犬猫の嘔吐の原因と症状、検査について解説 | 動物医療センターPeco

この記事では、獣医師監修のもと、犬と猫が吐く原因、病院へ連れて行った方がいい症状、嘔吐と吐出の見分け方、そして診断に必要な検査について解説します。

記事の監修者
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大野耕一
動物医療センターPeco 院長 獣医師

犬猫の嘔吐とは?吐出との違いについて

犬猫の症状として多い「吐く行為」は、2種類あります。胃からの「嘔吐」と、食道からもどす「吐出(としゅつ)」があります。

それぞれ原因や治療法が異なるため、飼い主さんはまず2つの違いを理解することが大切です。

“嘔吐”とは

嘔吐は胃から戻す行為で、吐く前に気持ち悪そうな症状があったり、吐く際にはお腹が激しく動くような動作がみられます。

“吐出”とは

吐出では突然口から戻すことが多く、お腹の動きもほとんどみられません。吐出では主に食道の病気が疑われます。

嘔吐・吐出で多い原因とは?

嘔吐の代表的な原因

嘔吐の原因は極めて多いです。胃腸の病気だけでなく、お腹の中の胃腸以外の多くの病気でも、そして血液の中の異常値でも、ときとして脳の異常であっても嘔吐につながります。

代表的な原因としては以下の表のようなものが挙げられます。

病気の分類主な病気
胃腸の病気不適切な食事、胃腸や異物、腸炎、胃腸の腫瘍など
胃腸以外のお腹の中の病気肝臓、胆嚢、膵臓の病気、腹膜炎や胃腸を圧迫するような腫瘍など
その他の病気腎臓や肝臓の病気(血液中で有害物質が増える場合)、副腎からのホルモン分泌低下、脳の病気、など

吐出(食道から吐く)の代表的な原因

吐出の場合、ほとんどの原因は胃ではなく食道にあります。主な原因としては以下の表のようなものが挙げられます。

病気の分類病気の説明
食道拡張犬に多く、食道全体が拡張して運動性が低下し、食べ物を胃にうまく運べない状態です。
食道狭窄食道がが狭くなっていたり、詰まっていたりして食べ物が胃に流れない状態です。犬では異物が多く、猫では食道の一部が炎症で狭くなっていることが多いです。

病院に連れて行くべき症状は?

嘔吐が見られたときに、必ずしも病院に行く必要はありません。しかし、以下に挙げる症状が見られる場合には、できるだけ早く動物病院で診てもらうことをおすすめします。

  1. 繰り返し何度も吐いている
  2. ぐったりして元気がない
  3. 食欲がなかったり、水もあまり飲まない
  4. 吐いたあとに、呼吸がとても苦しくなっている
  5. 何日間も続いたり、ここしばらく嘔吐を繰り返している

自宅で観察する場合

逆に、嘔吐が1回だけで、その後元気・食欲があるのであれば、あまり慌てずにその後症状を繰り返すかどうか、自宅で観察することも可能です。

動物病院に行く前に確認しておきたいこと

嘔吐・吐出の原因はたくさんあるので、以下のようなことを獣医師に伝えられると、診察の手助けになります。

1)吐いたものの内容

食べ物なのか、胃液のようなものなのか、色など、写真があるとなおわかりやすいです。

2)吐いている時の様子

嘔吐なのか、吐出なのかは診断の最初に見極める必要があります。

3)食べたもの、口にした可能性のあるもの

急性嘔吐の多くは、最近口にしたもの、間違って食べたもの(誤食)が原因です。

4)吐く以外の症状や既往歴があるかどうか

胃腸の病気以外も嘔吐の原因になります。

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「嘔吐・吐出」の診療で当院が心がけていること

  • 軽症と重症例、そして嘔吐と吐出を見極めること
  • 胃腸の病気だけでなく、その他の原因がないかしっかり見極めること
  • 症状によって適切な検査を選択し、正しく評価すること
  • 異物除去や確定診断のために、内視鏡検査を速やかに、かつ正しく実施すること
当院の獣医師スタッフからのメッセージ

嘔吐の症状がある場合、さまざまな原因が考えられます。また嘔吐と似ている症状に、食道から吐く“吐出”がありますが、これは検査法も治療法も胃腸の病気とは異なるので、問診の時点で区別する必要があります。

病院でよく見る例として、異物で吐いている場合には、すでに吐いているのに吐けないので、飲み込んだものによっては、急いで内視鏡にて取り除く必要があります。

一方で慢性的な嘔吐がある場合には、吐き気止めなどではなく、原因をしっかりと見極める必要があります。超音波検査や内視鏡検査を駆使してできるだけ原因追求に努めます。

当院では、血液検査だけではわからない、“嘔吐”の原因を、超音波、内視鏡検査など総合的に判断することを心がけています。

当院で実施可能な嘔吐(吐出)の検査

当院では、症状などに応じて、以下のうちから必要な検査を行い、原因を特定していきます。

問診・身体検査

すべての動物に対して行います。嘔吐・吐出の鑑別や、これまでの経過、食べているものについて詳細な情報が必要です。嘔吐は胃腸以外の原因で起きることも多いので、その他の症状も重要になります。

血液検査

初診時には多くの動物で実施します。胃腸の病気は血液検査ではわからないので、むしろ胃腸以外の病気の除外のために実施します。

超音波検査・(造影)X線検査

嘔吐の場合、超音波検査を実施して、胃腸の異常だけでなく、お腹の中の他の臓器の異常も検査します。

食道の病気や異物誤飲の場合にはX線検査が必要で、ときとしてバリウムを用いた造影検査を行うこともあります。

糞便検査

嘔吐の場合も寄生虫検査として糞便検査を実施することがあります。また稀に吐物を検査することもあります。

内視鏡検査

異物誤飲で吐けないとき、慢性的な胃腸の病気で原因を究明したいときなどに、内視鏡検査を実施することがあります。

麻酔が必要なので、麻酔前に血液検査やX線検査などが必要になります。内視鏡で、胃腸から小さな組織を採取して病理検査を行います。

※当院で実施する場合、原宿センター病院での受付となります。

腸やリンパ節からの細胞の採取

胃腸の壁がとても厚くなっていたり、すぐそばのリンパ節が腫れている場合、超音波で場所を確認しながら注射針でほんの少しの細胞を採取し、顕微鏡で評価します。安全で簡単に実施できます。

その他の検査

嘔吐の原因が内分泌や脳の異常と考えられる場合には、ホルモンを測定する血液検査を実施したり、稀ではありますが外部で脳の画像検査を実施していただくこともあります。

一般的な嘔吐の検査料金

動物医療センターPecoでの一般的な嘔吐の検査の料金は以下の通りです。

症状によって検査内容や料金が異なります。また、治療費は含まれておりませんのでご了承ください。

検査内容料金
カルテ新規開設料1,100円
初診料4,950円〜
血液検査7,660円〜
超音波検査4,500円〜
※治療費は別になります。
※2022年8月現在の価格です

治療について

原因に応じて、できる限り速やかに適切な治療を行います。原因がまだ明らかになっていない状況であっても、嘔吐が強い場合には「吐き気止め」などの治療を開始することがあります。

また「試験的治療」と言って特定の食事を試したり、薬の反応を見て、病気を絞り込む場合もあります。その場合には飼い主様の協力が必要不可欠となります。

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診療経験を積んだ獣医療チームが、健康診断〜病気の診療を担当する「犬と猫のための動物病院」です。

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