猫の黄疸と胆管炎・肝リピドーシス(脂肪肝):症状や検査・治療法について解説 | 動物医療センターPeco

この記事では獣医師監修のもと、猫の黄疸(おうだん)やその原因として多い「胆管炎」や「肝リピドーシス」について、その症状や検査・治療法について解説しています。動物病院に連れて行く前に参考にしてください。

記事の監修者
大野耕一の画像
大野耕一
動物医療センターPeco 院長 獣医師

黄疸(おうだん)とは?

黄疸とは皮膚や白眼が黄色くなる状態で、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。ビリルビンは、赤血球の中のヘモグロビンが分解されるときに作られ、肝臓に運ばれた後に、胆管という管を通って腸へ排泄されます。このビリルビンが肝臓や胆管の病気で通過できない場合、血液中で多くなって黄疸になります。

猫の黄疸の原因として多いのは?

胆管炎と肝リピドーシスの2種類

猫は犬にくらべて黄疸になりやすいと言われます。

猫で黄疸になりやすい疾患としては、胆管炎や肝リピドーシスと呼ばれる病気が多いです。このためこの2つの病気を鑑別することが重要です。

このほか、発症例はやや少なくなりますが、リンパ腫などの癌、猫伝染性腹膜炎による肝臓の炎症、胆石による胆管の閉塞なども考えられます。

猫で黄疸の原因となる代表的な病気
・胆管炎(急性、慢性)
・肝リピドーシス(猫の脂肪肝)
・胆管閉塞(胆管炎や胆石によることが多い)
・肝臓のリンパ腫
・猫伝染性腹膜炎
・膵炎
・慢性肝炎

黄疸の原因「胆管炎、肝リピドーシス」とは?

胆管炎

胆管という管の周囲が、肝臓の中あるいは外で炎症を起こすことを胆管炎といいます。

胆管とは

肝臓の中には「胆管」という小さな管がたくさんあり、これは少しずつ集まって太い管となり、最終的に1本の管(総胆管)となって十二指腸につながります。胆管には、肝臓で作られた胆汁という消化液が通ります。

肝リピドーシス

肝リピドーシスとは、猫の脂肪肝なのですが、食べなくなることで比較的急激に進行する脂肪肝です。人の生活習慣病としての脂肪肝とはやや異なります。


猫の胆管炎、肝リピドーシスの原因は?

胆管炎

胆管炎は大きく急性と慢性に分類されます。急性胆管炎は、腸から細菌が感染して炎症が起きることが多いと考えられています。

慢性胆管炎は、はっきりとした原因はよくわかっていませんが、急性胆管炎から、免疫の異常などが加わって起こることなどが考えられています。

肝リピドーシス

肝リピドーシスは食べないことが原因です。何かしらの原因で猫が食べなくなったときに、体脂肪が分解されて、エネルギーとして利用されるとともに、肝臓の中に脂肪が急激に蓄積していく脂肪肝です。

食べなくなる理由はなんでもよく、とくに胆管炎や膵炎、腸炎などが多いといわれています。

 発症しやすい品種や年齢は?

どんな年齢でも、そして雌雄を問わず発生が認められます。胆管炎は中年齢から高齢の猫にやや多く、肝リピドーシスは中年齢のやや太った猫に多いと言われています。


猫の胆管炎、肝リピドーシスの症状は?

胆管炎の症状

急性胆管炎では、元気、食欲の低下、嘔吐、下痢、発熱などの症状や黄疸が見られることがあります。慢性胆管炎では、同様の症状が緩やかに進行することや、腹水なども見られることがあります。

肝リピドーシスの症状

肝リピドーシスの症状で重要なのは、食欲不振と体重減少です。この症状がはっきり無い場合にはあまり肝リピドーシスは疑われません。また黄疸やよだれ、嘔吐、下痢、元気消失などもみられます。

気になる症状がある場合はご相談ください

肝臓の数値が上昇していても、あまり慌てる必要がないことがほとんどですが、黄疸(ビリルビン値の上昇)がある場合には決して無視はできません。早めに動物病院にご相談ください。


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猫の胆管炎、肝リピドーシスの検査・診断法は?(動物医療センターPecoの場合)

当院で実際に行う可能性のある検査についてご説明します。

※胆管炎、肝リピドーシスの検査は通常60-90分程度ですが、原因や病状によってさらに時間がかかることや、日を改めて診断あるいは治療のために麻酔をかける検査が必要な場合もあります。時間に余裕をもってご来院ください。

問診・身体検査

すべての動物に対して行われます。食欲、嘔吐や体重減少の程度などの症状や、黄疸の有無など身体検査上の異常について調べます。

血液検査

初診時には多くの動物で実施します。肝臓の数値や黄疸の程度を評価するだけでなく、他の病気がないかどうか調べるために実施します。

腹部超音波検査

黄疸がある場合には、胆管が閉塞して詰まっていないかどうかをまず鑑別します。その他に肝臓や胆嚢、胆管の異常を調べますが、胆管炎や肝リピドーシスは超音波検査だけでは診断はできません。

肝臓の細胞の検査

肝臓に細い注射針を刺して、肝臓の細胞を採取して顕微鏡で観察します。肝リピドーシスは診断の補助として用いられます。

その他の検査

麻酔をかけて肝臓のごく一部を検査のために採取して、病理検査を行うことがあります。すべての猫で実施するわけではありませんが、診断をしっかり確定させるために必要になることがあります。


猫の胆管炎、肝リピドーシスの治療法

急性胆管炎では抗生物質や肝臓の働きを助けるお薬を使います。慢性の場合には炎症や過度な免疫を抑えるためにステロイド薬を使うこともあります。

肝リピドーシスの治療は、きちんと食事(とくに蛋白)を与え続けることです。しかしほとんどの猫で食欲不振があるので、食道などに栄養用のチューブを設置して、補給を行います。

徐々に与える量を増やしていきますが、嘔吐や下痢のほか、神経症状などの合併症が起きることも少なくありません。このため吐き気止めだけでなく、いろいろなお薬も使って食事の給与を続けていきます。

当院の獣医師からのメッセージ

1. 軽い黄疸でも無視できません

黄疸は無視してはいけません。かならず原因究明が必要ですので病院にいってください。

2. 胆管炎では診断をもとにお薬が投与されます

急性胆管炎の多くは仮診断をもとに抗生物質などの投与が必要です。慢性の場合には、麻酔をかけて肝臓をとる検査も検討しましょう。

3. 肝リピドーシスでは食事療法を続ける必要があります

肝リピドーシスでは食事を根気強く与え続けなくてはならず、飼い主様の協力が必要です。

初診時の一般的な検査費用

当院では、病気の診断や状態把握のために、必要と思われる検査を選択致します。以下に一般的な胆管炎、肝リピドーシスの初診時の検査料金をご紹介します。症状などによっては追加検査が必要になることもあります。

検査内容料金の目安
カルテ新規開設料1,100円
初診料4,950円
血液検査7,660円〜
超音波検査4,500円〜

※治療費は別になります。


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