4年前、フランス西部ブルターニュ地方の街レンヌから『ねこのえいが』の撮影のために来日していた、ティエリさんとセリーヌさん。彼らは猫の寺として有名な豪徳寺をはじめ、宮城県田代島や福岡県相島等の猫の島、招き猫生産量日本一を誇る愛知県常滑市はもとより、猫の街として知られる谷中、殺処分ゼロを目指すネコリパブリック岐阜店や猫カフェ等々ありとあらゆる場所で様々な人に取材をし、我々日本人の猫愛を浮き彫りにした。
思い出の撮影地・谷中にてアイスでカンパイ!
当時、偶然取材先で彼らと遭遇した私は、猫話で盛り上がると、お互いすぐに意気投合してしまった。「いつでもうちの猫に会いに来てね!」とは言ったものの、まさか自分がその場で彼らから取材の依頼を受けるとは……。
それ以来ずっと映画の完成を待ちわびていた。苦労して編集した『ねこのえいが』改め、『Histoires de chats japonais 』がついに完成し、二人は4年ぶりに再来日を果たしたのだった。フランスの法律では海外で映画を公開する場合、撮影の1年前に申請しなければならないそうで、残念ながら二人の映画は日本での劇場公開はないものの、YouTubeで誰でも観ることができる
わが家の珊瑚君も映画初出演(映画より)
大の日本びいきの彼らの日本との最初の出会いはアニメだったそうだ。フランスでは『GOLDORAK 』として放映され大人気だったという、永井豪原作の『UFOロボグレンダイザー』を初めて見たティエリさんは「あれにはブッとんだよ」と振り返る。セリーヌさんは『キャンディ・キャンディ』や『キャプテン翼』を見て育ち、二人とも映画『千と千尋の神隠し』をはじめジブリ作品が大好きだという。そんな彼らが初来日した際にまずびっくりしたのは、巷に溢れる〝猫〟の姿だったという。「とにかくありとあらゆる猫グッズや猫キャラクターがあふれ、猫カフェや看板猫のいるお店や猫の島まであって、一気にテンションが上がったよ」とのこと。セリーヌさんが「フランスでは猫はあくまで猫なの。それ以上でも、それ以下でもないけれど、日本では猫は特別な存在なんだと感じたわ」とほほ笑む。当時レンヌでテレビ局の映像編集の仕事をしていたティエリさんと、カメラマンのセリーヌさんは「今度日本に行ったら猫の映画を撮りたいね!」と一気に盛り上がったという。「毎朝5時に起きて撮影をするのはかなりの重労働だったわ。でも、おかげでとてもいい体験をさせてもらったし、日本の猫友もたくさん出来たのよ」とセリーヌさんは笑う。
焼き物の街・常滑を見守る「とこにゃん」(映画より)
猫を見ると、みんな笑顔に!(映画より)
もともと猫好きの二人は、現在ユキちゃん(4歳♀)とその子どものシュゼットちゃん(3歳♀)と同居中。ユキちゃんはある日突然庭に現れ、キッパリと「今日からここで暮らします!」と宣言し、さっさと住み着いてしまったというからびっくりだ。さらに驚いたことに彼女はそれからひと月後に子猫を生み、その内の1匹がシュゼットちゃんとのこと。「ユキにはまんまとやられたよ。きっと出産する場所を探していたんだね。でも、母娘なのに2匹はあまり仲が良くないんだよ」と笑うティエリさん。日本では猫は完全室内飼いが推奨されているが、フランスでは完全室内飼いの猫と、家と外を自由に出入りする猫が半々ぐらいだそうだ。自宅には猫グッズを飾るコーナーもあるというティエリさんとセリーヌさんの猫愛がつなぐ〝猫友の輪〟は、今後も国境を超えて広がっていくに違いない。
セリーヌさん&ユキちゃん(左)と、ティエリさん&シュゼットちゃん(写真提供:Dimitri Paulin)
(写真・文 平野敦子)