アジアとヨーロッパの架け橋として知られるトルコという国名を聞き、すぐに“猫”とピンときたなら、あなたは立派な猫情報通かもしれない。
というのもトルコは猫の楽園としても有名だからだ。
世界遺産にも負けない凛々しさに感動!
2017年に公開された、イスタンブールの猫たちを追ったドキュメンタリー映画『猫が教えてくれたこと』でも、自由気ままに暮らす猫たちと人間のほどよい距離感が描かれていた。
イスラム教の開祖であるムハンマドは大の猫好きとして知られ、国民の90%以上がイスラム教徒のトルコでは、猫は神聖な生き物とみなされているとか。
エフェソス遺跡でスヤスヤお昼寝中
そんな能書きは別にしても、トルコでは国中至る所に猫がいて、たいていはどの猫も人を怖がることなく、声をかけると大喜びで犬のようにこちらに向かって突進してくるのに驚く。
彼らは人間に対して警戒心ゼロなのだ!みんなとても人なつこく、グリグリと頭を人の体にすりつけ、手を出すと大喜びでスリスリして熱烈歓迎してくれる。
時には「さぁ、遊べ、ボクと遊べ、今遊べ!」とばかりに尻尾をピンと立て、遊ぶ気満々の顔でこちらをじっと見つめている猫に出会うこともある。
ラレリモスクの中庭で優雅に暮らす美猫さん
それもそのはずで、モスクではかなりの高確率で多くの猫たちが暮らしており、中庭にはちゃんとエサ置き場と猫ベッドが完備され、心地良い猫の家と化しているのだ。
私がモスクの中庭で猫たちにかまっていると、通りがかりの人々がニコニコしながら挨拶してくれる。
トルコ人のガイドさん曰く「トルコの人は動物に優しいね。飼い猫も野良猫も分け隔てなく可愛がるしね。中には猫嫌いの人もいるけれど、決して邪険に扱ったり、イジメたりはしないよ」とのこと。
スレイマニエ・モスクのいたずらっ子君
トルコでは猫だけでなく犬もほぼ放し飼い状態で、首輪を付けた飼い犬も、そうでない野良犬も道を自由に闊歩し、時には堂々と道の真ん中で寝転がって障害物と化し、「しょうがないなぁ……」と人間の方が犬をよけて通ることも。
モスクだけでなく、イスタンブールのような大都会でも街の至る所に猫のエサ置き場が用意され、洋服店の入り口に陣取って堂々かりに頭やアゴの下を撫でたり、優しい声で話しかけたりしている光景を何度も見かけた。
猫たちに朝食を配る警備員のお兄さん
そして極め付けはエフェソスやトロイなどの有名な世界遺産でもたくさんの猫たちが暮らしていること!
さすがに遺跡内の猫たちは不妊手術をして管理されているようだが、古代遺跡を枕に、涼しい顔でお昼寝を決め込んでいる猫たちの優雅な姿についつい笑みがこぼれてしまう。
これを猫の楽園と言わずしてなんと言おう!?
(写真・文 平野敦子)
Atsuko Hirano
猫&映画専門フリーライター。
著書に『新版 人に育てられたシロクマ・ピース』『ふたつの名前で愛された犬』(学研パブリッシング)。
現在猫2匹と同居中。国内外を飛び回り、猫や猫好きの人々と交流する旅を続けている。
去年の旅行回数17回。