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【日本犬に多い意外な病気】胆嚢のトラブル

【日本犬に多い意外な病気】胆嚢のトラブル

最近よく見られるようになった犬の胆嚢トラブル。しかし急性の場合を除くと、表立った症状が出にくいため、病気の発見が遅れることもあるそう。どのような症状が出るのか、治療や手術、予防法などについてうかがった。(Shi-Ba 2017年11月号 Vol.97より)

  • サムネイル: Shi-Ba編集部
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超音波検査と生化学検査の発達で胆嚢トラブルが発見しやすくなった

超音波検査と生化学検査の発達で胆嚢トラブルが発見しやすくなった

獣医学の進歩に感謝だね

手術で取り出した柴犬の胆石

手術で取り出した柴犬の胆石

開腹手術を受けた柴犬から摘出された胆石。石の大きさや形状は、粟粒大から小豆大くらいまで、さまざま。犬の体質や経年数によっても異なってくる。

胆石症、胆泥症、胆嚢炎などが有名だが、胆嚢粘液嚢腫は命に関わることがある!

胆嚢が破裂してしまうと大変危険。死に至る可能性も

肝臓で作られた胆汁(脂肪を分解する消化液)は肝内胆管から集まって胆嚢に一時的に貯蔵される。胆嚢内で粘液を分泌することによって胆汁の粘度を調整し、胆汁は総胆管という管を通り、十二指腸に排出される。このように大事な役割を担っている胆嚢だが、意外にも、胆嚢を除去しても生きていくことは可能だそう。ただし、
「胆嚢粘液嚢腫や胆嚢梗塞、交通事故などの外傷によって胆嚢が破裂すると、腹部に胆汁が漏れ出て腹膜炎を起こして死に至ることもあります」

また、胆管に胆石や硬くなった粘液が詰まると、胆汁が血液の中に逆流して全身にまわり、黄疸が出て深刻な状態になることもある。

胆嚢は風船みたいに膨らんだり縮んだりする。各犬の体格差もあるが、柴犬の胆嚢の大きさは大体、縮んでいる時で2cm弱、膨らんでいる時で4〜5cmだそうだが、胆管閉塞などを発症して異常がある場合は、人の頭ほどの大きさになることもあるそう。

胆嚢は肝臓と同様、自覚症状を訴えることが少ない臓器(別名「沈黙の臓器」とも)と言われ、症状が出なくても危険な状態に陥っていたり、病気を発見することがかつては難しかった。しかし、超音波検査と生化学検査の進歩によって、胆嚢のトラブルを早期に発見することが可能になった。

ちなみに最も多いのが胆石症や胆泥症。胆汁はもともとはサラサラしている液体だが、何らかのトラブルで成分が変化してドロドロの胆泥になったり、石のように硬い胆石が形成されてしまうことがある。しかし、これらが胆嚢内に溜まっていても、量などによっては症状が出ないこともあるし、溜まっているからすぐに治療が必要になるわけでもないそう。ただ、問題なのは胆泥や胆石が移動して胆管に詰まったり、流れる量によって胆管閉塞を起こすことがあり、その場合は犬が吐き気をもよおしたり、黄疸が出るなどの症状が出る。

胆嚢のトラブルは動物病院での超音波検査と生化学検査で発見することができる(レントゲン検査では大きな胆石しか画像に映らないので、超音波検査が基本)。これらの検査を含む健康診断でトラブルが見つかることも多い。

「超音波検査では、胆泥があるのか、胆石があるのか、胆嚢粘液嚢腫があるのかなどを確認できます。血液検査によるGGT(胆管上皮細胞などに存在する酵素)やCRP(体のどこかに炎症が起きていると高くなる数値)、総ビリルビン(赤血球中のヘモグロビンが壊れると発生。肝疾患や黄疸がある時に高くなる)などの数値の上昇具合なども併せ、総合的に診て判断します」

胆嚢のトラブルに関して知っておきたいこと

元気や食欲がない、熱がある
胆嚢にトラブルがあると、元気や食欲がない、よく吐く、熱がある、慢性の場合は体重が減少してくるなどの症状が見られる。

超音波検査と生化学検査の発達で胆嚢トラブルが発見しやすくなった


黄疸はこんな所にあらわれる!
胆嚢に異常があると黄疸が出る。白目、歯茎、耳の内側、お腹部分(毛があまり生えていない部分)は黄疸を確認しやすい場所。白い犬の場合は、体全体が黄色くなって見えるそう。

黄疸はこんな所にあらわれる!


犬の状態が改善しないのに「様子を見ましょう」と言われているなら、セカンドオピニオンの検討も

胆石などが溜まるのを予防するフードもある

検査の結果、胆嚢にトラブルがあった場合、かつては胆嚢を切除する手術が行われることが多かったそうだが、
「少量の胆泥や小さな胆石が認められた場合、手術するよりは内科的な治療で胆石などを排出させる方法をとったほうが、その後の経過が良いこともあります。ただし、胆嚢粘液嚢腫や胆嚢壊死、胆嚢破裂の場合は、胆汁が漏れ出て非常に危険なので緊急に開腹手術をし、腹部の洗浄を行うと同時に腐っている部分の除去などを行います。また、胆石が総胆管に詰まっている場合も手術が必要になることが多いです」

内科的治療では胆汁の分泌を促進する薬を飲んだり、それと併用しオッジ筋(十二指腸の下の方にある括約筋で総胆管や膵管の出口の筋肉を弛緩させ胆汁や膵液の十二指腸への排出を促進する)を開く作用のある薬を飲む。

さて、外科的手術に関して注意したいのは術後の合併症。そして、胆嚢を切除した後もまた胆管に石がつまり、黄疸が出るケースなど。胆嚢のトラブルに縁がなかった犬も、胆嚢に関して要観察と言われている犬も、胆嚢の手術をした犬も、最低年に1回の超音波検査を含む健康診断を受けるのがオススメだ。胆嚢梗塞や胆嚢炎を除いては、1年の間に胆嚢の状態が急変するということは比較的少ないとのこと。また、少し数値が悪くても、薬を飲むほどではないケースもあり、このような場合、胆石が溜まりにくいフードを使って予防していく方法もある。

ちなみに、胆石や胆泥が溜まりやすくなる犬の年齢は2歳以上。脂肪分やコレステロールが多いゴハンを食べているとなりやすいそうだが、犬の体質によっても異なり、同じフードを食べても胆石が溜まらない犬もいれば、代謝異常により胆石や胆泥が溜まりやすいケースもあり、一概には言えないそう。うちの犬はヘルシーなゴハンをあげているから大丈夫、と油断できないのも胆嚢トラブルで注意したい点だ。

いずれにせよ、愛犬に異変が見られたら、超音波検査を行い、獣医師から納得のいく説明を受けよう。何ヶ月通っていても「様子を見ましょう」と言われ犬の症状が改善しないなら、セカンドオピニオンも検討するといいだろう。

健康診断は漫然と受けるのではなく、愛犬のウィークポイントをしっかり把握!

脂っぽい食べ物はやっぱ控えよう

脂っぽい食べ物はやっぱ控えよう

年に1回まる子の健康診断に行っているが、胆嚢のトラブルが健康診断のエコーで発見しやすい、という話を野矢先生から伺って身が引き締まる思いがした。というのも、数年前に本誌のモデルとして大学病院で健康診断を受けた時、そして今年の健康診断でかかりつけの獣医師から「胆嚢の数値が少し気になるけど他の数値は心配ないから、何か異変があったらすぐ診せてね」と言われていたからだ。まる子があまりにも食欲旺盛で元気なので、飼い主としては「ふ~ん、胆嚢かぁ~。でも胆嚢ってどんな病気なのかなぁ~」と暢気に構えていたのも事実。

恥ずかしながら、健診のたびに毎回説明を受けるGGTとかCRPなどの数値についても、特別異常な値は出ていなかったので、なんとなく聞き流していたことを猛省した。いまだに子犬に見られるとはいえ、まる子も10歳。次の健診では、検査結果を聞く際にその内容をすべて把握し、今後の暮らしに十分役立てるべく、予習をしておこうと痛感した。

今回の教訓

年1回の超音波検査を含む健康診断をしているだけで、胆嚢トラブルはかなりの予防ができる!

年1回の超音波検査を含む健康診断をしているだけで、胆嚢トラブルはかなりの予防ができる!

「お互いに年だから、健診は必須だね」
「家族みんなで長生きしようね」

Text:Mari Kusumoto Photos:Minako Okuyama

監修:野矢雅彦先生
ノヤ動物病院院長。日本獣医畜産大学卒業後、1983年よりノヤ動物病院を開院。著書に『犬の言葉がわかる本』(経済界)『犬と暮らそう』(中央公論新社)など多数。

ノヤ動物病院/埼玉県日高市上鹿山143-19
TEL:042-985-4328
http://www.noya.cc/
※毎月第2週の日曜日14時~15時に、無料の歯磨き教室も行っている。電話にて要予約

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