【獣医師監修】犬の寄生虫コクシジウムに感染したら? 予防法は?
コクシジウムは犬の消化器系に寄生する原虫です。 感染したら、どのような症状が出現するのか。治療法はあるか。 とくに子犬を迎えたばかりの飼い主さんは、知っておきたい知識です。
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コクシジウムとは
コクシジウムは、細胞1個で成り立っている原虫の一種です。
とても小さく、人間が肉眼で確認することはできません。
コクシジウム類と呼ばれる原虫には、多くの種類があります。
その中のイソスポラ類というグループに属する数種類の原虫は、犬や猫に寄生することがわかっています。
犬から猫に、猫から犬に同じ種類のイソスポラ類が感染することはありません。
ただし、寄生する宿主の体内環境がコクシジウムの繁殖に適していれば、細胞分裂によって増殖していくので注意が必要です。
コクシジウム(イソスポラ症)に感染したらどんな症状が出る?
コクシジウムに感染して発症をすると、コクシジウム症やイソスポラ症などと呼ばれます。
すでにコクシジウムに感染している犬の便から排出されたコクシジウムを舐めたりして摂食する、コクシジウムの待機宿主となっている動物などを捕食するといった行為により、犬はコクシジウムに感染します。
やっかいなのは、成犬では感染していても症状が出ないこと。
そのため、ブリーダーの犬舎やペットショップなどの多数の犬がいる環境で、成犬の便から子犬へと感染が広がる危険性があります。
発症して症状が出るのは、主に生後数ヵ月以内の子犬です。
5~7日の潜伏期間を経て、水様性の下痢が始まります。
同時に食欲が減り、元気がなくなり、体重の低下が見られるでしょう。
軽度の発熱や、粘血便が生じるケースもあります。
感染から3週間以上が過ぎると、症状は改善されてきますが、抵抗力の弱い子犬がコクシジウム症にかかって衰弱すると、命を落とす恐れもあります。
とくに、免疫力が落ちた状態ではウイルスや細菌の二次感染を起こしやすくなり、コクシジウム症以外の感染症を併発した場合、重症化して死亡する危険性が高まるので、早期に発見して治療を開始しましょう。
コクシジウムの検査と診断方法
コクシジウムの感染が疑われて動物病院に行く際は、必ず愛犬の糞便を採って持参してください。
獣医師には、診察時に以下のことを伝えられるようにしましょう。
・下痢が始まった時期
・下痢の頻度
・子犬を迎えた場所とその環境
・ドッグランなど犬が多数出入りする場所を、1週間以内に訪れたかどうか
・食欲は落ちていないか
・下痢のほかにどんな症状があるか
・元気を消失していないか
問診によってコクシジウム症(イソスポラ症)が疑われた場合は、獣医師は糞便検査をして診断を下します。
なお、コクシジウムのひとつのグループであるクリプトスポリジウムに感染した場合は、発症をすることは少ないと考えられています。
クリプトスポリジウムに感染しても、免疫機能が正常な犬では自然治癒すると言われています。
コクシジウム症の治療法
コクシジウム症(イソスポラ症)には、一般的にサルファ剤と呼ばれる薬物を用いて治療を行います。
完全に駆虫できるまで、数週間の投与が必要になるでしょう。
下痢や衰弱や貧血といった個別の症状による対症療法もあわせて行い、症状の改善と体力の回復をはかります。
コクシジウムの寄生は予防できる?
コクシジウムの寄生を予防できるワクチンはありません。
ただし、感染している犬がペットショップやブリーダーの犬舎にいたとしても、糞便を速やかに片づけるようにすれば、感染を防げる可能性が高くなります。
イソスポラ類は、糞便内に混じって排出された直後は未成熟の状態で、ほかの動物への感染力を持っていないからです。
同居動物がいる場合は、食器類やトイレの消毒も積極的に行い、なるべく飼育環境を衛生的に保ちましょう。
まとめ
コクシジウムは犬から猫や人間へは感染しません。
けれども、成犬がコクシジウムに感染していても無症状のまま糞便に排出され、比較的容易に犬から犬へと経口感染をするので要注意です。
子犬では重症化して、最悪の場合は死亡する危険性も。
愛犬に下痢が見られたら、早い段階で便を持参して受診をし、寄生虫の種類を特定する検査をうけたのち適切な治療を開始しましょう。
監修者情報
箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科
ライタープロフィール
臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。
コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally