【獣医師監修】犬の「血尿」はストレスが原因?中毒や結石による腎不全での血尿に要注意!
愛犬の尿に血が混じっているのを見つけたら、どう対処しますか? 実は血尿が症状として出る病気には、様々なものがあります。中には愛犬の命に関わる病気もあるので、油断は禁物。早期に治療が開始できるように、血尿に関する知識を頭に入れておきましょう。
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目次
病気ではない出血は発情出血のみ!?
血尿とは、尿に血液が混ざっている状態。血尿の症状を示す病気は、決して少なくありません。
結論から述べると、血尿を飼い主さんが見つけて、病院に行かないでいいのはメスの発情期の出血(人間の生理のようなもの)だけ。
その他の原因が疑われて血尿がある場合は、なるべく早めに動物病院を受診してください。
最初に、メスの発情出血によって尿に血が混じるケースを解説しておきましょう。
避妊手術をしていないメスの愛犬と暮らしている場合、個体差はありますが、だいたい生後7ヵ月頃に最初の発情期が訪れます。
陰部から出血をするのは、数週間。
チワワなどの超小型犬では、発情期の出血量が少なく、陰部を自分で舐めてしまうので飼い主さんが気づかないことも。
けれども多くのケースは、ポタポタと床やソファの上などに血液が垂れ、トイレシーツに残った尿にも血液が混じるでしょう。
病気による血尿との違いは、発情期には陰部が腫れていること。腫れている状態への違和感から、頻尿になる犬が多いかもしれません。
ヒート(発情)中には独特のフェロモン臭もあります。飼い主さんは、血尿が発情によるものか否か、まずは確認を。
犬により多少の周期の差はありますが、多くは半年周期で発情出血を繰り返すことも知られています。
未避妊のメスでは、子宮蓄膿症にかかると、陰部から血の混じった膿の塊が出るケースがあり、それを血尿だと思う飼い主さんも少なくないようです。
犬の血尿の原因となる病気(1)「尿路結石症」
犬の血尿の原因となる病気は、尿路結石症、膀胱炎、腎臓疾患、泌尿器の腫瘍、生殖器疾患が考えられます。
若犬から高齢犬まで年齢を問わず、犬の尿路結石症はめずらしくない疾患のひとつ。
腎臓、尿管、膀胱、尿道といった尿の通り道を「尿路」と呼び、そのどこかに結石ができると、排尿の際に尿路を傷つけて血尿が出ます。
腎臓と膀胱に結石ができると血尿が出やすくなり、飼い主さんが肉眼で尿内にキラキラした結石を見つけられるケースもあるでしょう。
動物病院では、レントゲン検査やエコー検査で結石の有無を確認したり、顕微鏡検査で結晶の種類を調べたりします。
尿管と尿道に結石が詰まると、腎臓の機能が落ちて命に危険が及ぶことも。尿路結石症を軽く考えないようにしましょう。
尿路結石の場合、一般的には抗生剤と療法食で治療を行います。大きな結石や、溶解しないタイプの結石に関しては、外科手術で取り除く必要があります。
犬の血尿の原因となる病気(2)「膀胱炎・膀胱腫瘍など」
頻尿などの症状が尿路結石と似ている膀胱炎も、血尿がよく出る疾患。
犬では細菌感染が原因の膀胱炎が多く、メスがかかりやすいのも特徴です。
膀胱だけでなく腎臓まで細菌感染を起こしていると、発熱を伴うことが多い腎盂腎炎が疑われます。
いずれも抗菌剤での治療が一般的。
ただし、血尿が収まったからといって完治したとは限りません。
獣医師の指示に従って服薬を続けないと、膀胱炎の再発を繰り返し、膀胱がんになるリスクが高まるので要注意です。
膀胱腫瘍も、頻尿や血尿といった症状が膀胱結石や膀胱炎に似ています。
膀胱炎や尿路結石は尿検査などで見つけられますが、膀胱腫瘍は超音波検査が大きな手がかりになります。
膀胱腫瘍はほとんどが悪性です。発見されたら治療は膀胱を摘出する外科手術が効果的ですが、術後の管理が大変なため、獣医師と相談しながら治療法を選ぶことになるでしょう。
犬の血尿の原因となる病気(3)「急性腎不全」
数時間のうちに体調が悪くなり死に至る危険性のある、急性腎不全。
その症状として、元気消失のほか、食欲不振、嘔吐、下痢、血尿、血便などが挙げられます。
急性腎不全になると、必ず血尿が出るわけではありません。
ただし、尿路結石によって腎臓に負荷が増して急性腎不全が引き起こされた場合、血尿が出るケースが多いでしょう。
ブドウやレーズンやタマネギなど、犬が食べると中毒を起こすものを摂取してしまい、急性腎不全になることもあります。
急性腎不全から命を救うには、早期の処置と治療開始が欠かせません。
血尿だけでなく、急性腎不全を疑う症状が見られたら、一刻も早く動物病院へ向かってください。
犬の血尿を予防するには?「ストレス・食事」
血尿の症状を伴う病気から愛犬を守るには、日々の生活管理がとても重要になります。
尿路感染症や尿路結石症のリスクは、細菌に負けない免疫力を保つのが大切。ストレスを減らすために、散歩や飼い主さんとのコミュニケーションの時間を十分に確保して、安心して生活できる環境を提供してあげましょう。
腎臓に負担のかかる食事も避けたいものです。
獣医師やペットの栄養管理士といったプロに相談しながら、適切な食事管理を心がけてくださいね。
尿路疾患にかかりやすい場合、尿を酸性にするサプリメントや療法食をうまく活用するのも、予防策のひとつ。
愛犬に水分をなるべく摂らせることも、尿路疾患の予防策として効果があります。
あまり水を飲まない犬には、チキンスープなどを足してあげたり、水分量の多いウェットフードを取り入れるなどして工夫をしてあげるのがおすすめです。
犬の「血尿」まとめ
血尿のほとんどが、愛犬の病気のサイン。
日頃から愛犬の尿の状態をよく観察すると同時に、頻尿などの行動の変化にも早く気づいてあげたいものです。
未避妊メスの発情期以外で血尿が見られたら、なるべく早期に動物病院を受診してくださいね。
血尿の原因になっている病気が特定できれば、病気によって異なる適切な治療をすぐに開始できて、重症になる前に愛犬を救ってあげられます。
監修者情報
箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科
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ライタープロフィール
臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。
コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally