手術症例:膝蓋骨内方脱臼(パテラ、MPL)の外科療法を行った小型犬の一例(整形外科、膝、手術)

今回ご紹介させていただくのはプードルミックスの女の子です。たまに右の後ろ足の跛行が見られ、その頻度が増えてきたという症状でご来院されました。以前から膝蓋骨脱臼の指摘はあったそうです。
走ったりジャンプしたり運動することは問題ないのですが、一度膝蓋骨が脱臼してしまうと右の後ろ足を完全に挙上してしまうこともあるとのことでした。整形外科学的検査とX線検査を実施し、左右両側の膝蓋骨内方脱臼 GradeⅡと診断しました。

【写真①-1:院内での脱臼時の様子。わんちゃんも自身もびっくりした様子で振り向いている。】
【写真①-2:脱臼を手で戻してあげると足を着けるようになりました。】

膝蓋骨脱臼の病態は脱臼の重症度により4段階にグレード分類されています。

Grade Ⅰ :通常時はまっている。手で脱臼させることができるが、手を離すと整復する。
Grade Ⅱ :通常時はまっているが、足の向きや力の入り具合で容易に脱臼する。日常生活で脱臼と整復を繰り返すので症状が出やすい。
Grade Ⅲ:通常時脱臼した状態。手で整復できるが、手を離すとすぐに脱臼する。
Grade Ⅳ:通常時脱臼した状態。手でも整復できない。骨の変形を伴うこともある。

上記の通りGrade Ⅱは日常生活の中で脱臼と整復を繰り返している状態です。脱臼時の違和感が強く、間欠的な症状が一番出やすい時期とも言われます。今回のわんちゃんは左右共にGrade Ⅱの重症度でしたが、より脱臼しやすく症状が出ているのが右だけであり、右のみ外科療法を実施することとなりました。

【写真②:術前の膝関節X線検査VD像。右後肢の膝蓋骨が脱臼しているのが分かる。】
【写真③:術後の膝関節X線検査VD像】
【写真④:術後の膝関節X線検査側面像】

術後、わんちゃんの性格も考慮し翌日(1泊2日)の退院となりました。1週間後に術創の糸を取る抜糸、その後は1か月検診と2か月検診を予定しています。また、術後の運動制限やリハビリについては飼主様と相談をしながら行っていく予定です。当院で外科療法を推奨させていただく場合は、インフォームドコンセントを徹底し、手術の方法(手技)や術後の予想される経過・術後に必要なケアなどをしっかり説明の上、安心して任せていただけるよう心がけております。

文責:獣医師 多喜

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