英国北部、スコットランドはウイスキーの産地として有名です。その中でもグレンタレット蒸留所は、1775年に創業された由緒ある蒸留所で、近年ではウィリアム王子夫妻や著名な英国人俳優も多く訪れています。
蒸留所の看板猫のうちの1匹、タレット。
蒸留所内を歩いたり、そばにある森や川に遊びに行ったりします
(写真・石井理恵子)
さて、蒸留所では材料の麦芽をネズミから守るため、昔からウイスキーキャットと呼ばれる猫を飼うところが多くありました。
タレットの相棒、グレン。
蒸留所でスティルマンとして働く、イアンさんと
グレンタレットには、その生涯で28899匹もネズミを捕まえギネス記録にも載った伝説の猫、タウザーがいました。その後、何度か代変わりして、現在はグレンとタレットという2匹の猫たちがその役目を引き継いでいます。
クリーム系の毛色をしたグレンとキジトラのタレットはどちらも近くの農場からやってきて、もう1年半(6月現在)。2匹はとても仲が良く、やってきてからすぐに環境に慣れたそうです。
ウイスキーを熟成させる、樽の上も軽々と歩きます
この蒸留所は日本でも愛飲家の多い、フェイマスグラウスというウイスキーで有名です
昔よりはずっと管理の行き届いた蒸留所では、タウザーの記録にはたいてい及びそうもありませんが、2匹はネズミ退治をし、蒸留所を訪れるお客さんの接客もこなしています。どちらかというと、グレンの方が人懐こく、なでられるのが大好き。タレットはハンティングに興味があり、自慢のつもりなのか、獲物をお客さんがよく通る屋外の特定の場所においていくので、毎朝スタッフがそれをチェックして片付けておくのだそう。
ネズミ捕りのギネス記録を持つタウザーの銅像は、蒸留所内でもひときわ目立つ場所にあります
(写真・石井理恵子)
ありし日のタウザー。
メスの猫で1963年から1987年まで活躍しました
(写真・石井理恵子)
スタッフの中でも2匹は特にスティルマンに懐いています。餌をくれるのは彼らだからです。スティルマンというのは、ウイスキーの材料を蒸留させるポットスティルという大きな器具が設置されたスティルルームで作業をする人のこと。この部屋は一年中稼働していて暖かいため、夏も涼しいスコットランドでは猫たちのお気に入りの場所なのです。スティルルームにはスタッフお手製の可愛い猫専用の入り口と階段がありました。
スティルルームに、猫たちのために特別に作られた入り口
2匹はショップにも顔を出しますが、めったにいたずらはしません。陳列していた缶を蹴り飛ばしたことはあっても、ガラス製品を壊したことはないそうです。暇なときは猫らしく、ショップの地下にクッションとブランケットで作られた猫スペースでぐうぐう寝ているのだとか。
蒸留所には観光客が見学できるビジターセンターとショップがあります
グレンタレット蒸留所
http://www.theglenturret.com
Twitter:@DrinkGlenturret
(文・石井理恵子/写真・荒木隆師)
Rieko Ishii
ライター兼エディター。雑誌編集者を経て主にペット、映画、英国をテーマに原稿を執筆。
著書は『鉄道ねこ』『パブねこ』(新紀元社)、『美しき英国パブリック・スクール』(太田出版)他多数。
現在2匹の保護猫と同居。