで行うとよりスムーズです。お互い接近すればケンカになるかもしれませんが、怪我もなく、食事も排泄も普通にできていれば、猫たちに任せてもかまいません。飼い主が遊ばせて気をそらせてもよいでしょう。ただし、ケンカが本格的になったら、すぐにお互いが見えないところ(一人になれる場所)に移動させてください。相手の存在が恐いと印象づけられると食事も難しくなります。落ち着いたら、また、上記6からやり直しましょう。
8.上手くいった? いかなかった? の判断
もちろん一緒に仲良く過ごせれば大成功ですが、お互い強いストレスを感じず無難に過ごせれば、それも成功と考えてOKです。
迎え入れ後にも注意が必要
無事お迎えがすんだとしても、次のことに注意するようにしてください。
◆先住猫に気を配る
ただでさえ先住猫は縄張りを侵されたという不安感があります。新入りが来たことで先住猫の今までの生活スタイル(食事のタイミング、遊びの時間など)が崩れないように気を配りましょう。
◆去勢・避妊は必ず行う
予想外の妊娠を防ぐためだけではなく、予防医療の観点や、オス同士の不要な争いを避けるためにも行いましょう。
◆予防接種も必ず行う
多頭飼いの場合、一匹でも感染症にかかると次々にうつってしまうこともありますので、全員に予防接種を行うようにすることが大事です。
◆1頭1頭の健康をしっかり管理
多頭飼いだと難しくなりますが、できるだけ各猫の排せつ状態や回数をチェックしてください。また、グルーミングのし過ぎによるハゲがないかなど、ストレスサインを見逃さないようにしましょう。
◆食事を管理
フードを取り合うなどすれば食事内容(それぞれ別のフードを食べる必要がある場合)と量の管理が行き届かなくなります。食事中は目を離さず、各猫の食欲の有無にも気を配ってください。
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◆災害時の避難計画を練る
頭数が多ければ避難もそれだけ時間がかかります。猫をどう移動させるか、誰が連れて行くのか家族で決めておきましょう。キャリーバッグだけでなく、カートを用意しておけば猫の日常品も同時に運べて便利です。
多頭飼いの醍醐味はなんといっても一頭ずつの性格の違いを楽しめること。のんびりな子、せわしない子、繊細な子、まさに三者三様、いえ、三にゃん三様です。新たな面を見つけては、猫の魅力にますますハマってしまう。そんな毎日が待っているはずです。