この記事では獣医師監修のもと、犬の低蛋白(低アルブミン)血症と蛋白漏出性腸症(PLE)について、その症状や検査・治療法について解説しています。動物病院に連れて行く前に参考にしてください。
低蛋白(低アルブミン)血症とは?
血液の中には様々な蛋白が含まれており、血液の中である一定の濃度を保っています。この濃度が下がることを低蛋白血症といいます。
血液の中で最も多い蛋白のことをアルブミン(病院ではよくALBと略されます)といいますが、これは肝臓で作られる蛋白です。とくにこのアルブミンの濃度が下がっている状態のことを「低アルブミン血症」といいます。
低蛋白血症の原因
蛋白漏出性腸症が代表的
軽度の低アルブミン血症になる病気としては、栄養状態の悪化をはじめさまざまな病気がありますが、重度の低アルブミン血症になる病気は限られます。
腸から蛋白が漏れる蛋白漏出性腸症、腎臓から漏れる蛋白漏出性腎症、そして肝臓でアルブミンが作られなくなる肝不全(肝臓の機能がとても悪くなる病気)などが代表的です。
中でも犬では蛋白漏出性腸症(たんぱくろうしゅつせいちょうしょう/PLE)が圧倒的に多くみられます。
犬の蛋白漏出性腸症(PLE)の原因は?
蛋白漏出性腸症は、1つの病気ではなく、腸で蛋白が漏れる病気全てを含む言葉です。犬で重度の蛋白漏出性腸症になりやすい病気としては、腸リンパ管拡張症、慢性腸炎(炎症性腸疾患/IBD)、胃腸型リンパ腫の3つが挙げられます。
腸リンパ管拡張症は、腸でリンパ管という管が拡張して破れることで、リンパ液が腸の中に漏れ出る病気です。慢性腸炎では腸とくに小腸粘膜の傷害によって蛋白が漏れると考えられています。リンパ腫はリンパ球の癌ですが、慢性腸炎と同様の機序が考えられます。それぞれの病気の原因は今のところ明らかになっていません。
発症しやすい品種や年齢
猫ではほとんどみられず、多くは犬で発生します。ヨークシャ―・テリアなどある程度好発犬種はありますが、すべての犬種で発生します。若齢での発生は少なく、胃腸のリンパ腫は比較的高齢での発生が多いようです。
蛋白漏出性腸症の症状は?
蛋白漏出性腸症では、低アルブミンによる症状と、それぞれの腸の病気の症状の大きく2つが認められます。
いずれの病気でも蛋白(アルブミン)が重度に低下すると、お腹に水が溜まって(腹水)お腹が張ってきたり、手足が浮腫むなどの症状がでることがあります。ただしアルブミンの低下が軽い場合にはほとんど症状は認められません。
慢性腸炎やリンパ腫では、慢性下痢や体重減少、嘔吐などが一般的な症状です。リンパ腫の場合、症状が進行すると痩せることもあります。腸リンパ管拡張症でも軟便、下痢などがみられますが、必ずしも胃腸の症状がみられないこともあります。
気になる症状がある場合はご相談ください
蛋白漏出性腸症は、リンパ腫のような癌のこともあり、またそうでなくても、重度に痩せてくると治療に反応しづらくなることもあります。慢性下痢やお腹の張り(腹水)などがみられたら、動物病院で検査を受けることをおすすめします。
JR山手線「原宿駅」徒歩4分 /
地下鉄東西線「神楽坂駅」徒歩1分
東急田園都市線「三軒茶屋駅」
蛋白漏出性腸症の検査・診断法は?(動物医療センターPecoの場合)
当院で実際に行う可能性のある検査についてご説明します。
問診・身体検査
すべての動物に対して行われます。胃腸の症状や、それ以外の症状、お腹の張りや(腹水)やむくみなどの症状をチェックします。
血液検査
低蛋白、低アルブミンは血液検査でないと確認できないので、すべての動物で行われます。肝臓や腎臓の数値のほか、カルシウムなどについても調べます。
尿検査
尿中に蛋白(アルブミン)が漏出していないか調べます。
超音波検査
蛋白漏出性腸症(PLE)では、腹部の超音波検査が極めて有用です。腹水が貯留している場合には、腹水を注射器で採取して、他の病気でないか調べます。
超音波検査では腸リンパ管拡張症では、小腸粘膜で筋状の特徴的な画像が見られます。
またリンパ腫ではリンパ節の腫れや胃腸の壁の肥厚などが確認できることがあります。この場合には注射針で細胞を採取して検査を行います。このほか肝臓、腎臓についても評価します。
内視鏡検査
超音波検査や細胞の検査で診断がつかなかった場合に、麻酔をかけて内視鏡検査を行って、胃腸から小さな組織を採取して病理検査を行います。主にリンパ腫の疑いがある場合に実施されます。
蛋白漏出性腸症(PLE)の治療法
犬の蛋白漏出性腸症の治療には大きく、1)食事療法、2)薬物療法の2つがあります。
1)食事療法
蛋白漏出性腸症では、腸炎であってもリンパ管拡張を伴うことが多いです。このため、腸リンパ管を広げる(腸のリンパ液を増やすことが知られている)脂肪を極力摂取しないようにすること(低脂肪食)がまずは推奨されます。
このほかに、アレルギー性の低い食事が選択されることもあります。
2)薬物療法
腸リンパ管拡張症、慢性腸炎そして胃腸型リンパ腫のいずれの病気も、腸粘膜やリンパ管での炎症が病気に関係しているので、炎症を抑えるためにステロイド薬や免疫抑制薬が用いられることが一般的です。
リンパ腫は癌なので、抗癌剤の使用も検討されます。薬は適切な種類、量を選択すべきで、過度な投薬を避けることも重要です。
当院が蛋白漏出性腸症の診療で心がけていること
初診時の一般的な検査費用
当院では、病気の診断や状態把握のために、必要と思われる検査を選択致します。以下に一般的な胃腸のリンパ腫の初診時の検査料金をご紹介します。内視鏡検査が必要になる場合には、改めて内視鏡検査を別の日に実施することになります。
検査内容 | 料金の目安 |
---|---|
カルテ新規開設料 | 1,100円 |
初診料 | 4,950円 |
血液検査 | 7,660円〜 |
尿検査 | 5,280円 |
超音波検査 | 4,500円〜 |
※2022年8月現在の価格です