【獣医師監修】寒さに強いサモエドとハッピーな大型犬ライフ
ふわふわの長いコートが印象的な、サモエド。 気品あふれる風貌が魅力のサモエドと、憧れの大型犬ライフを充実させるために重要なポイントは? サモエドの歴史、かかりやすい病気、日々の管理のコツなど、幅広い知識を心得ておきましょう。
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暖房代わりとしても活躍したサモエド
サモエドは体高が50~60cmほどと、ラブラドール・レトリーバーと同じくらいの大きさをしています。
ラブラドール同様、中型犬として扱われることもありますが、ホワイトやクリームの膨張色の被毛がふわふわとしていて、ラブラドールよりも大きく見えるかもしれません。
ロシア北部とシベリアのサモエド族が、犬名の由来。
サモエド族が主にそり犬として、家族のように大切にしていた犬種です。
極寒の冬に飼い主自身が体を温めて眠るため、暖房代わりとしてもサモエドは重用されたようです。
サモエド族とともに数ヵ月間を過ごしたイギリス人の北極探検家である、アーネスト・キルバーン・スコット氏が自国に持ち帰った犬が、現在のサモエドの基礎犬となりました。
もともとは、ホワイトにブラウンかブラックの毛色が混じったサモエドの祖先犬もいて、それらは生息地域の南部ではトナカイ猟の際に使われていたようですが、イギリスでホワイトやクリームの薄い毛色の犬種に固定化されました。
サモエドの性格と特徴
サモエドは、スピッツの仲間です。
スピッツという言葉は、ドイツ語で尖っていることを意味します。
その名のとおり、サモエドも尖った口吻や立ち耳など、スピッツ族の特徴を持っています。
口角がわずかに上向いてカーブを描いている表情は、サモエド・スマイルと呼ばれ、この犬種の特徴のひとつです。
ふわふわの白っぽい毛は、吹雪から身を守るため。分厚いダブルコートを持っているので、日本のような温暖湿潤気候は本来苦手です。
そり犬として、あるいは暖房の役目を果たす家庭犬として暮らしてきた背景から、サモエドは人にもほかの動物にもとても友好的で愛情深い犬種です。
子供の良き遊び相手にもなってくれることでしょう。
攻撃性もないので、赤ちゃんがいる家庭でも安心でき、初心者が飼うにも適した大型犬と言えます。
ただし、一方で人のそばにいつもいたいという欲求が強いので、屋外飼育には向きません。
独りにすると、ストレスから心因性の病気になってしまう可能性もあります。
サモエドの平均寿命は?
サモエドは、大型犬の中では小ぶりですが、小型犬よりも平均寿命は短め。
11~14歳位が平均的な寿命と考えられます。
サモエドのかかりやすい病気
サモエドは北方の犬種なので、日本での生活においてはまず、熱中症に注意が必要です。
特に子犬や老犬は熱中症にかかるリスクが高いので、サモエドの子犬を迎えて最初の夏は、万全の熱中症対策を講じましょう。
サモエドがハァハァと舌を出して荒い呼吸をしているのは、暑がっている証拠。
サモエドとの生活では、愛犬の舌がダラリと垂れないのをひとつの目安と目標に。
散歩では、保冷剤を仕込めるバンダナやハーネス、冷感タイプで通気性の良いウェアを装着させるほか、こまめな水分補給を。
あまりに高温多湿な日は、散歩を控える勇気も必要です。
悪天候の日でも元気があり余っているようであれば、室内ドッグランやプールに連れて行き、ストレス発散をさせると良いでしょう。
原産地との気候の違いから、日本では皮膚が蒸れて皮膚炎を発症するサモエドも少なくありません。
ふわふわの被毛に覆われていてチェックがしにくいですが、ブラッシングの際などに愛犬の皮膚の状態をチェックして、異変があれば早めに動物病院を受診してください。
ブラッシングをせずに抜け毛が体周りに残ったままだと、さらに通気性が悪くなり皮膚が蒸れやすくなります。
サモエドとの生活では、抜け毛を取り除くブラッシングは欠かせません。
大型犬の宿命として、関節炎になりやすいため、肥満にさせないように食事を適切に管理しましょう。
子犬のうちから滑らない床で生活をさせて、シニア期に入る6歳以降は激しすぎる運動はなるべく控え、関節に負荷がかからないようにするのも重要です。
シニア期になって後肢を地面に着けずに歩いていたら、前十字靱帯断裂を起こしている可能性があります。
また靱帯断裂を治療せずにいると、半月板損傷や変性性関節炎を発症する危険性も。
大型犬では温存療法よりも、外科手術による治療が選択肢となるケースが少なくありません。
最近では、予後が良好だと評判が高い、TPLOという術式による手術を行う動物病院も増えています。
サモエドとの快適な旅行と生活のヒント
サモエドはフレンドリーで穏やかな気質の犬種なので、旅行のパートナーとしても安心して同伴できるでしょう。
ただし、旅先でもブラッシングは必須です。
使い慣れた大型犬用の大きなブラシを持参するのを忘れずに。
白い被毛は汚れが目立つので、洗い流さないタイプの犬用シャンプーも携行すると便利です。
そり犬として長距離を歩いたり走ったりしていたサモエドとの生活では、毎日たっぷりと散歩をしてあげるのも大切です。
運動欲求が満たされないと、吠えることでストレスを解消しようとするサモエドも少なくありません。
人とのコミュニケーションを好む犬種なので、体の運動を豊富にさせてあげられない時は、トレーニングなどで脳トレをしてあげるのがおすすめです。
部屋におやつを隠して探させるノーズワークなども、サモエドが持つ作業意欲を満たせるでしょう。
サモエドの価格相場は?
サモエドはそれほど日本でポピュラーな犬種ではないので、価格相場は高めです。
30~50万円が平均的と言えます。
世界的にも値段が高い犬種として知られ、100万円以上するサモエドもめずらしくないようです。
まとめ
サモエド・スマイルという柔和な表情と淡い色から、やさしげな印象を与えるサモエド。
被毛のケアと豊富な運動は必要ですが、病気にもかかりにくく、性格も柔和で、初心者でも飼いやすい犬種と言えるでしょう。
監修者情報
箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科
ライタープロフィール
臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。
コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally