【獣医師監修】真ん丸ほわほわビション・フリーゼと快適に暮らすコツ
白くてふわふわで、丸くカットされた顔に真っ黒い鼻と目が印象的なビション・フリーゼ。 人気が急上昇中のビション・フリーゼについて、歴史や被毛の手入れのコツ、注意すべき病気など多角的に紹介します。
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目次
ビション・フリーゼの歴史
ビション・フリーゼの原産国は、フランスとベルギー。
けれどもその起源は、地中海に浮かぶカナリア諸島のひとつである、テネリフェにあると考えられています。
その理由は、ナポレオン3世の時代には、「ビション・テネリフェ」という名でこの犬種が広く知られていたからです。
ビションというのは、フランス語で小型犬や小型のウォーター・スパニエルを意味するバービションを短縮した言葉。
そのため、小型のプードル(トイ・プードルやミニチュア・プードル)、ボロニーズ、マルチーズなども、ヨーロッパでは「ビション・ファミリー」や「ビション系」の犬と言われます。
地中海地方で飼育頭数が減ったことや、第一次と第二次世界大戦で絶滅しかけたのち、この犬種を愛するフランスとベルギーの繁殖家が心血を注いで復元に努めたことから、原産国がフランスとベルギーになっているのです。
1932年にはベルギーで、1934年にはフランスでこの犬種が初めて登録され、1978年に、現在のフランス名であるビション・フリーゼとなりました。
フリーゼとは、巻き毛の意味。その名のとおり、ホワイトのコークスクリュー状のゆるい巻き毛が、ビション・フリーゼの最大の特徴と言えるでしょう。
アメリカに渡り、綿菓子のような「パウダーパフ」と呼ばれるトリミングが始められた1960年代終盤から、一躍、人気犬種の座に躍り出て現在に至ります。
ビション・フリーゼの性格と特徴
ビション・フリーゼは、パウダーパフのカットスタイルによって大きく見られがちですが、体重は5kgほど、体高は25~29cmを理想としていて、ペキニーズと同じようなサイズと考えればわかりやすいでしょう。
毛色はピュアホワイトのみ。シングルコートなので、抜け毛は多くありません。
神経質さもなく、それほど吠えず、温和な性格です。
かといっておとなしすぎず、性格は明朗快活で社交的。運動も大好きで、トレーニングにも意欲的です。
そう考えると、旅行のパートナーとしても申し分がない犬種と言えるでしょう。
体格もがっしりしていて頑丈なので、赤ちゃんや幼児とも楽しく遊べる犬種です。
ビション・フリーゼの平均寿命は?
日本の家庭犬の平均寿命は、約14歳と言われています。
ビション・フリーゼは小型犬なので、平均よりも少し長めの寿命を持ちます。
13~16歳が、ビション・フリーゼの平均的な寿命と考えて良いでしょう。
ビション・フリーゼのかかりやすい病気
ビション・フリーゼは、以下の病気に比較的かかりやすい傾向があります。
・膝蓋骨脱臼(パテラ)
小型犬全般に見られる、膝のお皿がはずれる病気。
遺伝的な素因が関係すると考えられる疾患のひとつです。
若齢から発症する可能性があるので、ワクチン接種の際などに、獣医師に膝の状態を定期的に触診してもらうようにしましょう。
軽度のグレード1から重度のグレード4までの段階に分けられます。
自然治癒することはありません。
外科手術による治療が選択された場合、膝周りの関節が変形する前の若齢のうちに手術をしたほうが、シニア期以降の愛犬の生活の質を落とさずに済むでしょう。
・外耳炎
ビション・フリーゼは耳の内側にも毛が生えていて垂れ耳なので、外耳道の通気性が悪くなりがち。
そのために真菌のマラセチアや細菌のブドウ球菌などが増殖して、外耳炎を発症しやすいので注意が必要です。
愛犬の耳にいつもと違う匂いを感じたり、耳垢が増えたと感じたら、なるべく早めに獣医師に相談してください。
外耳炎の治療は、洗浄と点耳薬によって行われます。
・眼疾患
ビション・フリーゼの特徴であるパウダーパフのカットスタイルにより、被毛が目に入ったり、目に入った被毛を犬が前足でこすって取ろうとして、眼が傷つくことが少なくありません。
愛犬の目ヤニや涙やけが気になるようであれば、結膜炎や角膜炎などを起こしている可能性があります。
その場合は動物病院を受診して、眼疾患の有無を調べてもらうようにしましょう。
ビション・フリーゼの健康生活の秘訣
ドッグスポーツやアジリティーの競技会場で目にすることがあるほど、ビション・フリーゼは活発さを備えています。
そんなビション・フリーゼの心の健康をキープするために、愛犬が満足感を感じる程度の運動量は提供してあげたいものです。
1日1~2回、1回につき20分以上は散歩しましょう。
運動神経が良いとはいえ、スポーツのしすぎや滑る床での生活は、膝蓋骨脱臼の発症や悪化のリスクを高めるので厳禁です。
被毛が絡まないように、日ごろの手入れも重要です。
スリッカーブラシで毛玉をほぐしたら、コームを使って被毛を梳かします。
スリッカーブラシの先端は尖っていて皮膚を傷つける恐れがあるので、直接皮膚に当てないのがポイント。
飼い主さんとのスキンシップタイムの一環として、やさしくブラッシングをしてあげてください。
ビション・フリーゼとの旅行での必須アイテム
ビション・フリーゼはヨーロッパ貴族の抱き犬として広まった犬種ですが、愛玩犬の中では活発なタイプ。
そのため、ドライブ中に車内を動き周り、ブレーキがかかった際に転倒してケガをすることがあります。
ビション・フリーゼとドライブ旅行に出るならば、ケージを持参して、運転中はケージに入れておくようにすれば安心です。
子犬のうちから、ケージ内でご飯やおやつを食べさせるようにするなどして、慣らしておきましょう。
実はイタズラによる誤飲や破壊なども、ビション・フリーゼにはしばしば起こり得ます。
旅先でも、飼い主さんが客室内で食事をしている際や入浴に出た際に、愛犬にケージに入っておいてもらうのが良いかもしれません。
白くてカールしている被毛がモップのような役割を果たし、汚れやホコリや枯れ葉などが付着して目立ちやすいのもまた、ビション・フリーゼの宿命のひとつ。
旅行にも、使い慣れたグルーミングセットは忘れずに持参を。
水を使わないで済むタイプのシャンプーも、旅先では重宝します。
ビション・フリーゼの価格相場は?
ビション・フリーゼの価格相場は、10~40万円。
値段に幅があるのは、ドッグショーでチャンピオンになった親犬の直子では、一般的に高額になるからです。
まとめ
陽気でやさしく、運動神経も頭脳も良い。
そんなビション・フリーゼは、子供の遊び相手からシニア世代の旅行のパートナーまで、幅広い年代層のどんなニーズにも応えてくれる、理想的な家庭犬と言えます。
綿あめのような愛らしい見た目は、日常や旅先で撮る写真映えもバッチリ! ビション・フリーゼと暮らせば、笑顔あふれる思い出をたくさん作れるに違いありません。
監修者情報
箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科
ライタープロフィール
臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。
コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally