犬の肝臓の数値(肝酵素)の上昇について:考えられる病気や検査法について解説 | 動物医療センターPeco

この記事では獣医師監修のもと、犬の肝臓の数値(肝酵素)が高いときの考え方やその原因として多い病気について解説しています。動物病院に連れて行く前に参考にしてください。

記事の監修者
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大野耕一
動物医療センターPeco 院長 獣医師

肝臓の数値(肝酵素)とは?

一般的に動物病院で「肝臓の数値」というのは、肝酵素(かんこうそ)」とよばれる数値を指します。肝酵素とは肝臓で作られる蛋白で、数種類あります。動物病院で測定される肝酵素とは、主に以下の4つを意味しています。

肝酵素は主に4種類

  • アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALTと略されます/GPTとも呼ばれます)
  • アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST/GOT)
  • アルカリホスファターゼ(ALP)
  • γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)

これらの4つの酵素は肝臓の中に多く含まれていたり、作られたりして、さまざまな働きをしています。

肝酵素が上昇する意味

上昇=病気の可能性がある

肝臓に病気があるときに、肝酵素が血液の中に漏れ出たり、作られる量が増えると、血液検査で数値が増加(上昇)します。この際に犬と猫では4つの肝酵素の意味がかなり異なります。例えば犬では、ALPは肝臓の病気ではなくても著明に増加することがありますが、猫ではあまり増加せず、増加している場合肝臓の病気を持っていることが多いです。このように犬と猫では解釈が随分異なります

数値が大きい=悪いという意味ではない

また良く誤解されることに、増加の程度(数値)が大きいほど、肝臓が重度に悪いということがあります。肝酵素は肝臓の機能を表しておらず、数値が大きいほど肝臓が悪いという意味では全くありません。数値がとても高くてもそれほど重篤ではない病気もありますし、逆にほとんど増加していなくても肝臓の機能がとても悪いことがあります。

肝酵素上昇の症状

肝酵素上昇だけではとくに症状はでないと考えます。しかし肝臓の機能がとても悪く悪くなると、嘔吐、食欲不振のほか、黄疸(白目が黄色くなること)、出血傾向(血が止まりにくくなること)、肝性脳症(肝臓で解毒すべきものができなくなって神経症状がでること)などの「肝不全(肝機能不全)」症状がでることがあります。

どれだけ肝酵素が高くなっていても、それだけでは肝不全ではないので誤解をしないようにしなくてはいけません。

気になる症状がある場合はご相談ください

肝酵素上昇だけでは、あまり症状がないのが一般的です。逆に強い症状があるときには、肝臓の病気ではないことも多いので注意が必要です。

このため肝酵素上昇を以前から指摘されていて、なにかしら症状がある場合には早めに動物病院で追加検査を受けることをおすすめします。

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肝酵素が上昇する主な病気

非常に多くの病気で肝酵素の上昇が起きることが知られています。大きく肝臓の病気と、肝臓以外(肝臓が主たる病気ではない)の病気に分けられます

犬では、肝臓の中にあって胆汁を貯める働きをしている「胆嚢(たんのう)」の病気も、肝酵素の上昇を伴うことが多くあります。非常に多くの病気で肝臓の数値が上昇するので、ここでは代表的なものに絞って、表にまとめています。

動物種肝臓の病気(胆嚢の病気含む)肝臓以外の病気(肝臓が主たる病気ではないもの)
急性肝炎(中毒)、慢性肝炎、肝臓の腫瘍(肝細胞癌など)胆嚢炎、胆管炎副腎皮質機能亢進症(クッシング)糖尿病、肥満、高脂血症膵炎、腸炎、肝臓以外の腹腔内疾患
急性肝炎(中毒)、急性胆管炎、慢性胆管炎、肝臓の腫瘍(リンパ腫など)猫の脂肪肝(肝リピドーシス)甲状腺機能亢進症、糖尿病、膵炎、腸炎、肝臓以外の腹腔内疾患感染症(猫伝染性腹膜炎など)

肝酵素上昇で行われる検査は?(動物医療センターPecoの場合)

検査室の風景

当院で実際に行う可能性のある検査についてご説明します。

肝酵素上昇はさまざまな病気で起きるため、複数の検査を行う必要があります。そのため診断のための検査に2時間程度かかることが多くあります。原因や病状によってはさらに時間がかかることもありますので、時間に余裕をもってご来院ください。また診断のために何度か通院してもらったり、他の検査施設でCT検査を受けていただく場合もあります。

問診・身体検査

すべての動物に対して行われます。肝臓の病気ではあまり特徴的な症状や身体検査出の異常はありませんが、黄疸がないかどうか、肝臓以外の病気の可能性がないかどうか、などを調べます。

猫では食欲や食事量・体重の減少が脂肪肝の診断に重要となります。このほか中毒の疑いがないかどうかお伺いいたします。

血液検査

肝酵素上昇が分かっているので、すでに血液検査は行っている前提ですが、肝酵素の数値の変化や、肝臓の機能を評価するため、そして肝臓以外の病気を調べるために再度実施します。時として食前食後で特定の血液検査を行うこともあります。

画像検査(X線・超音波など)

X線検査ではあまり肝臓の情報は得られませんが、肝臓の大きさの評価のために撮影することがあります。むしろ重要なのは超音波検査で、肝臓の中の異常を捉えたり、肝臓以外のお腹の中の病気を見つけるために詳細に検査を行います。

その他の検査

肝酵素の上昇の原因を探るために、肝臓に針を刺して細胞を吸引して検査することがあります。また尿の検査で肝臓の病気の診断の補助となることがあり、症状によっては実施することがあります。

肝臓の病気によってはCT検査が必要になることがあり、その場合には、他の検査施設でCT検査をお願いすることもあります。


肝酵素上昇の治療法

肝酵素上昇は診断名ではないので、それぞれの病気によって治療は全く異なります。はっきりと診断が確定していない状況でも、強肝剤と呼ばれるお薬が処方されることはあります。

診断が付いていない状況で肝臓用の食事を始めるのは逆効果なことも多いので、注意が必要です。

当院の獣医師からのメッセージ
  1. たとえ肝酵素上昇が重度であっても、重い肝臓の病気とは限りません。
  2. 肝酵素上昇は、肝臓の病気でも肝臓以外のさまざまな病気でもみられるので、順序だてて検査を行う必要があります。
  3. 肝酵素上昇の原因がわかる前に、肝臓用の療法食を与えるのはおすすめできません。

初診時の一般的な検査費用

当院では、病気の診断や状態把握のために、必要と思われる検査を選択致します。以下に一般的な肝酵素上昇の初診時の検査料金をご紹介します。症状などによっては追加検査が必要になることもあります。

検査項目料金の目安
カルテ新規開設料1,100円
初診料4,950円
血液検査7,660円〜
X線検査6,000円〜
超音波検査4,500円〜

※治療費は別になります。

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